相続税・贈与税ガイド

10. 贈与税の特例の活用法

1. 基礎控除のフル活用

私もそろそろ65歳になり、なるべく生きている間に長男、次男、長女、それに孫に贈与したいと考えています。金融資産だけで1億円近くあります。有利な贈与法はありますか。
年間110万円の贈与税の基礎控除を利用して、長男一家、次男一家、長女一家それぞれに贈与したらどうでしょう。たとえば、
長男グループ(長男、その妻、孫2人) 4人×110万円=440万円
次男グループ(次男、その妻、孫2人) 4人×110万円=440万円
長女グループ(長女、その夫、孫2人) 4人×110万円=440万円
合計 1,320万円

つまり、年間1,320万円が非課税で贈与できるので、10年間では、1億3,200万円も可能になります。
なお、将来の贈与の証拠として、それぞれの口座に振り込む方法がよいでしょう。また、少し贈与税を払ってという場合には、たとえば1人120万円贈与すると1万円の贈与税で済みます。

2. 配偶者控除2,000万円の活用

妻に住まいの一部を贈与したいのですが、何か特例がありますか?自宅は、土地200m²(路線価評価1億円)建物150m²(固定資産税評価額300万円)です。
婚姻期間が20年以上の夫婦間では、住まい(土地、建物)または、住まいを取得するための資金の贈与があった場合には、その課税価格から2,000万円が控除できます。したがって、贈与税の基礎控除と合わせて2,110万円まで非課税になります。おたずねのケースでは、土地だけ2,110万円まで贈与するか、建物の一部と土地の一部にするかまったく自由です。
土地、建物の登記は、持分で登記するのが一般的です。土地に2,000万円分、建物に110万円分というときには、土地は1/5、建物は110/300=11/30という割合になります。
なお、この特例を受けたケースで、相続前3年以内の贈与の加算をするときは、2,000万円控除後の金額が対象になります。また、贈与を受けた年に相続が発生した場合でも、配偶者控除2,000万円までは、相続税の対象から除外できます。

3. 住宅資金贈与特例の活用

マイホームを取得するための住宅資金贈与を受ける特例があるそうですが、詳しく教えてください。
マイホームの購入・建築、同時に取得する敷地、増改築などのための資金贈与に利用することができ、非課税枠は一般住宅で700万円、高品質住宅(一定の省エネ性、耐震性、バリアフリー性のいずれか一つを備えた住宅)は1,200万円(消費税が10%にアップされた場合は、以下の非課税限度額表「(イ)消費税率10%が適用される住宅」参照)となっています。通常相続開始前3年以内に受けた贈与財産は相続税の課税対象となりますがこの特例は除外され大変有利です。また、次の2つの特例のいずれかと併用できます。
  1. 暦年課税(毎年の贈与税の基礎控除110万円)との併用。
  2. 相続時精算課税制度(最高2,500万円)との併用。

適用のポイント

  1. 直系尊属(親や祖父母などで年齢制限なし)から直系卑属(その年の1月1日現在で20歳以上の子や孫など)への贈与。
  2. 子などの所得制限は2,000万円以下。
  • ※東日本大震災の被災者が利用できる一般住宅1,000万円、高品質住宅で1,500万円の住宅資金贈与特例があります。

非課税限度額表

(イ)消費税率10%が適用される住宅
契約の締結期間 高品質住宅 一般住宅
平成31年4月1日~32年3月31日 3,000万円 2,500万円
平成32年4月1日~33年3月31日 1,500万円 1,000万円
平成33年4月1日~33年12月31日 1,200万円 700万円
(ロ)上記(イ)以外の住宅
契約の締結期間 高品質住宅 一般住宅
平成28年1月1日~32年3月31日 1,200万円 700万円
平成32年4月1日~33年3月31日 1,000万円 500万円
平成33年4月1日~33年12月31日 800万円 300万円
  • ※東日本大震災の被災者住宅の非課税限度額は消費税が10%にアップされた場合、平成31年4月1日から32年3月31日まで、3,000万円・2,500万円となります。ただしそれ以外のケースでは1,500万円・1,000万円となります。

4. 教育資金の一括贈与の非課税の特例

孫達が高校受験や大学受験の年代を迎えています。塾や受験費用、入学金や授業料などを手助けしたいのですが贈与税が心配です。
30歳未満の子や孫などへの教育資金にするためにその親や祖父母などがお金を出し、金融機関に1人につき1,500万円まで信託などをした場合、贈与税が非課税となります。平成25年4月1日から平成31年3月31日までの期間に適用されます。

適用のポイント

  1. 子や孫などはこの特例を受けようとすることなどを記した教育資金非課税申告書を金融機関を経由して最寄りの所轄税務署長に提出すること。
  2. 子や孫などは払い出したお金を教育資金に使ったことを証明する書類などを金融機関に提出することなど。

