擁壁を改めてチェックしよう
先日、都内の住宅地で古い擁壁が崩れる事故が報じられました。幸い大きな人的被害はなかったものの、住宅地のいたるところに擁壁が存在することを考えると、人ごとではありません。坂や段差の多い都市部では、土地を造成する際に擁壁が設けられているケースが多く、老朽化や不適切な構造の擁壁が放置されれば大きなリスクになります。今回は国土交通省が公開している「我が家の擁壁チェックシート」を参考に、安全な擁壁と危険な擁壁の見分け方について整理してみます。

危険度の高い4つの擁壁
チェックシートでは、住宅地の擁壁として適切ではないものを明示しています。代表的なのは以下の4種類です。
- 空積み擁壁:コンクリートで固めず、石を積んだだけの擁壁。
- 増し積み擁壁:既存の擁壁の上にブロックなどを継ぎ足したもの。
- 張り出し床版付き擁壁:擁壁の上部に張出し床版を設けたもの。下部の擁壁に負担がかかるリスクがある場合もある。
- 二段擁壁:低い擁壁を上下に重ねたもの。
これらはいずれも構造的に不安定なことが多く、チェックシートでも「宅地の擁壁として適切ではない」とされています。もし自宅や近隣にこうした擁壁がある場合は、早めに専門家へ相談することが望まれます。
(国土交通省「わが家の宅地安全マニュアル わが家の宅地点検[2]~擁壁編~」より抜粋)
保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。
一般的な擁壁と健全性チェック
一方で、住宅地でよく見られる擁壁には次のような種類があります。
(国土交通省「我が家の擁壁チェックシート(案)」より抜粋)
これらは直ちに危険というわけではありませんが、健全性を定期的に確認する必要があります。特に注目すべきポイントの一つが「水抜き穴」です。擁壁は常に土圧を受けていますが、雨水が浸透すると圧力は大幅に増します。その圧力を逃がすために水抜き穴が設けられています。3m²あたりに直径75mm程度の水抜き穴がひとつあることが義務付けられています(宅地造成及び特定盛土等規制法施工令第12条)。穴がない、極端に小さい、あるいは土砂や雑草で塞がれている場合は注意が必要です。
このほか、擁壁面から水がしみ出していないかどうかもチェックポイントになっています。適切に排水ができていない場合、擁壁面が常に湿っている場合、土圧が高まっている可能性が示唆されるからです。さらに、擁壁の上部の排水状況もチェックポイントの一つになっています。U字溝などの排水施設があるならば、破損していないか、排水口が詰まっていないかなどもチェックポイントになっています。上からの雨水をきちんと逃がせなければ土圧が過剰に高まり、擁壁の破損や崩壊につながる可能性があります。
また、擁壁の変状もチェックすべきポイントとされています。擁壁にクラック(ひび割れ)が入っている、擁壁の一部が膨らんでいる、傾いている、擁壁のコーナー部分がずれていたり開いているなどといった現象は、設計以上の土圧がかかっているサインであり、放置すれば大きな事故につながりかねません。
国交省のチェックシートでは、こうした項目を点数化し、総合得点によって3段階で安全度を評価できるようになっています。専門知識がなくても「どこが危険か」を客観的に把握できるため、まずは自宅や所有地の擁壁をセルフチェックしてみるとよいでしょう。
検査済証の確認
擁壁の設置を義務付ける仕組みの一つに「ガケ条例」があります。自治体ごとに内容は異なりますが、一般に高さ2mを超える崖や擁壁を伴う土地に家を建てる場合、一定の距離を離すか、または技術基準を満たした擁壁を設置することが求められます。新たに擁壁を築造する際は役所への申請と完了検査が義務付けられており、基準を満たしている場合は「検査済証」が交付されます。したがって、比較的新しい擁壁は一定の安全性が担保されていると考えることができます。既存の擁壁についても、役所で検査済証の有無を確認できます。
ただし、検査済証があっても老朽化は進みますし、高さ2m以下の擁壁は届け出や検査が不要なため、どの程度の基準で作られているのか分からない場合があります。この場合も、ひび割れやふくらみが見られるなら早めに専門家に相談すべきです。
なお、擁壁の上または下に住まいを購入する場合、一般的には検査済証の有無について、不動産仲介会社が調査し重要事項説明書で説明をしてくれます。検査済証がある場合でも、擁壁の状態については確認しておくと安心だと思います。
危険サインを放置しないことが最大の安全対策
今回の事故は決して特殊な例ではなく、全国の住宅地に潜在するリスクを顕在化したものだと筆者は考えています。擁壁は目に見える構造物であるだけに、セルフチェックによって危険の兆候を発見することは可能です。
まずできることは、
- 危険とされる4種類の擁壁ならば、速やかに専門家に相談
- 一般的な擁壁でも水抜き穴や排水施設の有無を確認
- 湿り、ひび割れ、ふくらみなど外観の異常に注意
- 検査済証の有無を確認
です。
「大丈夫だろう」と思って放置せず、まずはチェックシートを使って現状を把握すること。そして不安があれば建築士や専門業者に相談することが、住宅地の安全を守る第一歩です。
保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。
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