年末年始は少しだけ住まいや不動産の話を~親子で家族の資産を守る
年末年始は、家族や親族が自然と集まる数少ない貴重な時間です。普段は忙しくて落ち着いて話す機会がなかなか取れなくても、この時期だけは一緒に食卓を囲み、ゆっくりと近況を語り合うことができます。そんな温かいひとときだからこそ、「親が持つ不動産」について、軽く話し合ってみることをおすすめします。相続というテーマだと親に対して話がしにくいものですが、親が保有する不動産の維持管理を、子どもが少しずつサポートし、親子で資産を守っていくというスタンスで捉えるのがポイントです。

実家についてまず確認しておきたいこと
実家が親の終の住処であるならば、家の状態や書類の所在状況を家族で共有しておくだけで、将来の負担が大きく減ります。
購入時の売買契約書・重要事項説明書
家を購入した当時の契約関係書類がどこにあるかは、親自身も忘れてしまいがちです。
これらは、将来売却を検討するときに非常に役立ちます。特に、平成のバブル期に購入した不動産ならば、その取得価額はかなり高いことが想定され、こうした契約関係書類が残っていれば、譲渡税を抑えられる可能性があるのです。税金がお得になるという面もありますが、私自身の経験では、父が当時購入した不動産売買契約書を親子で探したときは、その当時の思い出話に花が咲いたことを覚えています。
境界に関する事項
境界標の有無、塀の所有者、越境の有無などは、売却時に大きな影響を与える重要事項ですが、普段は意識が向きません。
一般的に、所有する土地には境界標が必要な場所にあるはずです。四角形であれば4点となりますが、隣地との接し方によってさらに増えるケースもあります。年末年始に庭や道路に出てみて、隣地との境界標がどこにあるか見てみるのもよいと思います。
また、塀の所有者や建っている位置も実は重要です。最近では境界線の内側に自己所有の塀を建てるのが一般的ですが、古い塀ですと境界線上に立っていることも多々あります。この場合は隣地とともにお金を出し合って共有している塀であることがあります。片方側がお金を拠出していても隣地と共有し維持管理は共同で行うというケースもあります。境界線上に塀がある場合、隣地所有者とどのような認識で所有しているのか、塀が老朽化した時の取り決めなどについて親に聞いておくと、将来のトラブル防止につながります。
このほか、建物の軒やエアコン室外機などが、境界線を越えているというケースもあります。現在では特に問題がないとしても、隣地所有者が不動産を売る、あるいは親が不動産を売る場合には、越境したものをどう処理するかということが問題となることがありますので、現状を把握しておくことは重要だと思います。
もし境界に関して疑問がある場合は、不動産会社や土地家屋調査士に相談すれば、境界確定の手続きや確定測量図の作成、越境状態の図面化などについて提案してもらえます。
建物診断のすすめ
親が今まさに暮らし続けている家なら、建物の劣化状況を早めに把握しておくことは、親の安全と健康に直結します。特におすすめしたいのが ホームインスペクション(住宅診断) です。
ホームインスペクターは中立的な立場の建物診断の専門家です。早めに修繕したほうがよい箇所、数年単位で様子を見ればよい箇所、想定される修繕費用の目安などを丁寧に教えてくれます。点検内容は、家の状態を正しく理解するための「健康診断」のようなもので、親だけでは把握しきれない部分を、子が一緒に確認することで安心につながります。
近年は、断熱性能の改善が健康に直接影響することが明らかになっています。家の寒さが健康リスクになるという研究報告も多く、どこから熱が逃げているか、改善するにはどの程度の費用が必要かといった断熱関連のアドバイスを提供するインスペクターも増えています。
親の健康を気遣ううえでも、こうした診断を一緒に受ける提案をしてみるのもよいと思います。
保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。
アパート経営は「家族で支える事業」
親がアパートを保有している場合、管理会社に任せているとはいえ、経営状態を家族が誰も把握していないケースは多く存在します。
そこで、まずは管理会社が毎月送ってくる収支報告書を1年分ほど見ておくとよいでしょう。収支報告書には、賃料収入、管理会社に支払った管理委託費、修繕費のほか空室状況
など、アパート運営の全てが書かれています。親と一緒に眺めるだけでも、今後の維持管理の方向性が見えてきます。
さらに余裕があれば確定申告書を見るのもよいと思います。読みなれないと難しい面もありますが、賃貸経営として黒字なのか、実質的に手元にお金が残っているかといった事業の健康状態が分かります。読めない場合は、税理士や税務や財務に詳しい銀行担当者や不動産担当者に聞いてみてもよいと思います。
家族の資産を維持し守っていくための会話を持つ
年末年始の家族団らんは、単なる会話だけでなく、家族の資産を維持し守っていくための時間として少しだけでも割けるとよいと思います。今回紹介した確認事項は、親に対して話をしにくい相続のための準備というテーマではなく、親が持つ不動産を、これからも安全に無理なく維持し、家族の資産として守っていくための情報を共有する作業と位置づけられます。
親が管理の負担を感じ始めたとき、子がそっとサポートできるように。
親の生活をより安全に、より健康的に維持するために。
そして、未来の家族みんなが困らないように。
今年の年末年始は、ぜひ少しだけ住まいや不動産の話をしてみてください。
その小さな一歩が、親の安心にも、子の安心にもつながっていきます。
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