金利と株価で読む2024年中古マンション市場予想

中古マンション市場の動きが大きく影響する指標には、金利と株価があると筆者は考えています。昨年は、長期金利が上昇し、株価は大きく上昇しました。金利が上昇すると不動産価格が下がるのが一般的ですが、住宅の場合、短期金利(変動金利)が利用されることが多いため、不動産価格への影響は限定的で、株価上昇と相まって中古マンション価格は上昇していきました。株価は景気動向を表す指標であるとともに、資産効果を生むことで、例えば親から子への住宅取得贈与などを通じて住宅市場に影響を及ぼしていると筆者は考えています。

では、今年の金利と株価について検討したうえで中古マンション市場を考えてみましょう。

金利と株価で読む2024年中古マンション市場予想

金利上昇のタイミングはいつか?

金融関係者の間では、いつ日銀が、住宅ローンの変動金利に影響を与える政策金利(2016年1月以降はマイナス0.1%)を上げるのか、そしてどの程度、政策金利を上げるのかということが話題になっています。

日銀による金利コントロールは、一言で言えば、景気が過熱すれば金利を上げる、停滞すれば金利を下げるというものです。景気が過熱しているときに金利を下げると、より投資をしようとすることでバブル経済を生む可能性が出てきますし、逆ならより景気が悪化します。日銀はこれを上手にコントロールするために金利を動かすわけです。

昨年から物価が上昇していますが、賃金がこれに追いつく形でかつ継続的なものとなれば、日銀は金利を上げる可能性があります。今年の春闘で多くの会社が賃金をアップさせるという結果になれば、政策金利を上げる可能性が高いと思います。また、欧米景気減速で利下げ観測がありますので、内外の金利差が小さくなる前に利上げしたい(なぜなら、金利差が大きくなると低金利の国のお金の価値が下がり円安に振れ、輸入インフレリスクが高まる)という思いが日銀にはあると思いますので、極力早い段階で金利を上げたいのではないかと思います。こうしたことから、2024年4月には上がると考えています。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

どの程度上がるのか?

景気が良くなりつつあるとは言っても、過熱するほどの状況ではないので、経済に影響を及ぼさない程度の利上げを日銀は考えるのではないでしょうか。経済に影響を及ぼさない金利のことを中立金利と言います。中立金利は自然利子率にインフレ率を足したものです。現在の自然利子率をマイナス0.5%程度、インフレ率を2%程度とすると、1.5%が中立金利となります。

理屈では中立金利が政策金利となってもおかしくないのですが、現在マイナス0.1%の政策金利を1.5%まで上げるということは、変動金利0.4%が2%にまで上がるということを意味します。これだと、35年固定金利と同じくらいになってしまいますので、住宅市場に大きな影響を及ぼしかねません。特に日本の場合、住宅ローンを変動金利で借りている方が多いため、利上げとはいってもゼロ金利~0.5%程度のアップが上限ではないかと思っています。さらに利上げするにしても、その後の経済状況を見ながら徐々に上げていこうとするのではないでしょうか。

株価はどうなる

賃金上昇でマイルドなインフレが定着する年になると考えるのが一般的ではないかと思います。円安で輸入インフレが再び発生するのではないかという懸念もありそうですが、現在の日米為替を見るかぎり、米国の景気減速に伴うFRBの利下げ予測を織り込んで、昨秋に比べると円安傾向にありますし、日銀が利上げすることも市場は織り込んでいるのではないでしょうか。以上から、輸入インフレは起こりにくくマイルドなインフレ定着の可能性が高く、株価は安定的な水準あるいは緩やかに上昇するトレンドを維持するのではないかと考えています。

ただし、世界的な大事件が起きてしまうと話は変わってきます。例えば、日本の近くで紛争が起きるとか、欧米の商業不動産ファイナンスがデフォルトするような場合です。前者についてはなんとも言えませんが、後者については、昨年、多くの報道機関が注視していた事案でもありますので、注視しておきたいところです。

平均的には緩やかな上昇だが・・・

世界的な大事件が発生しないと考えれば、金利は上がっても0.5%程度が上限で住宅市場にはさほど影響はなく、かつ株価も緩やかに上昇するとすれば、中古マンション価格も緩やかな上昇を目指すということになりそうです。投資用中古マンションという点では、昨年以降、賃料上昇が見られますし今後もそれが続く可能性があるので、出口価格の上昇が期待できそうです。

このように、平均的には緩やかな上昇と予想できるのですが、人気エリアとそうではないエリアで価格トレンドが異なるので注意が必要だと筆者は考えています。次のグラフは都心3区(港区、中央区、千代田区)の各全域で取引された中古マンション価格の推移と、それ以外の区の最寄り駅徒歩15分以上で取引された中古マンション価格の推移をグラフ化したものです。

都区部の中古マンション価格推移

(公益財団法人東日本不動産流通機構に登録された2006年から2023年に東京都23区内で取引された成約事例42,177件を使用し、筆者が各成約事例の品質調整を行ったうえで2006年を1.0として指数化したもの)

都心3区とそれ以外の区で最寄り駅から徒歩15分超の中古マンションでは、2013年ころまでは大きな差がありませんでしたが、それ以降は上昇の仕方に差が出ています。最も重要なのは、2022年から23年にかけての動きです。前者は上昇トレンドの勢いは変わりませんが、後者は大きく減退しています。

平均的には緩やかな上昇ですが、都心3区とそれ以外ではトレンドの相違がより明確になる可能性があるのです。都心3区の人気エリアや人気物件は海外資本など金銭的に余裕がある投資家や買主の需要が高いマーケットです。一方、それ以外の地域については一般ユーザーが多い市場です。ですから、例えば金利上昇の程度次第では影響を受けやすいと考えられ、横ばいトレンドあるいは立地やマンションの管理状況などによって下落トレンドへ転換する物件も出てくる可能性を頭の片隅に入れておくほうが良さそうです。

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