- 小規模宅地は、相続税評価額が事業用は400m²まで20%に、貸付事業用は200m2まで50%に引き下げられる
被相続人等の事業の用に供されていた建物又は構築物の敷地を、被相続人の親族が相続又は遺贈によって取得した場合は、その事業を引き継ぐことなどを前提として、その宅地等の課税価格を20%又は50%に引き下げる特例があります。この特例の適用要件及び限度面積、評価割合は、次のように区分されています。
利用区分 | 適用要件 | 限度面積・評価減の割合 |
---|---|---|
特定事業用宅地等 |
相続開始直前において、被相続人等の事業の用(貸付事業用を除く)に供されていた宅地等で、次の要件に該当する被相続人の親族が相続等により取得したもの 被相続人の事業用の宅地等被相続人の事業を申告期限までに引き継ぎ、申告期限までその事業を営んでおり、かつ、その宅地等を申告期限まで有していること 被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業用の宅地等相続開始直前から申告期限まで、その宅地等の上で事業を営んでいること、かつ、その宅地等を申告期限まで有していること
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特定同族会社事業用宅地等 |
相続開始直前から申告期限まで一定の法人(注)の事業の用(貸付事業用を除く)に供されていた宅地等で、その宅地等を相続等により取得した被相続人の親族等が、申告期限においてその法人の役員であり、かつ、その宅地等を申告期限まで有しているもの
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貸付事業用宅地等 |
相続開始直前において、被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等で、次の要件に該当する被相続人の親族が相続等により取得したもの 被相続人の貸付事業用の宅地等被相続人の事業を申告期限までに引き継ぎ、申告期限までその貸付事業を営んでおり、かつ、その宅地等を申告期限まで有していること 被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の貸付事業用の宅地等相続開始直前から申告期限まで、その宅地等の上で事業を営んでいること、かつ、その宅地等を申告期限まで有していること
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- (注1)「特定居住用宅地等」は、330m2まで課税価格が80%減額されます。詳細は小規模宅地の特例〔特定居住用宅地等〕参照。
- (注2)「貸付事業」とは、「不動産貸付業」、「駐車場業」、「自転車駐車場業」及び事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行う「準事業」をいいます。
- (注3)一の宅地等について共同相続があった場合には、取得した者ごとに適用要件を判定します。
利用区分の異なる小規模宅地が混在する場合
いずれか2つ以上の利用区分の宅地等を選択する場合において、貸付事業用宅地等を含む場合は、限度面積の調整計算が必要となります。
事業用+居住用
貸付事業用を含まないケース
事業用 ≦ 400m² | 居住用 ≦ 330m² |
合計730m²(完全併用可能) |
事業用+居住用+貸付事業用
貸付事業用を含むケース
事業用 | × |
|
+ | 居住用 | × |
|
+ | 貸付事業用 | ≦ 200m² |
- (注)事業用とは、特定事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等の合計です。
小規模宅地の特例の適用の有利・不利
利用区分ごとに次の算式により算出した金額を比較し、金額の多い宅地等から優先して特例を適用すると、課税価格から減額される金額も大きく、有利になります。
事業用 | … |
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||||||||
居住用 | … |
|
||||||||
貸付事業用 | … |
|
小規模宅地の有利選択は?
令和5年中に、同居していた父の死亡により次の土地を相続しました。
面積 | 相続税評価額 | |
---|---|---|
A宅地(特定事業用宅地等) | 200m² | 10万円/m² |
B宅地(特定居住用宅地等) | 120m² | 20万円/m² |
C宅地(貸付事業用宅地等) | 60m² | 30万円/m² |
B→A→Cの順に優先した場合の適用面積と減額される金額は?
Bの適用面積 | Aの適用面積 | Cの適用面積 | ||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
120m² |
=255m²(Aの適用限度面積)
200m²
|
≒27.27m²(Cの適用限度面積)
27.27m²
|
Bの適用面積 |
---|
120m² |
Aの適用面積 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
=255m²(Aの適用限度面積)
200m²
|
Cの適用面積 | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
≒27.27m²(Cの適用限度面積)
27.27m²
|
┌ | Aの課税価格 | ┐ | ┌ | Bの課税価格 | ┐ | ┌ | Cの課税価格 | ┐ | ||||||||
200m² | × | 10万円 | × | 80% | + | 120m² | × | 20万円 | × | 80% | + | 27.27m² | × | 30万円 | × | 50% |
= 減額される金額3,929.05万円 |
┌ | Aの課税価格 | ┐ | |||
200m² | × | 10万円 | × | 80% | + |
┌ | Bの課税価格 | ┐ | |||
120m² | × | 20万円 | × | 80% | + |
┌ | Cの課税価格 | ┐ | ||
27.27m² | × | 30万円 | × | 50% |
= 減額される金額3,929.05万円 |
C→A→Bの順に優先した場合の適用面積と減額される金額は?
Cの適用面積 | Aの適用面積 | Bの適用面積 | |||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
60m² |
=280m²(Aの適用限度面積)
200m²
|
=66m²(Bの適用限度面積)
66m²
|
Cの適用面積 |
---|
60m² |
Aの適用面積 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
=280m²(Aの適用限度面積)
200m²
|
Bの適用面積 | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
=66m²(Bの適用限度面積)
66m²
|
┌ | Aの課税価格 | ┐ | ┌ | Cの課税価格 | ┐ | ┌ | Bの課税価格 | ┐ | ||||||||
200m² | × | 10万円 | × | 80% | + | 60m² | × | 30万円 | × | 50% | + | 66m² | × | 20万円 | × | 80% |
= 減額される金額3,556万円 |
┌ | Aの課税価格 | ┐ | |||
200m² | × | 10万円 | × | 80% | + |
┌ | Cの課税価格 | ┐ | |||
60m² | × | 30万円 | × | 50% | + |
┌ | Bの課税価格 | ┐ | ||
66m² | × | 20万円 | × | 80% |
= 減額される金額3,556万円 |
このガイドについて
このガイドは、株式会社 清文社の「2023年版 土地建物の税金ガイド」を元に作成しており、内容は2023年(令和5年)4月1日現在の法令等にもとづいております。年度途中に新税制が成立したり、税制等が変更になったり、通達により詳細が決まったりするケースがありますのでご了承ください。
税金は複雑な問題もありますので、ケースによっては、税理士など専門家にご相談ください。
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監修:新谷達也、塚本和美 企画・制作:清文社 |
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