首都圏中古マンション価格、都心と郊外で二極化鮮明に
首都圏で中古マンション取引件数が多い駅を対象に、2019年から2025年までの価格推移を分析しました。対象としたのは、東京23区内23駅と、神奈川・埼玉・千葉から各3駅ずつ、計32駅です。それぞれの最寄り駅ごとに「専有面積70m2、最寄り駅から徒歩7分、築20年」という条件の中古マンションが、2019年から2025年までにどのように価格が変化したかを推定し、価格水準と上昇率の両面から変化を追ってみました。

都心部の高値は不動の構造に
推定方法は、いわゆる重回帰分析と言われる方法を用いています。具体的には、1m²あたり成約単価データを用いて、築年数、専有面積、最寄り駅までの徒歩分数、成約年といった要素でモデル化し推定するというものです。推定した結果は以下の表の通りです。
(公益財団法人東日本不動産流通機構に登録された中古マンション成約データから、前述の32駅を最寄り駅とする成約データ(2019年~2025年成約、専有面積50m2以上、徒歩圏内)36,847件を用いて筆者作成)
2025年時点で最も高い価格となったのは半蔵門駅(約2億2,400万円)で、麻布十番駅(約2億1,800万円)、渋谷駅(約1億8,800万円)が続きます。いずれも港区・千代田区・渋谷区の都心人気エリアに属しています。4位は目黒駅(約1億4,000万円)、5位は大崎駅(約1億3,400万円)で、都心周辺の山手線の南西エリアが上位を独占しています。また、6位から11位は中古マンションであっても1億円を超えるという結果になっています。山手線ターミナル駅の池袋駅、古くからの山手エリアに近い春日駅のほか、湾岸エリアの勝どき駅と豊洲駅、また渋谷や新宿へのアクセスがよい三軒茶屋駅と中野駅がランクインしています。
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長期の上昇率:都心・湾岸で2倍超の上昇
価格水準だけを見れば、2019年から2025年で順位の大きな入れ替わりは見られません。しかし、価格上昇は、「もともと高かった駅がさらに高くなる」という格差拡大型の構造が明確に現れました。次の表は、前年比の価格倍率と2019年から2025年の価格倍率を示したものです。
(公益財団法人東日本不動産流通機構に登録された中古マンション成約データから、筆者作成)
2019年から2025年までの6年間では、都心中心部と湾岸の主要エリアは大幅に値上がりしました。最も上昇したのは麻布十番駅で2.31倍、次いで勝どき駅2.22倍、半蔵門駅2.15倍、豊洲駅2.14倍、渋谷駅2.02倍です。いずれも2倍以上の上昇であり、都心の高級住宅地と湾岸エリアが市場全体を牽引しています。
準都心・副都心エリアも堅調で、池袋駅(1.93倍)、大崎駅(1.96倍)、中野駅(1.75倍)、春日駅(1.79倍)、目黒駅(1.89倍)など、1.8~2.0倍前後の上昇を示しています。これらの地域は、交通利便性の高さや生活機能の集約が価格上昇に寄与したとみられます。
一方、新小岩駅(1.57倍)、北千住駅(1.57倍)、荻窪駅(1.52倍)、川口駅(1.43倍)、松戸駅(1.51倍)、たまプラーザ駅(1.44倍)など都心外縁部や郊外では上昇率が1.4~1.6倍にとどまっています。都心・湾岸と都心外縁部・郊外の「2倍対1.5倍」という開きが、都市圏の新しい格差構造を象徴しているのではないでしょうか。ただし、流山おおたかの森駅だけは、1.94倍と高い倍率となっています。これは、子育て世帯に向けた各種政策が奏功し、若い世帯が流山に誘引された特別な結果だと思われます。
短期の上昇率:都心プレミアムはなお拡大、郊外は横ばい
2024年から2025年の直近1年間でみると、全体の平均上昇率は約11%(倍率1.11)です。ただし、その勢いは地域によって大きく異なっています。再び突出したのは麻布十番駅で1.32倍、勝どき駅は1.26倍、池袋駅は1.25倍、大崎駅は1.20倍、豊洲駅、半蔵門駅、中野駅はそれぞれ1.19倍など、都心および湾岸エリアが依然として強い伸びを示しました。一方、外縁部では1.1倍前後、郊外になると1.00倍程度と横ばい傾向が顕著となっています。川口駅(1.00倍)、松戸駅(1.00倍)、たまプラーザ駅(0.99倍)などは上昇が止まり、すでに成熟局面にあるようです。金利上昇や実質賃金の伸び悩みなどが影響し、実需中心の市場では価格調整が始まりつつあると考えられます。
立地による構造的転換が進む東京圏
この6年間のデータから見えてくるのは、住宅価格の地理的階層化だと考えられます。上昇率は明確に立地と結びついており、山手線内外を境に価格動向が二極化しています。かつては「首都圏全体で一律に上昇する」というマーケット傾向でしたが、今や価格動向はエリアごとに明確に分かれています。とりわけ、都心や湾岸では高価格×高上昇率という構造が定着しつつあるようです。
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