相続税・贈与税ガイド

4. 相続財産の評価方法

相続財産は、原則的には時価で評価しますが、土地、借地権、家屋などの不動産については、特別の方法で評価します。また、有価証券などについても、時価算出のルールが決められています。

1. 土地の評価法

1. 路線価方式とは・・・

評価単位(1筆でなく利用単位の1区画ごと)の宅地に面する路線に付された路線価(地価公示価格の約80%)をもととし、その宅地の形状等に応じて価額修正する評価方法で、市街地の宅地はこの方法によるものが多い。

2. 倍率方式とは・・・

固定資産税評価額(地価公示価格の約70%)に国税局長の定める倍率を乗じて算出する評価法で、郊外の宅地や農地、山林、別荘地などの評価にもちいる。

3. 宅地比準方式とは・・・

市街地周辺の農地、山林、雑種地等の評価にもちいられるもので、その土地を宅地とした場合の評価額から、宅地転用に要する造成費等を控除したもの。つまり、路線価方式を基本とした評価法(ただし、農地、山林などで倍率が定められているときは、倍率方式によることもできる)。

土地の評価法

宅地の評価

宅地の評価は路線価方式と倍率方式ですが、実際の評価は次によります。

1. 利用単位(1画地)の確定

  1. (イ)自用宅地・・・居住用宅地、自己の事業用宅地、遊休地、駐車場など。
  2. (ロ)貸宅地・・・借地権や地上権の設定されている宅地(通常底地をいう)。
  3. (ハ)貸家建付地・・・アパート用地、貸ビル用地等をいう。
  4. (二)私道・・・通常の評価の30%で評価するが、公道に準ずるものは評価しない。
  5. (ホ)借地権・・・借地している土地。
  6. (ヘ)転貸借地権・・・借地権者がさらに他に貸付けている借地権。
  7. (ト)転借権・・・借地権者からその借地権を借りている人の借地権。
  8. (チ)貸家建付借地権・・・借地権者のアパート用地、貸ビル用地等をいう。

2. 評価法の確定

評価方法には、路線価方式と倍率方式があります。

3. 地区区分の確定(路線価方式のみ)

  1. (イ)ビル街地区
  2. (ロ)高度商業地区
  3. (ハ)繁華街地区
  4. (二)普通商業・併用住宅地区
  5. (ホ)普通住宅地区
  6. (ヘ)中小工場地区
  7. (ト)大工場地区

(以上は路線価図の表示で確認)

4. 地形、形状、道路付等による価額修正

  1. (イ)奥行価格補正(奥行に応じて価格を補正する)
  2. (ロ)側方路線影響加算(角地の評価に適用)
  3. (ハ)二方路線影響加算(表と裏に路線があるときの評価)
  4. (二)三方または四方路線加算(三方、四方に路線があるときの評価)
  5. (ホ)間口狭小補正(袋地や間口の小さい宅地に適用)
  6. (ヘ)奥行長大補正(奥行の長大な宅地に適用)
  7. (ト)がけ地補正(がけ地を有する宅地に適用)
  8. (チ)不整形地、無道路地、広大な宅地、法令の規制のある宅地等の補正

5. 相続税評価額

路線価方式

1m²当たりの評価×地積(通常は登記簿、実測と違うときは実測)

倍率方式

その宅地の固定資産税評価額×倍率(国税局長の定めたもの)

  • ※固定資産税評価額は都税事務所や市町村役場の固定資産税評価証明書による
  • ※定期借地権の設定された底地は通常、残存期間に応じて5%~45%の減額ができる。

路線価方式の計算例

路線価 1m²=100万円
借地権割合 70%
地区区分 普通商業・併用住宅地区
借家権割合 30%
地積:200m²

1. 自用宅地の評価

  • 路線価:100万円
  • 奥行価格逓減:1.00
  • 1m²=100万円×1.00=100万円
  • 相続税評価:100万円×200m²=2億円

2. 借地権の評価(借地人の評価)

  • 1m²=100万円×1.00×0.70(借地権割合)=70万円
  • 相続税評価:70万円×200m²=1億4,000万円

3. 貸宅地(底地)の評価(地主の評価)

  • 1m²=100万円×1.00×0.30(注)=30万円
  • 相続税評価:30万円×200m²=6,000万円
(注)
1-借地権割合(0.70)=0.30(底地の割合)

