- 賃貸住宅とその敷地や貸宅地などは、利用状況に応じて評価額を減額
- 形が整っていない宅地は、形状に応じて路線価を補正
相続税・贈与税の税額を計算するときの財産評価においては、例えば、賃貸されている土地や家屋など、所有者の利用が制限されている財産については、権利関係に応じて評価額を減額することができます。
また、路線価は、標準的な宅地の1m²当たりの価額として定められており、標準的な宅地に比べて奥行が長い土地や間口が狭い土地、角地、不整形地などは、その形状等に応じて路線価を補正した上で評価することとなります。
利用状況に応じた評価方法の例
利用状況 | 評価額の計算式 | 評価減の割合 | ||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
土地 | 自用地(自宅、自営店舗の敷地、自営の駐車場用地等)、使用貸借されている宅地 | 自用地価額(土地建物の評価額参照) | 0% | |||||||||||||||
貸家建付地(賃貸住宅や貸家の敷地) | 自用地価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合) | △9%~△27% ※賃貸割合100%の場合 |
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貸宅地 | 借地権が設定されている宅地 | 自用地価額×(1-借地権割合) | △30%~△90% | |||||||||||||||
相当の地代が支払われている宅地(改訂型) | 自用地価額×0.8 | △20% | ||||||||||||||||
相当の地代に満たない地代が支払われている宅地 |
|
△20%~ | ||||||||||||||||
「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている宅地 | (土地貸借が賃貸借である場合)自用地価額×0.8 | △20% | ||||||||||||||||
(土地貸借が使用貸借である場合)自用地価額 | 0% | |||||||||||||||||
私道 | 不特定多数の者が通行するもの:評価しない | △100% | ||||||||||||||||
特定の者だけが通行するもの:自用地価額×0.3 | △70% | |||||||||||||||||
家屋 | 自用家屋(自宅、自営店舗、空き家)、使用貸借されている家屋 | 自用家屋の価額(土地建物の評価額参照) | 0% | |||||||||||||||
貸家(賃貸住宅等の建物) |
|
△30% ※賃貸割合100%の場合 |
- (注1)使用貸借とは、権利金や地代などが無償(固定資産税相当額以下の地代を含む)である貸借をいいます。
- (注2)借地権割合とは、地域ごとに30%~90%に定められた借地権の価額の割合をいいます。
- (注3)借家権割合とは、一律30%に定められた借家権の価額の割合をいいます。
- (注4)賃貸割合とは、貸家の各独立部分の床面積の合計のうち、賃貸されている各独立部分の床面積の合計の割合をいいます。
- (注5)相当の地代とは、権利金を支払う慣行がある地域において、権利金に代えて支払われる地代(原則として、自用地価額の概ね6%程度の金額)をいいます。
- (注6)通常の地代とは、原則として、(自用地価額-借地権価額)の概ね6%程度の金額をいいます。
- (注7)土地の無償返還に関する届出書とは、将来借地人等が土地を無償で返還することが契約されている場合の税務署への届出書をいいます。
宅地の形状等に応じた評価方法の例
宅地の形状等 | 1m²当たりの評価額の計算式 | 普通住宅地区における補正割合 | |
---|---|---|---|
奥行価格補正 (奥行距離の長短) |
路線価×奥行価格補正率 | 奥行10m未満 △3%~△10% |
奥行24m以上 △3%~△20% |
間口狭小補正 (間口距離の広狭) |
路線価×奥行価格補正率×間口狭小補正率 | 間口距離8m未満 △3%~△10% |
|
奥行長大補正 (奥行と間口のバランス) |
路線価×奥行価格補正率×奥行長大補正率 | 奥行距離÷間口距離→2以上 △2%~△10% |
|
側方路線影響加算 (角地、準角地) |
正面路線価×奥行価格補正率+側方路線価×奥行価格補正率×側方路線影響加算率 | 角地 +3% |
準角地 +2% |
二方路線影響加算 (裏面が路線に面した宅地) |
正面路線価×奥行価格補正率+裏面路線価×奥行価格補正率×二方路線影響加算率 | +2% | |
不整形地補正 (四角形でない土地など) |
想定整形地等により求められた路線価×不整形地補正率 | かげ地割合10%以上 △1%~△40% |
|
無道路地 (路線に面していない宅地) |
1実際に利用している路線の路線価を基に不整形地補正により評価 2 1から通路開設費相当額(上限40%)を控除 |
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地積規模の大きな宅地の評価 (三大都市圏500m²以上、その他1,000m²以上) |
路線価×奥行価格補正率×不整形地補正率などの各種画地補正率×規模格差補正率 | △20%~ | |
がけ地を含む宅地 | 路線価×奥行価格補正率×がけ地補正率 | がけ地地積の割合10%以上 △4%~△47% |
- (注)各補正率は、国税庁HP を参照。
賃貸住宅とその敷地の評価額は?
令和5年中に父が亡くなり、父の所有していた賃貸住宅とその敷地を相続しました。賃貸住宅は全8室のうち、現在6室が賃貸されています。
建物の固定資産税評価額 | 路線価 | 地積 | 借地権割合 | 賃貸割合 |
---|---|---|---|---|
2,000万円 | 20万円/m² | 400m² | 60% | 75%(=6室÷8室) |
- (注)土地は、形状等に応じた路線価の補正のない標準的な宅地とします。
賃貸住宅の評価額は?
固定資産税評価額 | 借家権割合 | 賃貸割合 | 貸家評価額1,550万円 |
|||
2,000万円 | × | (1-30% | × | 75%) | = |
貸家評価額1,550万円
敷地の評価額は?
路線価 | 地積 | 自用地価額 | ||
20万円 | × | 400m² | = | 8,000万円 |
自用地価額 | 借地権割合 | 借家権割合 | 賃貸割合 | 貸家建付地評価額6,920万円 |
||||
8,000万円 | × | (1-60% | × | 30% | × | 75%) | = |
貸家建付地評価額6,920万円
賃貸住宅 | 敷地 | 8,470万円 |
|||
土地建物の評価額の合計 | 1,550万円 | + | 6,920万円 | = |
貸家建付地評価額6,920万円
このガイドについて
このガイドは、株式会社 清文社の「2023年版 土地建物の税金ガイド」を元に作成しており、内容は2023年(令和5年)4月1日現在の法令等にもとづいております。年度途中に新税制が成立したり、税制等が変更になったり、通達により詳細が決まったりするケースがありますのでご了承ください。
税金は複雑な問題もありますので、ケースによっては、税理士など専門家にご相談ください。
(注)本サイトの計算例は、原則、例示取引にかかる税額を便宜的に計算しており、必ずしも最終的な納付税額ではないことから端数処理を考慮していない場合があります。
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監修:新谷達也、塚本和美 企画・制作:清文社 |
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