駅近マンションは本当に値下がりしにくいか

ここ数年、マンション価格の高騰が続いていますが、都心部のマンションについては昨秋から横ばいになってきたと一部では報道されています。今後、マンション価格動向がどのように変化するか分かりませんが、価格上昇が永続するとは考えにくいとすれば、値下がりしにくい物件を選びたいと考えるのは当然でしょう。一般に最寄り駅に近いマンションは値下がりしにくいと言われていますが、今回はこちらの信憑性について検証してみたいと思います。

駅近マンション

最近の東京都区部マンション動向

始めに、最近の中古マンション価格動向について確認しておきたいと思います。東日本不動産流通機構に登録されている東京23区内で取引された中古マンションのデータを使って、価格推移を推定したところ、昨年10月以降は横ばい傾向がはっきりしてきていることがわかりました。

東京23区内中古マンション価格推移

公益財団法人東日本不動産流通機構に登録された成約データ(東京23区内の成約データ。2021年1月~2023年2月までの36,201件)を使用し筆者推定。築年数や専有面積、最寄り駅からの徒歩分数、所在階などの品質を調整したうえで、2021年1月を1.0とした場合の価格指数推移を示しています。

マンションは一般に築年数が古くなれば新しいマンションと比べて価格は相対的に低くなります。しかし、これまで価格が上昇していたので買ったときと変わらないとか、それ以上で売れるということが多々あり、値下がりに対する感度が低くなっていた可能性があります。価格トレンドが横ばいになれば、実際の価格も年を経るにしたがって低下することになりますので、このままのトレンドが続くとすれば「値下がりしにくさ」に対する注目度が高まるかもしれません。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

「駅近は値下がりしにくい」は本当か

上場株式のように毎日取引されていれば、価格推移は把握しやすいですが、不動産の場合、同じ物件が毎日取引されることはありませんので、価格推移の把握は難しいと言われています。そこで、ある期間の中で取引されたマンションの平均成約単価を、築年数別で見ていくという方法を採用します。具体的には、2020年~2022年の3年間の東京23区内で取引された中古マンションデータを、最寄り駅から徒歩7分未満と7分以上というカテゴリーに分け、それぞれについて築年数ごとの平均成約単価を算出しています。築1年の平均成約単価を1とすると、次のグラフのように築年数の違いによって、成約単価にどの程度の差が出るのかということがわかります。言い換えれば、以下のグラフは、「マンション価格が上昇することなく一定で推移する市場」であると仮定した場合、1年ごとにどの程度値下がりするかを示唆するグラフとなります。

築1年目を1.0とした場合の価格推移

公益財団法人東日本不動産流通機構に登録された成約データ(東京23区内の成約データ。2020年1月~2022年12月までの48,284件)を使用し筆者推定。最寄り駅からの徒歩分が7分未満と7分以上でデータを分割し、築1年目から20年目までの平均成約単価を算出した上で、築1年目の成約単価を1.0とした場合の築年数による推移をグラフ化しています。

駅近は値下がりしにくい

グラフに表れている通り、徒歩7分未満のマンションのほうが値下がりしにくいことは明らかなようです。単に平均成約単価を計算しただけではありますが、データ数は5万件近くもありますので、ある程度の傾向は出ていると筆者は考えています。新築マンションを購入後2年目から20年目までの差の平均は約11%となっていますので、かなりの差が出ていると思います。5,000万円の新築マンションを買った場合、築20年経過すると、徒歩7分未満なら3,150万円、7分以上なら2,500万円となりますから、650万円もの差が出ることになります。

シンプルに考えれば、駅から近いエリアで住宅を供給できる面積は、遠いエリアの面積よりかなり小さくなります。例えば、駅を中心とした円を考えれば、半径が半分になるだけで、面積は4分の1になります。それだけ最寄り駅に近いという立地は希少で、経年したとしても相対的優位は揺るぎにくいということに繋がっているのだと思います。

駅近物件は好立地の指標であることが今回はデータから一定の証明ができましたが、ほかにも急行停車駅であること、駅周辺の商業集積が高いこと、治安の良さ、地盤の良さ(水害リスクや地震による揺れの度合が少ない)など、好立地と判断される要素は多々あります。これらが値下がりしにくさにどの程度影響しているかは、今後、機会があれば明らかにしたいと思います。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

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