住まいの買い替え~3,000万円控除と住宅ローン控除、どっちがトク?

コロナ禍の影響でテレワークが浸透し、郊外へ住まいを買い替えるという動きがあるようです。こうした中、よくあるご相談が、マイホーム(居住用財産)を売却した時に、その譲渡所得から最大3,000万円を控除(引き算)できる特例を使ったほうがよいのか、新たに取得する住宅を購入する際にローンを借りて、住宅ローン控除の特例を使ったほうがよいのかというものです。
この二つの特例は、併用することができませんので、どちらを選択するか慎重に検討する必要があるのです。

住宅ローンに悩む夫婦

3,000万円特別控除と住宅ローン控除

マイホームを売却した場合の3,000万円特別控除は、マイホームを売却した場合の譲渡所得(売却価格-取得費-譲渡費用)から最大3,000万円を控除できるという制度です。例えば、マイホームを売った年の1月1日で所有期間が5年を超える場合で、譲渡所得が3,000万円以上あるならば、約600万円程度(税率20.315%の場合)税額が減ることになります。

住宅ローン控除は、住宅ローンの年末残高の1%相当額が10年間にわたって所得税から差し引かれるというものです(所得税で控除しきれない場合、翌年の住民税から控除されます。したがって、所得税と翌年の住民税の合計額が控除の上限額となります)。

新築の場合は住宅ローンの年末残高4,000万円が限度(ただし認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅の場合には5,000万円が限度)、建物消費税がかからない中古住宅の場合は2,000万円が限度となっていますので、一般的な新築住宅の場合は最大で400万円も支払う税金が減ることになります(さらに新築住宅の場合は、11年目から13年目についても、一定の条件のもとで所得税および住民税から控除されます。)。

シミュレーション~中古住宅への買い替え

それでは、一つの例でシミュレーションしてみましょう。売却するマイホームと新たに購入する住まいを以下の通りとします。

シミュレーション 中古住宅への買い替え 売却するマイホームと新たに購入するマイホーム

上記の場合、譲渡益は400万円(売却価格3,000万円-取得費2,500万円-譲渡費用100万円)となります。

このとき、3,000万円特別控除を利用すると、譲渡所得は0円(譲渡益400万円-特別控除400万円(譲渡益が400万円なので控除できる額は400万円)となり、譲渡税は0円(譲渡所得0円×税率20.315%)となります。

一方、住宅ローン控除を利用した場合、譲渡所得は400万円ですから、譲渡税は約81万円(譲渡所得400万円×税率20.315%)を先に支払うことになります。

仮に、11月1日に固定金利1%、30年返済で上記の2,000万円を借りた場合、毎年末のローン残高と住宅ローン控除による税額控除は次の表のようになります。

シミュレーション 中古住宅への買い替え 毎年末のローン残高と税額控除

上記ケースの場合は、住宅ローン控除を利用した結果、譲渡税で支払った約81万円に対し、10年間で約172万円の税金が戻ってくることになりますので、3,000万円特別控除を選択するより住宅ローン控除を利用したほうがお得ということになります。

本ケースにおける3,000万円特別控除と住宅ローン控除の比較表

詳細は税理士などの専門家に相談を

筆者が長年お世話になっている税理士法人アイアセットの石井力税理士によると、譲渡益が発生する場合、3,000万円特別控除や住宅ローン控除を利用せずに、買い替え特例(※)を利用される方もいらっしゃるそうです。この場合、買い替え時点の譲渡税を繰り延べ(先送り)できますが、将来、売却した時の税額が高くなってしまうこともあるので注意が必要だそうです。また、譲渡損失が発生する場合は、給与所得と損益通算した上で、住宅ローン控除を併用して利用したほうがよいというケースもあるそうです。つまり個々のケースによって慎重に特例を検討したほうがよい場合があるので、住まいの買い替えに伴う税制特例の活用については、専門家に相談するとよいと思います。

(※)一定の条件のもと、現在の住まいを売却し、新しい住まいに買い替えた場合、購入価格>売却価格である場合、譲渡所得がなかったものとされ所得税がかかりません。購入価格<売却価格の場合、その差額分について譲渡があったとみなされ所得税が課せられます。

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