4. 貸家建付地の評価(アパート用地、貸しビル用地等)

  • 1m²=100万円×1.00=100万円
  • 借家権割合は30%となっていますので
    100万円×(1-借地権割合×借家権割合)=100万円×(1-0.70×0.30)=79万円
  • 相続税評価:79万円×200m²=1億5,800万円

2. 小規模宅地の特例

1. 小規模宅地の特例とは

相続した土地(含借地権)のなかでも、居住用、事業用、貸付用については、次の区分に応じて、330m²・400m²・200m²までの土地が小規模宅地の特例として大幅に減額できます。ただし土地が数ヶ所あるケースでは、選択して適用されます(注)。

(注)
  1. 特定居住用宅地を特定事業用宅地とともに選択したケース
    330m²+400m²≦730m²
  2. 貸付事業用宅地と特定居住用宅地と特定事業用宅地を選択したケース
    貸付事業用宅地+特定居住用宅地×200/330m²+特定事業用宅地×200/400m²≦200m²
【1】特定居住用宅地等 相続人が引き続き居住・配偶者が相続する場合などに適用
330m²まで80%減額
  1. (イ)居住している相続人と非居住の相続人がその住まいをともに相続した場合は、居住している相続人のみこの特例が適用されます。
  2. (ロ)配偶者には居住要件はありません。
  3. (ハ)同居相続人や配偶者のいない場合で、下記のケーススタディ(1)の【C】の相続人はこの特例が適用されます。
  4. (ニ)同居していたが妻子を残しての単身赴任であれば、適用されます。
  5. (ホ)完全分離型2世帯住宅でも、被相続人やその親族が居住しているケースでは、全体が特例の対象となります(区分所有登記は不可)。
  6. (ヘ)老人ホームに入所した後の被相続人の住宅敷地についても本人に介護が必要で、かつその住宅を貸付用にしていない限り、特例の対象となります。
【2】特定事業用宅地等 相続人が引き続きその事業の用に供している場合に適用
400m²まで80%減額
【3】特定同族会社事業用宅地等 相続人が引き続きその事業の用に供している場合に適用
400m²まで80%減額
【4】貸付事業用宅地等 相続人が引き続き貸付の用に供している場合に適用
200m²まで50%減額

2. 80%減額できる居住用宅地のケーススタディ

この特例のケースは数が多く、非常に複雑になっています。ここでは代表的な例(前項【1】特定居住用宅地等)として、330m²まで80%減額できる居住用宅地のケースを5つ紹介します。ケースの中では父、母、長男、長女の4人家族を想定しています。

計算例

1m²=100万円の居住用宅地350m²

  1. (イ)通常の相続税評価:100万円×350m²=3億5,000万円
  2. (ロ)小規模宅地の評価減:3億5,000万円×330m²/350m²×80%=2億6,400万円

特例適用後の相続税評価:3億5,000万円-2億6,400万円=8,600万円

(1)被相続人の居住用の土地(含借地権)

【A】被相続人の配偶者が取得するケース
被相続人の配偶者が取得するケース
【B】同居相続人が取得し、申告期限まで保有し、居住するケース
同居相続人が取得し、申告期限まで保有し、居住するケース
【C】同居相続人や配偶者がいないケース

相続前3年以内に、国内に自己またはその配偶者の所有する家屋に居住したことがない相続人が取得し、申告期限まで保有していること(父がすでに死亡していて、今回は母が死亡。長男〈持家あり〉、長女〈持家なし〉)。

同居相続人や配偶者がいないケース

(2)被相続人と生計をひとつにしていた親族の居住用の土地(含借地権)

【A】被相続人の配偶者が取得するケース
被相続人の配偶者が取得するケース
【B】そこに居住していた相続人が取得し、申告期限まで保有し居住するケース
そこに居住していた相続人が取得し、申告期限まで保有し居住するケース
  • ※小規模宅地の特例を受けるためには、相続税の申告期限までに当該宅地等が遺産分割されていないと適用になりませんので注意が必要です。
    (なお未分割財産も申告期限から3年以内に分割された場合等には、更正の請求により減額が認められます。)
  • ※店舗併用住宅、アパート併用住宅などの併用住宅では特定居住用の特例は相続人の取得した自己の居住用部分に限られます。

