住まいの断熱を知ろう

新築住宅の断熱性能に関する法整備が整ってきました。新築住宅の宣伝広告でも「UA値」といった聞きなれない用語も散見されます。断熱性能といってもよくわからないという方も多いと思います。今回は、住宅の断熱について詳しいスタジオA建築設計事務所の内山章氏に、断熱の基礎知識について聞いてみました。

住まいの断熱を知ろう

断熱のキホン

断熱性能といっても、いまひとつよくわからないという方が多いと思います。内山さんは断熱性能について次のように説明してくれました。

「断熱性能の良し悪しは UA値(外皮平均熱貫流率)で示され、値が小さいほど性能が高いということになります。簡単な例で言えば、冬に寒くなるとセーターを着ると思います。毛糸で編まれ厚くて暖かいですが、外に出ると編目が荒いので冷たい風が入ってきてしまいます。そこでセーターに比べると紙のように薄いですが風を通さないウィンドブレーカーを羽織ると、風を通さなくなって暖かくなります。これが住まいで言うところの「断熱」と「気密」です。」

新築住宅は2025年から省エネ基準と呼ばれる基準が義務化されるそうですね。

「その通りです。2030年にはさらに高い基準(ZEH(ゼッチ)基準)が義務化される予定です。今後建築される新築住宅の性能は、着実に高まっていくことになります。」

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

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国際的に遅れている断熱性能

省エネ基準やZEH基準の住宅は、ハウスメーカーさんの広告宣伝を見ても最新基準ということで、極めて高性能な住宅なのだと感じることが最近多くなりました。特に、こうした新築住宅を買えば、中古住宅になっても資産価値が保たれる、値下がりしにくいといった意見を聞きます。

「そういうメリットは少なからずあるとは思います。しかし、注意しなければならないことがあります。実は、ZEH基準でさえも、国際的な基準と比べるとまだまだ低いレベルにあるのです。例えば、東京で新築住宅を建てる場合、2025年以降の基準となる UA値は0.87、2030年以降のZEH基準は0.6です。一方、米国は0.43、ドイツ0.40、英国0.42、フランス0.36というより高い基準が義務化されていますので、日本のZEH基準は断熱のレベルでいえば入り口に過ぎません。ZEH基準では実際に十分な性能であるとは言えないので、近い将来、新築においては住宅メーカー各社の競争が進むことによって、断熱性能は欧米並みになる可能性もあります。」

そうなると、ZEH基準の住まいなら値下がりしいないとまでは必ずしも言えないと考えておいたほうがよさそうですね。確かに、私のお客様でも、こうした事情も踏まえて欧米並みの基準で住宅を建てた方もいらっしゃいます。

省エネだけが目的ではない断熱性能

断熱性というと光熱費の削減につながるというメリットもあるようですね。国土交通省が作成したパンフレットによると、東京都23区で建築した2025年省エネ基準のZEH水準の住宅とでは、年間の光熱費が約4万6000円程度少なくなるとしていました。

「もちろん、経済的メリットもあります。しかし、もっと大事なこともあります。それは住まいの断熱が健康状態と大きく関係しているということです。国交省スマートウェルネス住宅等推進事業に基づく「断熱改修等による居住者の健康への影響調査」によると、断熱改修によって家庭血圧が低下という報告がなされています。また、WHOは「冬季室温18度以上」、「住まいの新築・回収時の断熱」、「夏季室内熱中症対策」について勧告しており、国際的にも住まいの断熱は注目されるようになっています。」

寒暖差が激しい冬のお風呂場で溺水によって亡くなられるケースは、ヒートショックが原因となることが多く、消費者庁によれば、交通事故による死者数の2倍にも上るそうですから、住宅の断熱化と命とのかかわりが注目されているのも理解できます。

中古住宅断熱の鍵

新築住宅は価格が上がりすぎており、なかなか手が出ないという方も多いと思います。一方、築30年超の中古マンション取引割合は10年前の2割から3割を超えるほどになっているといいます。中古住宅の購入を検討している場合、断熱化するためにどのような方法があるのでしょうか。

「中古住宅の省エネ化を考えるならば、窓を替えるのが最も効果的です。実は、熱の流出と流入は窓が原因になっている割合が極めて高いのです。例えば、夏における外部からの熱流入の7割は窓からなのです。冬における外部への熱流出は5割が窓からです。(いずれもアルミサッシ、シングルガラスの場合)ですから、断熱性能の高い窓に交換することで室内環境は大きく変わります。マンションなら戸建住宅に比べて気密性はもともと高いので、断熱性能の高い内窓を追加設置するだけでも断熱効果がかなり高まることが多いです。」

中古住宅断熱の鍵

補助金活用も

内窓をつけるといっても費用が気になります。
「政府も住宅の省エネ化を強く意識しており、様々な省エネ補助金があります。既存住宅の窓交換について特化した補助金もあります。4月から始まったばかりで交付の例はまだ少ないようですが、ほとんど支出なくても窓を交換できる例も出そうです。国土交通省の「住宅省エネ2023キャンペーン」のウェブサイトのうち「先進的窓リノベ事業」を見ると詳細の記載がありますが、補助金申請は登録業者が行うので工務店に相談することになります。」

住宅の断熱性能に注目が集まるようになってきましたが、断熱性と気密性の意味、国際的な基準との違い、中古住宅でも断熱化のチャンスがあることなどがわかりました。住宅断熱はまだ始まったばかりですが、今後の住宅購入に活かせるとよいと思います。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

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