ボリュームゾーンから見る新築一戸建て住宅の変遷(近畿圏)
東京カンテイ直近10年間における新築一戸建て住宅の供給動向を調査・分析
近畿圏供給1位は「寝屋川市」の2,345戸 前期・後期通してトップを維持
近畿圏での価格帯の最大シェアは3,000万円台にシフト 4,000万円台も約10ポイント拡大

供給戸数
直近10年間の供給戸数ランキングが1位となったのは「寝屋川市」で、前期・後期ともに1位を譲らなかった。1,000戸以上の供給があった駅を見ると、大阪府寝屋川市の「寝屋川市」「香里園」、大阪府高槻市の「高槻市」「高槻」、大阪府枚方市の「樟葉」「枚方市」、兵庫県明石市の「明石」「西明石」「大久保」と、複数駅が挙がる行政区があり、これらが近畿圏の一戸建て住宅市場の中心となっている様子が窺える。「西明石」「枚方市」「大久保」は後期に順位が10以上上昇した。明石市は、行政の子育て支援策を受けてファミリー層の人気が高まったと考えられる。枚方市では「枚方市」のほか「樟葉」も比較的大きく順位が上昇し、後期は「高槻」を抜いて3位となった。枚方市は大阪府と京都府の中間に位置し、大阪市と京都市以外では唯一、京阪本線の特急停車駅を有する。
1,000戸以上の供給があった駅では、後期に順位が下落している駅も含めて軒並み戸数が増加した。このほか順位の上昇が目立った駅としては「河内山本」「立花」「四条畷」「富田」「長浜」がある。高槻市の「富田」は前期が30位圏外だったところ、後期は18位にまで上昇しており、同市の一戸建て住宅供給立地としての強さを示している。一方、上位30駅で後期にかけて順位の下落が大きかったのは、「朝霧」「園田」「深井」「長尾」「木津」が挙げられる。「木津」を除いて戸数自体は同水準で供給されており、上位となった駅に押し出された形である。ただし、京都府から唯一ランクインした「木津」は供給戸数が大きく減少し、後期は30位圏内から外れている。
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最寄駅からの所要時間
近畿圏平均は最大シェアが6~10分から11~15分へと変化した。前期・後期で両区分はそれぞれ20%超のシェアを占めていることに変化はないが、6~10分が主にバス便へシェアを奪われる形で縮小。バス便は12.5%→15.4%と2.9ポイント拡大し、これが最も大きな変動となっている。加えて、5分以内のシェアが11.0%→9.7%と縮小して後期は10%を下回っており、駅遠化のトレンドが読み取れる。「寝屋川市」では16~20分から11~15分と最大シェアが変化したが、バス便シェアは10.0%→22.1%と倍以上に拡大した。
バス便シェアの拡大は特に掲出した上位30駅で起こっており、駅徒歩圏を最大シェアとする近畿圏平均とは異なる分布となっている。2位から9位は、後期ではすべてバス便を最大シェアとしており、そのうち「高槻」「伊丹」「樟葉」「垂水」「明石」ではバス便での供給が半数を超えている。また「香里園」「武庫之荘」は、前期はそれぞれ駅から徒歩圏を最大シェアとしたが、後期はバス便へシフトした。15位「牧野」では、最大シェアが11~15分と駅遠へシフトした。前期に供給の中心となっていた6~10分の区分は、後期には33.0%→11.0%と大きく縮小。バス便が4.2%→17.4%と拡大し6~10分を上回っている。このほか、「枚方市」では最大シェアはバス便で変化がないものの、その数値は57.5%→81.9%と大きく拡大し、供給のほとんどがバス便となっている状況である。広いエリアからの需要を取り込んでいると見られる。
価格帯
近畿圏平均は最大シェアが2,000万円台から3,000万円台へ変化した。2,000万円台は前期に半数以上を占めていたが、後期は18.6ポイントと大きく縮小し33.7%となっている。3,000万円台は後期に供給の中心となるも半数には届かず、4,000万円台が7.5%→17.0%と10ポイント近く拡大した。後期にかけて高価格帯へのシフトが進んでいる。実際に1位「寝屋川市」では、前期に6割超を占めていた2,000万円台が最大シェアを奪われ、3,000万円台が半数以上を占める結果となった。上位30駅全体でも2,000万円台から3,000万円台へシフトする動きが多く見られる。「高槻市」「高槻」の最大シェアは前期・後期とも3,000万円台で変化はないが、いずれも2,000万円台が大きく縮小し4,000万円台が拡大している。また、「茨木市」では、前期では3,000万円台が半数近くを占めていたが、後期は10ポイント以上縮小し4,000万円台に最大シェアがシフトした。大阪府中心部へのアクセスが良く、前期では比較的高価格帯となっていた北摂エリアの駅が、後期はより価格水準が上昇している。
一方で、寝屋川市や枚方市といった北摂以外のエリアにも、価格上昇の波は押し寄せている状況である。後期においても2,000万円台を最大シェアに保っているのは「姫路」「木津」「長浜」「津田」と大阪府以外の駅が中心となっている。枚方市に立地する「津田」は3,000万円台のシェアが16.3%→45.3%と大きく拡大し、2,000万円台と並ぶ水準になった。同駅は大阪府交野市との境界にあり、交野市からの利用もある。このほか、「立花」「朝霧」「名谷」「園田」も前期と後期で価格帯の最大シェアが維持された。
当記事出典元
当記事は株式会社東京カンテイ「カンテイアイ特集(2025年7月31日配信)」の情報を元に掲載しております。 当記事に掲載されている文書の著作権は、出典元である東京カンテイに帰属します。 掲載されている文書の全部または一部を無断で複写・複製・転記等することを禁止します。 また、当記事への直接リンクは固くお断りいたします。
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