コロナ禍における不動産投資を考える

異次元金融緩和や共稼ぎ世帯の増加などを通じ、この10年、住宅系投資用不動産価格は上昇トレンドが継続していましたが、コロナ禍でそのトレンドが変わるのではないかと言われています。今回は実際の状況をデータから分析し、今後の展望について考えてみようと思います。

不動産投資

値下がり傾向は未だ見られず高止まり

東日本不動産流通機構に登録されたオーナーチェンジマンション(賃借人が利用している投資用マンション)について2010年以降に東京23区内で取引されたデータ約1万件を使って、住宅系投資用不動産の動向を見てみましょう。次のグラフはオーナーチェンジマンションの売買平均単価の推移とマンション賃料単価の推移を示したものです。

23区オーナーチェンジマンション平均売買単価と賃料単価推移

東日本不動産流通機構に登録されたデータより筆者作成

グラフにあるように、売買平均単価は2012年中盤から上昇を続け、2019年以降は横ばい傾向になっています。一方、賃料は13年中ごろまで低下傾向となっていましたが、その後は上昇が続いています。これを表面利回り(賃料単価×12か月÷売買平均単価)に計算しなおしてグラフ化してみたものが次のグラフです。

表面利回り・長期プライムレート・リスクプレミアム推移

長期プライムレートは、日銀HP「長期プライムレートの推移」より筆者作成

青い折れ線が表面利回りです。オレンジ色の線は長期プライムレートで金利動向を示しており、2010年ころから徐々に低下し、2016年以降はおおむね1%程度で推移していることがわかります。表面利回りと長期プライムレートとの差が利ざや(リスクプレミアム)となります(緑色の折れ線)。投資家にとっては、投資リスクを負う以上、一定の利ざやを要求するのが当然です。この利ざやが高いときは不動産投資リスクが高いと投資家が考えている時期であり、低い時はリスクが低いと考えている時期となります。
リスクプレミアムは2018年以降、4%弱で横ばい傾向となっており、これ以上は下がらないのではないかと筆者は考えています。金利もこれ以上、下がることは考えにくく、賃料もさらに上昇するとは考えにくいため、投資用不動産の価格は上限値に近い状態が続いているものと思われます。
こうした中で、コロナ禍のようなショックが起きると価格トレンドが変わることが多いのですが、今のところその兆候は見られません。オーナーチェンジマンションの取引件数も4月から6月は大幅に低下しましたが、7月は前年同月の9割程度まで戻っています。

2018年8月~2019年7月と2019年8月~2020年7月の取引件数

東日本不動産流通機構に登録されたデータより筆者作成

高止まりだとしても投資チャンスはある

今後、企業業績の悪化により所得が減少するなど、経済が弱ってくることがあれば価格トレンドは上昇から横ばいあるいは下落へ変わる可能性もあります。もし価格トレンドにフォーカスした投資スタイル(安い時に買い、高い時に売るという投資スタイル)であれば、このタイミングで投資するというのは難しい判断となります。どちらかと言えば、下がらないうちに売却するという選択を検討することになります。

しかし、別の投資スタイルを持ち合わせている場合、投資チャンスがないわけではありません。例えば、割安な物件に投資するという最もシンプルな投資手法として、管理コストが割高な物件を購入し管理コストを適正化する、自分で管理できる場合は自分で管理を行いキャッシュフローを大きくする、定期借家などで家賃が通常より低い設定となっている物件を購入し、定期借家契約の終了後、普通借家で募集し収支を改善するなどの方法があります。

また、老朽化した空室の多い一棟アパートや空室マンションなどに敢えて投資し、低コストで見栄えのよい改装を行った上で賃貸運営するという不動産会社顔負けのノウハウを駆使する一般投資家もいらっしゃいます。こうした投資手法は金融機関からの資金調達だけでは難しい面がありますが、今後、価格トレンドが上昇から下落へと変化すると見込まれるようになると、こうした投資手法を採る方が増えてきます。

実力を身に着ける時期と考えることも

安い時に買い、高い時に売るというのは、株式の世界でもよく言われるように簡単にできるものではありません。不動産投資で成功している方は、割安な物件や少し手を加えればパフォーマンスが高くなる物件を見つけ出す目利き力を日々鍛えていらっしゃいます。

彼らは狙った地域の物件は、投資するしないに関わらず日々チェックしていますし、その地域の利回りが、最寄り駅、最寄り駅からの距離、築年数、構造などによってどのように形成されているかを研究しています。中にはエクセルを駆使して回帰分析を行い、例えば築年数が1年違うとどの程度利回りが変化するかなども調べている方がいらっしゃいます。
そこまで細かく分析する必要はないかもしれませんが、沢山の物件を見て研究する姿勢はとても大切だと思いますし、そうした努力はどんな環境にあっても投資リスクを小さくすることにつながり、投資を成功へ導く礎になるのだと思います。

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