3. 建物の評価

家屋の評価は、その家屋の固定資産税評価額により評価します。建築中の家屋については、費用現価をもとに評価されます。門、へい、庭園設備も課税対象ですが、通常のものは、実務上は評価ゼロと申告しても問題ないようです。

1. 家屋

固定資産税評価額×1.0

2. 建設中の家屋

建設中の家屋は、相続開始の日までに支払った建設費用のうち、その完成度合を加味した評価(費用現価)の70%によって評価します。

3.貸家

固定資産税評価額×(1-借家権割合)借家権割合は通常30%となります。

  • ※貸家とは、1戸建て貸家のほかアパート、賃貸マンション、賃貸ビルなどをいいます。

4. 門、へい及び庭園設備

門、へい等は、その再建築価額(現在建築したときの価額)から経過年数に応じた減価償却をした残額の70%相当で評価します。また、庭園設備は、現在の調達価額の70%として評価します。

有価証券の評価一覧

  • ※公開途上にある株式等の評価は公開価格等により評価します。
株式・出資株式(一株当たりで評価)
  1. (イ)上場株式(銘柄ごとに次の1~4のうちいずれか低い価額)
    1. 相続開始日の終値
    2. 相続開始の日の属する月の毎日の終値の月平均額
    3. 相続開始の前月の毎日の終値の月平均額
    4. 相続開始の前々月の毎日の終値の月平均額
  2. (ロ)気配相場のある株式(登録銘柄および店頭管理銘柄は次のいずれか低い価額)(注)
    1. 相続開始の日の高値と安値の平均額
    2. (イ)の2、3、4に準じた一番低い価額
  3. (ハ)取引相場のない株式(従業員数、資産、売上高の区分に応じて、次の評価法による)
    1. 類似業種比準価額(上場株式の同業種を基準にして株価、配当、利益、純資産を比較して評価する方法)
    2. 純資産価額(その法人の資産を相続税評価に評価替えして算出する方法)
    3. 配当還元価額
(注)
(ハ)の評価法が緩和されました。
公社債(100円当たりで評価)
  1. (イ)利付公社債

    上場等のもの・・・市場価額+税引後の経過利息
    上記以外のもの・・・発行価額+税引後の経過利息

  2. (ロ)割引債

    上場等のもの・・・市場価額
    上記以外のもの・・・発行価額+(券面金額-発行価額)×発行日から相続開始の日までの日数/発行日から償還期限までの日数

  3. (ハ)転換社債

    利付公社債の評価法に準じて評価する。ただし、転換社債の発行会社の株式の価額が、転換価額を超えるときは、市場価格をもとに評価する。

信託受益証券
  1. (イ)貸付信託

    信託銀行が受益者から買取る場合の買取価額
    (元本の額+税引後既経過収益-買取割引料)

  2. (ロ)証券投資信託

    日刊新聞等に掲載されている基準価額などによって評価

(注)
国税局長の指定する株式の評価は取引価額と類似業種比準価額の平均額(ただし取引価額を下限とする)。

その他の財産評価

預貯金 普通預金は原則として残高。定期預金については税引後の経過利息をプラスする。
ゴルフ会員権 取引相場の70%を原則とする。取引相場のない会員権は次による。
  • 預託金形態(通常の会員権)・・・預託金などをもとにして据置き期間に応じて評価減する。
  • 株式形態・・・取引相場のない株式の評価法による。
書画・骨とう品 売買実例価額や精通者意見価額をもとに評価する。
家庭用財産 調達価額をもとに評価するが、一括して評価してもよい。
生命保険契約の権利 被相続人が払い込んだ保険料で、保険事故の発生していないものは、解約返戻金の額によって評価する。

このガイドについて

このガイドは平成29年4月1日現在の法令にもとづいて作成したものです。年度途中に新税制が成立したり、税制等が変更になったり、通達により詳細が決まったりするケースがありますのでご了承ください。
平成25年分から所得税のほかに復興特別所得税が所得税額の2.1%課税されますが、計算の都合上これを除外している場合があります。
平成31年10月1日より消費税が10%にアップされる予定ですが、経済情勢などにより延期される可能性があります。
相続税・贈与税には複雑な問題もありますので、ケースによっては、税理士・弁護士など専門家にご相談ください。

執筆・監修 税理士/中村 節弥

編集・制作/株式会社サンビー企画

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