所有者不明土地の解消に向けた「相続登記の申請義務化」について

年々増え続けているといわれている「所有者不明の土地」。こういった土地は、隣地や近隣に悪影響を与えてしまうだけでなく、開発や復興が進められないといった、土地活用の阻害要因ともなっています。このような中、所有者不明の土地の解消に向けて、2024年(令和6年4月1日)から相続登記の申請が義務化されることになりました。

所有者不明土地

所有者不明の土地とは

所有者不明の土地とは、「不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地」、「所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地」のことを指します。国土交通省の調査によると、2021年(令和2年)時点で国土全体の24%を占めており、その面積は九州本島の大きさに匹敵。原因としては、63%が相続登記の未了、33%が住所変更登記の未了となっています。

図表 所有者不明土地の割合

所有者不明の土地が増え続けている理由

現在、相続登記は義務ではなく任意ですが、申請しないことで罰せられたり、権利を奪われたりすることはないため、そのままにしているという人が多いというのが理由のひとつです。また、遺産分割をしないで相続を繰り返すと、ねずみ算式に土地の共有者が増えてしまうという点も背景にあります。もはや土地の共有者が誰なのか分からない状況となり、相続登記が手つかずになっている土地が発生しているというわけです。売却しにくい土地を相続した場合は、手間やお金をかけてまで手続きをしたくないという人がいるのも現実です。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

ルールに違反した場合は罰則として10万円以下の過料が科せられる

義務化にあたって、下記のようなふたつのルールが設けられました。これらのルールに正当な理由なく違反した場合は、罰則として10万円以下の過料が科せられることになります。なお、正当な理由とは「数次相続(遺産分割協議や相続登記が終わらないうちに相続人の1人が死亡して、次の遺産相続が開始すること)が発生して相続人の構成が変わり、資料の収集や相続人の把握に時間を要してしまう場合」、「遺言の内容について、遺産の範囲などが相続人の間で決着しない場合」、「相続人が重病を抱えているなど、手続きが進められない事情を抱えている場合」などが挙げられます。

相関図

(1)基本的なルール
相続(遺言も含む)によって不動産を取得したら、取得したことを知った日から3年以内に申請をしなくてはなりません。なお3年の起算日は相続人が亡くなった日ではなく、あくまでも取得を知った日となります。つまり、不動産を取得したことを知らなければ、3年の期間はスタートしません。
(2)遺産分割が成立した場合のルール
遺産分割の話し合いがまとまって不動産を取得したら、遺産分割が成立した日から3年以内にその内容を踏まえた登記を申請しなければなりません。

施行日(2024年4月1日)よりも前に相続があったケースも義務化の対象となります。ただし、履行期間の開始日は施行日前ではなく、施行日もしくはそれぞれの要件を満たした日のいずれか遅い日から3年間となります。

簡易に相続登記の申請義務が履行可能な「相続人申告登記制度」が新設される

相続人の間で遺産分割の話し合いがまとまるまで、遺産は共有した状態になります。現在は、共有状態で相続登記をするときは戸籍謄本などを全員分集める必要がありますが、2024年(令和6年4月1日)より、「相続人申告登記制度」が新設されることで、これまでより簡易に相続登記の申請義務((1)基本的なルール)が履行できるようになります。
この制度を利用する際は、登記簿上の所有者について相続が開始したこと、自分がその相続人であることを登記官に申し出ます。この申し出が実施されても持分の割合は登記されないので、戸籍謄本などを全員分集める必要はないということになります。また、申し出は1人の相続人が全員の分をまとめて行うことが可能です。
ちなみに、この申し出は正式な相続登記ではありません。相続が開始したことを知らせるだけにとどまるため、売却や贈与などの変更登記はできないという点は認識しておきましょう。

ルールを把握し、相続が発生したら速やかに申請を

「相続登記の申請の義務化」のポイントは、施行日となる2024年4月1日以降に、「基本的なルール」と「遺産分割が成立した場合のルール」について、正当な理由なく違反した場合は、罰則として10万円以下の過料が科せられるようになるという点です。ただし、これまで相続登記の申請が進んでこなかったのは、任意であったこと以外、手続きの煩雑さなども要因として考えられます。このような背景から、「相続人申告登記制度」が新設されるなど、より簡易に対応できる制度も利用できるようになります。
相続がすでに発生している場合でも、義務の対象となるのは記事内でご紹介した通りです。現段階で未申請の方は、早めに手続きを進めるようにしてください。また、今後相続が発生した場合も、速やかに申請するようにしましょう。

※掲載の内容は2023年3月現在のものです。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

無料不動産査定

ご売却をお考えなら、この機会にお気軽にご相談ください!

ご留意事項  

本コンテンツに掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、当社の見解を示すものではありません。
本コンテンツに掲載の情報は執筆時点のものです。また、本コンテンツは執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び当社が保証するものではありません。
本コンテンツは、情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
本コンテンツに掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、当社は一切責任を負いません。
本コンテンツに掲載の情報に関するご質問には執筆者及び当社はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。