2022年 中古マンションのリセールバリュー
東京カンテイが築10年中古マンションのリセールバリューについて調査・分析しました。
首都圏
2022年のリセールバリュー最高駅は「六本木一丁目」の251.6%
対象398駅のうち大半が100%超え、資産価値が1.5倍以上となった駅は71駅を数える
首都圏平均は132.5%、資産価値が1.5倍以上となった駅は東京都心部のJR山手線エリアに集中
首都圏においてリセールバリューが算出可能だった駅は398駅で、その平均値は132.5%となった。対象物件が分譲された2012年前後は価格高騰局面にまだ入っていない時期で、新築マンションの販売価格は直近に比べればかなり割安感が強かった。それに対して、コロナ禍やウクライナ侵攻などを経た現在の中古マンション市場では堅調な実需・投資ニーズを背景に物件価格が一段と押し上がってきており、東京23区のみならず東京都下や周辺3県の近郊~郊外エリアに位置するほとんどの駅においても新築分譲時の販売価格を上回る状況となっている。
主要駅におけるリセールバリューを色分けした路線図を見ると、リセールバリューが150%以上を示す紫色の駅(=新築分譲時に比べて1.5倍以上の価格で中古流通している駅)は東京都心部に位置するJR 山手線エリアをはじめ、東京・新宿・渋谷といった職住近接エリアや富裕層から人気の住宅地を擁する城南エリアなどに数多く分布している。一方、新築分譲時よりも資産価値が目減りしている駅は東京都下や周辺3県の遠隔地に散見される程度しかなく、目減りの度合いも2割弱と築後10年が経過した割には一定以上の資産価値が保たれている。対象となった398駅の内訳を見ると、紫色が71駅(シェア17.8%)、青色が318駅(同79.9%)で、実に9割以上の対象駅において新築分譲時を上回る資産価値を示している。なお、全体の45.7%に相当する182駅では首都圏平均のリセールバリューを上回った。一方、資産価値が新築分譲時を下回った駅をそれぞれ見てみると、緑色が6駅(同1.5%)、橙色が3駅(同0.8%)で、今回は資産価値が2割以上も目減りしたことを示す赤色や桃色の駅は皆無であった。
上位駅のうち「六本木一丁目」を含む港区が最多で9駅→11駅に増加、渋谷区と千代田区が5駅で続く
2022年に最もリセールバリューが高かった駅は前年と同じく東京メトロ南北線「六本木一丁目」の251.6%で、築10年中古流通時のマンション価格が新築分譲時に比べて約2.5倍にも値上がりしていた計算となる。対象物件はいずれも大手ゼネコンが施工した駅近の大規模タワーマンションで、新築分譲時の販売価格も坪500万円弱と相応に高額ではあったものの、都心一等地に立地する非常に希少性が高い物件ということもあり、築後10年を経た現在の中古流通価格は坪1,200万円前後まで高騰している。ランキング上位30駅の内訳を見ると、3Aエリア(麻布、赤坂、青山)をはじめ富裕層から高い人気を集める高級住宅地が存在する港区が最多の11駅、次いで渋谷区と千代田区がともに5駅で続いている。渋谷区に関しては全国的にも高い知名度を誇る高級住宅地を擁しているが、近年ではJR渋谷駅前の大規模再開発によって街のポテンシャルが高まったことを受けて資産価値がさらに押し上がってきている。JR 山手線エリアに位置する駅(特にターミナル駅やその周辺であったり、地ぐらいが良好な人気住宅地)が多くランクインする中、「片瀬江ノ島」「桜木町」といった東京23 区以外の駅も登場してきている。
中部圏
2022年にリセールバリューが最も高かった駅は「東別院」の142.4%
対象57駅のうち3/4以上が100%超え、資産価値が1割以上目減りした駅は2駅のみ
中部圏平均は109.3%、首都圏や近畿圏とは異なり資産価値が1.5倍以上となった駅は見られず
中部圏においてリセールバリューが算出可能だった駅は57駅で、その平均値は109.3%となった。これまではリニア中央新幹線の開業決定を契機に面的な大規模再開発が推し進められているJR名古屋駅の周辺や地元住民から住宅地として高い人気を集める東山エリアに位置する一部の駅に限って、100%を超えるような高いリセールバリューを示すケースが散見されていた。最近にかけては名古屋市中心部で再開発エリアが拡大、高額なタワー物件の供給も引き続き行われている。近郊~郊外エリアにおいても地域経済を牽引する自動車関連企業の好業績を受けた住宅購入ニーズの高まりなどもあり、中古マンション価格が新築分譲時を上回る駅は中部圏全域に渡って着実に増えてきている。
主要駅におけるリセールバリューを色分けした路線図を見ると、リセールバリューが100%以上を示す青色の駅(=新築分譲時の価格以上に中古流通している駅)は従来通りJR名古屋駅~東山エリアにかけての名古屋市中心部に多く分布しているが、今回はそれ以外にも名古屋駅へのアクセス性が良好な駅であったり、静岡県下のターミナル駅やその周辺なども該当している。対象となった57 駅の内訳を見ると、青色が43駅(シェア75.4%)、緑色が12駅(同21.0%)で、全体の43.9%に相当する25駅では中部圏平均のリセールバリューを上回った。なお、リセールバリューが150%以上を示す紫色の駅は見られず、100%以上の合計シェアも首都圏(97.7%)や近畿圏(93.2%)に比べて20ポイントほど低い水準に留まっている。一方、資産価値が1割以上目減りした駅を見てみると、橙色と赤色がともに1駅(同1.8%)ずつしかなく、3割以上の目減りを表す桃色は今回も確認されなかった。
