金利上昇と資材高騰を踏まえたマンション購入予算の策定を

住まいの購入にあたって、今後の金利上昇がローン返済にどのような影響を及ぼすかといった記事が多く見られます。初めてマンションを購入する方にとっては、金利上昇はマンション購入にも大きな影響を与える要素の一つではありますが、資材高騰による修繕積立金の上昇も気になるところです。

金利上昇と資材高騰を踏まえたマンション購入予算の策定を

賃貸暮らしからマイホーム購入する際の予算策定の考え方

仮に、現在の月額家賃が150,000円だったとしましょう。この金額の範囲内で中古マンションを購入したいと考える場合、毎月のローン返済額(元本および利息)に加え、マンションを所有することで支出することになる固定資産税・都市計画税額、管理費、修繕積立金の額が150,000円で収まるかどうかを考えます。例えば、築10年、延床面積4,500㎡、専有面積70㎡の中古マンションで、固定資産税・都市計画税が年間120,000円(月額10,000円)、管理費15,000円、修繕積立金15,000円というケースで考えてみると、ローン返済に回せるのは月々11万円となります。元利均等返済で返済期間35年、金利1%(返済期間中一定)とすれば、約3,890万円借りることができます(表:ローン概算1参照)。自己資金が500万円あるならば、諸経費込みで4,390万円のマンションが購入できるということになります。

一方、金利が2%(返済期間中一定)になると毎月の返済額は約129,000円まで上昇してしまいます。11万円で抑えたいなら約3,320万円までしか借りることはできません(表:ローン概算2参照)。自己資金が500万円あるなら、諸経費込みで3820万円のマンションでないと購入できないということになります。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

修繕積立金は徐々に上昇することを加味しておく

令和6年6月に国交省から公表された「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の改訂版によると、20階建て以下、5,000m²未満のマンションの場合、平均で1m²あたり335円の修繕積立金が必要とされています。70m²のマンションなら毎月23,450円です。この金額、少々高いのではないかと感じる方もいらっしゃるかもしれません。これは長期修繕計画で計画された修繕工事費の累計額を、計画期間中均等に積み立てる「均等積立方式」を前提としているためです。一般には、当初の積立額を低く抑えて、段階的に積立額を値上げする方式(段階増額積立方式)が多いので、マンション購入時の修繕積立金をそのまま鵜呑みにせず、均等積立方式なら毎月どの程度負担する必要があるかを考える必要があるのです。

本ケースの場合、築10年で毎月の修繕積立金が15,000円ですから、仮にマンション販売当初から修繕積立金が15,000円のままだったとすれば、過去10年にわたって本来は23,450円ずつ積み立てておく必要があったものの、その差額である月額8,450円が積立不足となっている可能性があると考えることができます。101.4万円(8,450円×12か月×10年分)が不足しているわけですから、仮に修繕の計画期間が30年ならば、これを今後20年で均等に負担する必要があるわけです。つまり毎月4,225円(101.4万円÷20年÷12ヶ月)を23,450円に加算し、27,675円として考えたほうが安全だということになります。

固定資産税・都市計画税が月10,000円、管理費15,000円、修繕積立金27,675円とした場合、返済に回せる額は97,325円となります。元利均等返済で返済期間を同様に35年、金利2%(返済期間中一定)の場合、約2,930万円までしか借りることはできないということになってしまいます(表:ローン概算3参照)。


●表:ローン概算(借入可能額の比較)

  ローン概算1 ローン概算2 ローン概算3
月額家賃 ¥150,000/月 ¥150,000/月 ¥150,000/月
公租公課(※1) ¥10,000/月 ¥10,000/月 ¥10,000/月
管理費 ¥15,000/月 ¥15,000/月 ¥15,000/月
修繕積立金 ¥15,000/月 ¥15,000/月 ¥27,675/月
ローン返済(※2) ¥110,000/月 ¥110,000/月 ¥97,325/月
返済期間 35年 35年 35年
金利 1% 2% 2%
借入可能額 約3,890万円 約3,320万円 約2,930万円

※1:固定資産税・都市計画税が年間12万円とした場合の月額金額。
※2:返済期間35年で金利は返済期間中一定とした場合に元利均等返済で算出した毎月の返済額。

資材高騰も修繕積立金をさらに上昇させる可能性も

実は、平成23年4月に公表された「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では同じ条件のマンションの修繕積立金は1m²あたり218円(70m²なら15,260円)で、実に1.5倍を超える値上がりになっています。また、一般財団法人建設物価調査会の公表データによると、令和6年6月の建築費指数(工事原価)は131.7でしたが、令和7年3月には136.0まで上昇しています。1年も経過していないにもかかわらず、工事費は4.3%も上昇しているのです。建築費の高騰は、資材高騰に加え、職人数の減少による工賃の上昇などがあると言われており、当然ながら修繕費用も従来以上にかかると予想されています。なお、一戸建てであっても維持修繕費用はかかりますから、その費用の上昇については留意しておく必要があるでしょう。

給与収入の上昇率をどう考えるか

平成バブル崩壊以降、物価が上昇するという経験をしてこなかったところ、様々な要因で建築費や資材が高騰する環境になりつつあります。一般的に景気が良好であれば、物価が上昇するとともに金利も上昇し、最終的には給与収入も上昇します。ただ、景気が良好でないにも関わらず物価が上昇する場合には、給与収入はかならずしも上昇するわけではありません。かつてのように一律で給与収入が毎年上がるということになるかどうかは分かりませんから、今後、住まいを購入する場合、物価の上昇と給与収入の上昇をある程度見極めながら、購入計画を検討しなければならないのかもしれません。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

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