5. 結婚・子育て資金一括贈与の非課税の特例

息子が結婚をし、当然孫達も生まれてくるので資金援助をしたいのですが。
20歳以上50歳未満の子や孫などへ、結婚・子育て資金のために親や祖父母などが金融機関などに子や孫など1人につき1,000万円までの金額を信託などした場合、贈与税が非課税となります。平成27年4月1日から平成31年3月31日までの期間に適用されます。

適用のポイント

  1. 子や孫などはこの特例を受けようとすることなどを記した非課税申告書を金融機関などを経由して最寄りの所轄税務署長に提出すること。
  2. 子や孫などは払い出したお金を結婚(300万円限度)・子育て資金に使ったことを証明する書類を金融機関などに提出することなど。
  3. 子や孫などが50歳になって残高があるときは残額に贈与税、また親や祖父母などが死亡したときに残額があるときは相続財産に加算されます。

6. 相続時精算課税制度の活用A

娘夫妻と同居する予定でマイホームの建て替えを考えています。2,500万円位の予算で、名義を娘にしようと考えていますが贈与税の節税方法を教えてください。
「相続時精算課税」制度の利用をおすすめします。2,500万円までの贈与が非課税となり、マイホーム資金に利用しますと平成33年12月31日までであれば親や祖父母などの年齢制限がありません(下記(イ)(ロ))。当面の贈与税がかからず、親の相続時に他の相続財産に含めて、相続税として精算課税されます。そして、非課税枠2,500万円を超えても、超えた贈与額分は一律20%の贈与税率ですみ将来、精算課税される相続税から差し引くことができます。

相続時精算課税制度の適用のポイント

  1. 親や祖父母などの年令が60歳以上で、子や孫などはその年の1月1日現在で20歳以上であること。
  2. 子や孫などには年収制限がありません。
  3. 親や祖父母などそれぞれから贈与特例が受けられます。
  4. 贈与を受け取るときに住所が日本国内にあること。
  5. 贈与を受けた資金はマイホーム資金にも利用でき、下記(イ)(ロ)の条件のマイホーム資金であれば親や祖父母などの年令制限はありません。
    1. (イ)床面積は50m²(注1)以上で、1/2以上がマイホーム用であること。
    2. (ロ)新しいマイホームの建築・購入と中古住宅(木造で20年以内、耐火で25年以内)の購入・一定の増改築に利用できます。さらに中古住宅で木造で20年、耐火で25年を超えても耐震基準(注2)(購入後の工事も可)を満たしていれば適用になります。
  6. この特例を一度利用しますと、以後、毎年利用できる贈与税の基礎控除110万円はつかえません。
(注1)
戸建て、マンションともに登記簿床面積となります。パンフレットなどに記載されている床面積と異なりますので注意が必要です。
(注2)
建築士などによる「耐震基準適合証明書」などの交付を受けた住宅。マンションは建物一棟全体の耐震証明も必要です。

7. 相続時精算課税制度の活用B

妻と各々5,000万円、合わせて1億円の余剰資金があります。息子に賃貸マンションを何戸か贈与したいのですが良い方法は?
まずご両親(ともに60歳以上であること)で5,000万円ずつ出資して、1戸2,500万円の賃貸マンションを2戸ずつ、合計4戸購入し賃貸を開始します。翌年満室となり、経営状況も安定したところで20歳以上の息子さんにご両親から2戸ずつ計4戸贈与(敷金相当の現金を含めて)すると贈与税の評価額はどうなるのでしょうか。
賃貸マンション価格
1戸2,500万円
  • 建物

    1,750万円(固定資産税評価額1,000万円)

  • 土地

    750万円(路線価525万円)

贈与税の評価
  • 建物

    1,000万円×(1-0.3)=700万円

    • ※(1-0.3)は、借家権割合の評価減
  • 土地

    525万円×(1-0.7×0.3)=414.75万円

    • ※(1-0.7×0.3)は、貸家建付地の評価減
1戸分の評価額計 1,114万7,500円
父からの贈与 1,114万7,500円×2=2,229.5万円
母からの贈与 1,114万7,500円×2=2,229.5万円
4戸分の評価額計 4,459万円

このように1億円の賃貸マンションの評価額が4,459万円に下がります。したがって、両親からそれぞれ「相続時精算課税」制度の非課税枠2,500万円合計5,000万円を利用して、賃貸マンションを4戸、当面無税で取得することができます。
ちなみに、両親から現金で贈与を受け賃貸マンションを購入すると非課税枠で1戸ずつ、計2戸しか取得できません。

このガイドについて

このガイドは平成29年4月1日現在の法令にもとづいて作成したものです。年度途中に新税制が成立したり、税制等が変更になったり、通達により詳細が決まったりするケースがありますのでご了承ください。
平成25年分から所得税のほかに復興特別所得税が所得税額の2.1%課税されますが、計算の都合上これを除外している場合があります。
平成31年10月1日より消費税が10%にアップされる予定ですが、経済情勢などにより延期される可能性があります。
相続税・贈与税には複雑な問題もありますので、ケースによっては、税理士・弁護士など専門家にご相談ください。

執筆・監修 税理士/中村 節弥

編集・制作/株式会社サンビー企画

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