ランキング上位駅として名古屋エリアから23駅が登場、トップの「東別院」を含む中区が最多の7駅
2022年に最もリセールバリューが高かった駅は名古屋市営地下鉄名城線「東別院」の142.4%で、築10年中古流通時のマンション価格が新築分譲時に比べて4割以上も値上がりしていた計算となる。対象物件のうち1つは大手デベロッパーが手掛けた駅近の大規模タワーマンションで、直近にかけて街の面的な大規模再開発が進む名駅東側エリアへのアクセス性も良好な上、価格高騰しつつある新築タワーマンションに連動する形で当該物件の中古流通価格も押し上がってきており、築後10年を経た現在の資産価値は坪200万円の大台に肉迫しつつある。
ランキング上位30駅のうち、3/4以上に相当する23駅が名古屋エリアで占められており、トップの「東別院」を含む7駅が名古屋市中区に位置している。一方、東山エリアに位置する「池下」や「覚王山」は住宅地としての人気の高さから中古流通時の価格水準は上位駅の中でも群を抜いている。ただし、新築分譲時の販売価格も相応に強気な設定が為されていたために、資産価値の伸びという点では前者のエリアの方がやや優る結果となっており、ランキング上位に登場する駅数を見ても比較的少ない。
保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。
近畿圏
2022年にリセールバリューが最も高かった駅は「淀屋橋」の220.8%
対象162駅のうち大半が100%超え、資産価値が1.5倍以上となった駅は14駅を数える
近畿圏平均は125.9%、資産価値が1.5 倍以上となった駅は大阪市中心部や京都市中心部に集中
近畿圏においてリセールバリューが算出可能だった駅は162駅で、その平均値は125.9%となった。これまでは住宅地として高い人気を誇る阪神エリア、国内外の富裕層から旺盛なセカンドニーズを集める京都市中心部、街の面的な大規模再開発を経て職住近接の居住エリアとして認知度が高まる大阪市中心部において資産価値の上昇が目立っていたわけだが、直近にかけては堅調な実需・投資ニーズを背景に物件価格が一段と押し上がったことを受けて、近郊~郊外エリアにおいても新築分譲時の販売価格を上回る駅が明らかに増えてきている。
主要駅におけるリセールバリューを色分けした路線図を見ると、リセールバリューが150%以上を示す紫色の駅(=新築分譲時に比べて1.5倍以上の価格で中古流通している駅)は主に大阪市中心部や京都市中心部に分布しており、三極の一つである神戸市中心部には「県庁前」の1駅のみが確認できる。一方、京阪神エリアよりも郊外方面に位置している駅においては新築分譲時に比べて資産価値が目減りしている駅も見られるが、その数はかなり限られており、立地条件の割には一定以上の資産価値が保たれている。対象となった162駅の内訳を見ると、紫色が14駅(シェア8.6%)、青色が137駅(同84.6%)で、実に9割以上の対象駅において新築分譲時を上回る資産価値を示している。なお、全体の48.8%に相当する79駅では近畿圏平均のリセールバリューを上回った。一方、資産価値が新築分譲時を下回った駅をそれぞれ見てみると、緑色と橙色がとも5駅(同3.1%)、資産価値が2割以上も目減りしたことを示す赤色は皆無で、桃色も「奈良」の1駅のみであった。
ランキング上位駅のうち大阪エリアが半数以上の17 駅、京都・神戸エリアとの駅数の差がやや拡がる
2022年に最もリセールバリューが高かった駅は大阪メトロ御堂筋線「淀屋橋」の220.8%で、築10年中古流通時のマンション価格が新築分譲時に比べて約2.2倍にも値上がりしていた計算となる。対象物件は大阪市中心部の商業エリアに位置しており、複数の最寄駅を徒歩至近で利用可能なことに加えて交通量が多い大通りから外れた住環境も有している。さらに、歴史的な建物の外壁保存が為された物件という高いデザイン性や希少性も資産価値の上昇に寄与しているものとみられ、築後10年を経た現在の中古流通価格は坪500万円の大台に迫りつつある。
ランキング上位30駅のうち半数以上の17駅が大阪エリアで占められており、その多くは市内中心部のオフィスエリアにアクセスしやすい大阪メトロ各線やJR大阪環状線の駅となっている。この他、京都エリアからは「京都河原町」「京都市役所前」など7駅、神戸エリアからは「県庁前」「三ノ宮」など4駅がそれぞれランクインしている。また、残る2駅も京阪神エリアを含む2府1県に位置しており、今回は滋賀県・奈良県・和歌山県の駅が上位駅として登場しなかった。
中古マンションのリセールバリュー(価格維持率)について
施工から10年間が経過した分譲マンション(本調査ではサンプル数を確保するために築後9年~11年の物件)のうち、現在中古流通している物件を抽出し、分譲当時の価格と現在の価格から算出した指数。
なお、専有面積30m²未満、事務所・店舗用のユニットは集計から除外している。また、駅毎で数値を算出するにあたっては一定以上のサンプル数を有する駅に限って掲出している。
当記事出典
当記事は株式会社東京カンテイ「カンテイアイ特集(2023年5月8日配信)」の情報を元に掲載しております。 当記事に掲載されている文書の著作権は、出典元である東京カンテイに帰属します。 掲載されている文書の全部または一部を無断で複写・複製・転記等することを禁止します。 また、当記事への直接リンクは固くお断りいたします。
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