新型コロナウイルス感染症の拡大はマンション市場にどう影響するのか

新型コロナウイルス感染症が世界中に広がり、わが国でも緊急事態宣言が出され、社会・経済の停滞感が、住宅・不動産業界にも及びつつあります。今後、この影響はどこまで広がるのでしょうか、何しろ不確定要素が多いので予測は簡単ではありませんが、マンション売買への影響を中心に、可能な範囲で見通してみましょう。

マンション

新築マンション市場への影響は限定的か

新型コロナウイルス感染症の影響が拡大しているものの、それでも市場は動いています。
不動産経済研究所の調査によると、2020年3月の首都圏新築マンションの発売戸数は前年比35.8%の大幅な減少となりましたが、価格は6.0%のダウンにとどまっています。
発売月中に契約が成立した物件の割合を示す月間契約率は70.0%で、前月比では10.7ポイントのアップになっています。
3月には新型コロナウイルスの影響がかなり広がっていましたが、新築マンション市場の動きはそう極端な変化に至っていない印象があります。

もちろん、さらに事態が深刻化すれば、新築マンション市場への影響も強まっていくでしょうが、価格が暴落するような急激な変化はないだろうとする見方があります。

現在の新築マンション市場では、体力のある大手が高いシェアを持っているので、多少売行きが鈍化しても、すぐに値下げという動きにはなりにくいのです。長い目でみれば、下落は避けられないかもしれませんが、当面は高値維持が続きそうです。

中古マンションは価格上昇に変化の兆し

それに対して、中古マンションの売主の多くは個人ですから、新築に比べて変化が起きやすいとみられます。
これまでは、新築マンション価格の上昇に合わせて、中古マンション価格も上がり続けてきましたが、ここへきて変化の兆しが表れつつあるのです。

東日本不動産流通機構の調査によると、図表にあるように、2020年3月の中古マンション成約件数は前年同月比11.5%の大幅な減少でした。
それだけなら、新築マンションの発売戸数が減っているのと大きな違いはないのですが、成約価格にも変化の兆しがみられるのです。

2020年3月の成約価格は3,489万円でした。2019年3月は3,490万円だったので、小数点1位までなら、0.0%の±ゼロですが、厳密にいえば0.02%のマイナスなのです。

首都圏中古マンション成約件数と前年同月比の推移

資料:東日本不動産流通機構『月例マーケットウォッチ』

危機に対する素早い反応が成功につながる可能性

新築マンションは、高額物件が大量に出た月に大幅に上昇し、翌月は反動で下落するなど、価格の変動が大きいのですが、中古はそうではありません。
過去7年間の動きをみても、2019年1月に2.5%下がったのを除いて、ほぼ一貫して上がり続けてきたのです。

それが、わずか-0.02%とはいえ、下落に転じたことは、価格上昇の流れに変化が起ころうとしているのを示唆しているのかもしれません。

翻ってみれば、2008年秋のリーマンショック時には、世界的な経済危機が発生し、わが国も大きな影響を受けました。
図表にあるように、2008年までは中古マンション価格は上がり続けていたのが、翌年2009年に前年比4.3%の下落を記録し、成約件数は前年比で8.5%増加しました。
価格下落を受けて、売却に動く人が増加、その分成約が増えたわけです。

首都圏中古マンションの成約件数と成約価格の推移

資料:東日本不動産流通機構『首都圏不動産流通市場の動向(2019年)』)

変化を予感して売り急ぐ人たちが増えている

いま、それと同じようなことが起ころうとしているのかもしれません。
仲介会社の担当者などによると、2月の末ごろから、新型コロナウイルス感染症の拡大を懸念して、価格が下がる前に売っておこうと、手持ちのマンションを売りに出す人が増えているといわれているのです。

まだ始まったばかりであり、この流れが本格化していくのか、あるいは新型コロナウイルス感染症の押さえ込みに成功して、いち早く経済が正常化、住宅・不動産市場も元の活気を取り戻すのかどうか、なかなか先行きが見えないというのが正直なところです。

しかし、住宅・不動産市場では動き出すと一気呵成にすさまじい勢いで変化が起こることがあります。結果、気がついたときには手遅れだったということも少なくありません。

予断は許さないものの、シナリオによっては、このまま価格低下が本格化する可能性もありますから、いずれ買換えをと考えているのであれば、本格的な下落が始まる前に売却したほうが得策になるかもしれません。

この時期、外出しての情報収集は難しいものの、ネット上にはさまざまな情報があります。フェイクニュースに踊らされず、的確に情報を収集、変化の兆しがみられたときには、機敏に行動できるように、準備だけは進めておくのがいいでしょう。

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