【2022年】過去10年間の公示地価推移から読み取る今後の住宅地価動向

2022年3月22日、国土交通省が標準地の地価を公示しました。
3大都市圏の過去10年間の対前年変動率と中心部平均m²単価の推移をもとに、今後の動向を不動産アナリストに予想していただきました。

※本記事に掲載している折れ線グラフは、地価公示にともなって国土交通省が公表した各都府県地価の対前年変動率をもとに編集部で作成しました。いずれも2013年の地価を100%とした場合の推移を表しています。

公示地価推移イメージ画像

首都圏エリア

1都3県すべてが、コロナ禍の影響から脱却

首都圏公示地価

2013年以降、上昇を続けてきた首都圏の住宅地価は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2021年に下落に転じました。しかし、2022年の対前年変動率は再びプラスとなり、1都3県の住宅地価は、おおむね下落前の水準に回復しています。

「1都3県の対前年変動率が2021年にマイナスになったのは、緊急事態宣言の発出や経済活動の停滞などに起因する先行きの不透明感によるもので、実勢価格が下がったわけではありません。ワクチン接種や株価上昇などの影響で、フリーズしていた不動産市場が活気を取り戻し、地価の上昇傾向に表れたものと見ています。また、外出自粛によって旅行や耐久消費財への出費が抑えられ、貯蓄やリモートワークによる在宅時間が増え、住まいを見直す人が増加したため、住宅購入に勢いがついたという側面もあるでしょう」(東京カンテイ高橋さん、以下同)

首都圏の上昇傾向は、今後も続伸していきそう

高橋さんは、再び上昇傾向が表れた首都圏の住宅地価は、しばらく上昇を続けていきそうだと予測します。

「コロナ禍は依然として継続していますが、それでもマンションを中心に東京都心部の人気は高く、職住近接ニーズに陰りは見受けられないため、今後も、東京都の住宅地価は上昇を続けるでしょう。また、東京都心部にオフィスを構えている会社の多くは在宅勤務を導入しており、都内での購入が難しい人は、東京23区の外周部に位置するエリアを視野に入れる傾向があります。これまで同様、東京都よりは緩やかながら、3県の住宅地価も上昇を続けるでしょう」

名古屋圏エリア

愛知県は再び上昇、岐阜県・三重県は微減傾向が続く

名古屋圏公示地価

愛知県の住宅地価推移は、東京都同様に上昇を続けた後、2021年にマイナスに転じ、2022年に回復しています。半面、岐阜県と三重県は、ずっと微減傾向が続いています。

「愛知県の住宅地価が2021年にマイナスになったのはコロナ禍が原因ですが、首都圏同様、実際に下がったというよりは、不動産取引がストップしていたことによるものです。地域経済を支えるトヨタ自動車の業績が下がらなかったこともあり、2022年にはコロナ禍前の水準に回復しました。一方、岐阜県や三重県の住宅ニーズが伸びず、緩やかに下落を続けているのは、愛知県との位置関係によるものでしょう。首都圏では、神奈川県・埼玉県・千葉県でも東京都内への通勤圏と考えられるエリアが多くあります。しかし、岐阜県や三重県は、愛知県内の事業集積地への通勤圏になるエリアが限られているため流入人口が増えず、住宅ニーズが伸び悩んでいるのです」

世界的な情勢がトヨタ自動車の業績に与える影響を注視

高橋さんは、愛知県の住宅地価は、基本的に上昇傾向を続けそうだと予測する一方、世界的な情勢がトヨタ自動車の業績にどう影響するかを注視する必要があると指摘します。

「特に名古屋市中心部でオフィス開発やタワーマンション開発が活発なので、愛知県の住宅地価は当面上昇傾向を継続すると見ています。ただし、世界的な半導体不足やロシアへの経済制裁など、地域経済に大きな影響力をもつトヨタ自動車の業績に関する懸念材料もあります。また、リニア中央新幹線の開通がどう決着するのかによっても、投資の行方が変わるでしょう。国内外の情勢にも注視する必要があります。なお、岐阜県や三重県は、大幅な高騰も下落もない見通しですから、あまり情勢を気にせずに自身のタイミングで購入できるでしょう」

関西圏エリア

大阪府・京都府の回復度合いは緩やかで、兵庫県は下降が続く

関西圏公示地価

首都圏や愛知県の住宅地価がアベノミクス効果で上昇を続けたのに対し、関西圏は横ばい期間が長く、特に大阪府は上昇が始まっても上がり方は緩やかでした。

「大阪府と京都府の2022年の対前年変動率は、プラスとはいえわずか0.1%です。回復の兆しというよりは、コロナ禍でマイナスに転じたまま横ばいになっているという感じです。両府には、関西国際空港におけるLCCの大幅増便にともなう外国人観光客の増加で地域経済が活性化し、リーマン・ショックのダメージから脱却してきたという背景があります。コロナ禍で外国人観光客の来訪が激減したまま現在にいたっているため地域経済が低迷を続け、それが住宅地価にも表れているわけです。一方、兵庫県の住宅地価については従来から大きな変化は見受けられません。阪神間では堅調ながら、神戸市より西に位置するエリアの住宅ニーズが伸びないという状態が継続しています」

3府県の住宅地価は、それぞれが異なる背景で苦戦が続く見通し

高橋さんは、3府県とも、当面は横ばいもしくは下降傾向が継続しそうだと見ています。

「まず大阪府ですが、インバウンド需要がコロナ禍前の9割以上も減少し、経済が冷え込んでいます。この状況はしばらく続くでしょうから、住宅地価はなかなか上昇に転じないと思われます。一方、京都府には、もともと外国人観光客だけでなく国内の観光客も多いという特徴があります。現在は大阪府同様に苦境にありますが、ウィズコロナのスタイルが確立すれば、国内の観光客が戻る可能性があるため、住宅地価も大阪府よりひと足先に回復しそうです。兵庫県は、先述のとおり神戸市より西の住宅地価が下降を続けているため、起爆剤となるような施策やイベントがない限り、緩やかな下降が続きそうです」

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