相続税・贈与税ガイド

小規模宅地の特例〔事業用宅地等〕

  • 小規模宅地は、相続税評価額が事業用は400m²まで20%に、貸付事業用は200m2まで50%に引き下げられる

被相続人等の事業の用に供されていた建物又は構築物の敷地を、被相続人の親族が相続又は遺贈によって取得した場合は、その事業を引き継ぐことなどを前提として、その宅地等の課税価格を20%又は50%に引き下げる特例があります。この特例の適用要件及び限度面積、評価割合は、次のように区分されています。

利用区分 適用要件 限度面積・評価減の割合
特定事業用宅地等

相続開始直前において、被相続人等の事業の用(貸付事業用を除く)に供されていた宅地等で、次の要件に該当する被相続人の親族が相続等により取得したもの

被相続人の事業用の宅地等

被相続人の事業を申告期限までに引き継ぎ、申告期限までその事業を営んでおり、かつ、その宅地等を申告期限まで有していること

被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業用の宅地等

相続開始直前から申告期限まで、その宅地等の上で事業を営んでいること、かつ、その宅地等を申告期限まで有していること

  1. (注1)相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等で、その宅地等上の事業用減価償却資産の価額がその宅地等の相続時の価額の15%未満であるものを除きます。
  2. (注2)個人事業者の事業用資産に係る相続税の納税猶予の特例を適用する場合は、この特例の適用は受けることができません。
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特定同族会社事業用宅地等

相続開始直前から申告期限まで一定の法人(注)の事業の用(貸付事業用を除く)に供されていた宅地等で、その宅地等を相続等により取得した被相続人の親族等が、申告期限においてその法人の役員であり、かつ、その宅地等を申告期限まで有しているもの

  1. (注)相続開始直前において被相続人及び被相続人の親族等が法人の発行済株式の総数又は出資の総額の50%超を有している場合におけるその法人をいいます。
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貸付事業用宅地等

相続開始直前において、被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等で、次の要件に該当する被相続人の親族が相続等により取得したもの

被相続人の貸付事業用の宅地等

被相続人の事業を申告期限までに引き継ぎ、申告期限までその貸付事業を営んでおり、かつ、その宅地等を申告期限まで有していること

被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の貸付事業用の宅地等

相続開始直前から申告期限まで、その宅地等の上で事業を営んでいること、かつ、その宅地等を申告期限まで有していること

  1. (注)相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は除きます。ただし、相続開始前3年を超えて事業的規模で貸付事業を行っている場合の貸付事業用の宅地等は適用の対象となります。
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  1. (注1)「特定居住用宅地等」は、330m2まで課税価格が80%減額されます。詳細は小規模宅地の特例〔特定居住用宅地等〕参照。
  2. (注2)「貸付事業」とは、「不動産貸付業」、「駐車場業」、「自転車駐車場業」及び事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行う「準事業」をいいます。
  3. (注3)一の宅地等について共同相続があった場合には、取得した者ごとに適用要件を判定します。

利用区分の異なる小規模宅地が混在する場合

いずれか2つ以上の利用区分の宅地等を選択する場合において、貸付事業用宅地等を含む場合は、限度面積の調整計算が必要となります。

事業用居住用
貸付事業用を含まないケース

事業用 ≦ 400m² 居住用 ≦ 330m²
合計730m²(完全併用可能)

事業用居住用貸付事業用
貸付事業用を含むケース

事業用 ×
200
400
居住用 ×
200
330
貸付事業用 ≦ 200m²
  1. (注)事業用とは、特定事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等の合計です。

小規模宅地の特例の適用の有利・不利

利用区分ごとに次の算式により算出した金額を比較し、金額の多い宅地等から優先して特例を適用すると、課税価格から減額される金額も大きく、有利になります。

事業用
相続税評価額 × 80% × 400
200
居住用
相続税評価額 × 80% × 330
200
貸付事業用
相続税評価額 × 50%

小規模宅地の有利選択は?

令和5年中に、同居していた父の死亡により次の土地を相続しました。

面積 相続税評価額
A宅地(特定事業用宅地等) 200m² 10万円/m²
B宅地(特定居住用宅地等) 120m² 20万円/m²
C宅地(貸付事業用宅地等) 60m² 30万円/m²

BACの順に優先した場合の適用面積と減額される金額は?

Bの適用面積 Aの適用面積 Cの適用面積
120m²
(200m² 120m² × 200 )× 400
330 200
=255m²(Aの適用限度面積)
200m²
200m² 200m² × 200 120m² × 200
400 330
≒27.27m²(Cの適用限度面積)
27.27m²
Bの適用面積
120m²
Aの適用面積
(200m² 120m² × 200 )× 400
330 200
=255m²(Aの適用限度面積)
200m²
Cの適用面積
200m² 200m² × 200 120m² × 200
400 330
≒27.27m²(Cの適用限度面積)
27.27m²
Aの課税価格 Bの課税価格 Cの課税価格
200m² × 10万円 × 80% 120m² × 20万円 × 80% 27.27m² × 30万円 × 50%
減額される金額3,929.05万円
Aの課税価格
200m² × 10万円 × 80%
Bの課税価格
120m² × 20万円 × 80%
Cの課税価格
27.27m² × 30万円 × 50%
減額される金額3,929.05万円

CABの順に優先した場合の適用面積と減額される金額は?

Cの適用面積 Aの適用面積 Bの適用面積
60m²
(200m² 60m² )× 400
200
=280m²(Aの適用限度面積)
200m²
(200m² 200m² × 200 60m²) × 330
400 200
=66m²(Bの適用限度面積)
66m²
Cの適用面積
60m²
Aの適用面積
(200m² 60m²) × 400
200
=280m²(Aの適用限度面積)
200m²
Bの適用面積
(200m² 200m² × 200 60m²) × 330
400 200
=66m²(Bの適用限度面積)
66m²
Aの課税価格 Cの課税価格 Bの課税価格
200m² × 10万円 × 80% 60m² × 30万円 × 50% 66m² × 20万円 × 80%
減額される金額3,556万円
Aの課税価格
200m² × 10万円 × 80%
Cの課税価格
60m² × 30万円 × 50%
Bの課税価格
66m² × 20万円 × 80%
減額される金額3,556万円

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このガイドについて

このガイドは、株式会社 清文社の「2023年版 土地建物の税金ガイド」を元に作成しており、内容は2023年(令和5年)4月1日現在の法令等にもとづいております。年度途中に新税制が成立したり、税制等が変更になったり、通達により詳細が決まったりするケースがありますのでご了承ください。
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監修:新谷達也、塚本和美 企画・制作:清文社

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