新型コロナで住宅価格の行き先はどうなる?

内閣府は3月の月例経済報告で、景気の総括判断を3カ月ぶりに下方修正、国内景気について「足元で大幅に下押しされており、厳しい状況にある」としました。このように景気後退局面になると住宅価格にも影響が及ぶことが想定されますが、この先、住宅価格についてどう考えるべきなのでしょうか。

住宅価格

住宅価格の変動は緩やか

今後、景気後退することが予想される中、不動産価格も大きく値下がりするのではないかという声が多く聞かれます。
しかし、筆者は投資用不動産や商業用不動産と住宅とでは、価格に対する影響が異なると考えています。

住宅は私たちには必要な空間であり大切な場所です。
賃料を払い続けるならば取得したほうがよいと考える方は依然として多くいらっしゃいますから、潜在的な買主は相当数存在すると考えられます。
賃貸物件でもよいと考える方が増えているという話もありますが、住まいに対する長期的な安定・安全志向は依然として残っており、いつかは住まいを購入したいと考えている方は多いのです。

買い替える方々ももちろん多くいらっしゃいます。
買い替えは、住宅ローンが返済できる価格で売却できるのであれば、価格上昇期でも下落期でも、同時期に買い替えるため損得が発生しにくく、こうした需要が一気になくなるとは考えにくいでしょう。

一方、投資用不動産は原則として価格が割安の時に投資し、高くなったら売却するというのが基本ですし、商業用不動産は景気が低迷すれば企業の投資意欲は減退しますから、住宅の価格のように底堅い動きにはならないと考えられます。

戸建住宅の変動幅は小さいが

次のグラフを見てみましょう。
国土交通省が発表している1993年6月以降の不動産価格指数(戸建住宅(東京都))と2007年4月以降の指数(マンション(東京都))の推移を表したものです。

戸建住宅は平成バブル崩壊に伴い6割程度まで下がりましたが、住宅でさえも投機対象となった時代の価格調整が終了したと考えられる2000年から2013年までの指数は、平均で約100程度、上限は120程度、下限は90程度となっていることがわかると思います。

不動産価格指数(戸建住宅・マンション(東京都))

国土交通省 不動産価格指数より筆者作成

ところで、2013年以降、戸建住宅がやや上昇にとどまっている一方で、マンションは大きく上昇しています(マンションの価格指数は2007年4月から公表)。
マンションは共稼ぎ世帯の増加に伴う駅近物件の実需増という現象に加え、海外資金の流入や相続対策によるマンション投資需要の増加といった背景から戸建住宅とは異なる推移となったものと考えられます。

一方、概ね実需のみで価格形成されていると考えられる戸建住宅は2000年以降、価格変動の幅に大きな変動はありませんでした。

問題はこうしたこれまでのトレンドが今回の景気後退でどうなるのかということです。

株価の底値と住宅価格がほぼ一致

平成バブル崩壊以降についてみると、相対的な株価の底値が相対的な住宅価格にほぼ一致しているという見解があります(「不動産エコノミクス」川口有一郎著 2013年)。

先に示した不動産価格指数にTOPIXの推移を重ねてみますと、バブル期の価格調整が終了した2000年以降、確かに株価の底値と戸建住宅の価格がほぼ一致しています。

不動産価格指数とTOPIX

TOPIX月次データより筆者作成

株価は大きく乱高下していますが、戸建住宅の価格が株価下落の岩盤のようになっていることがよくわかると思います。
おそらく、戸建住宅の価格は純粋な実需を反映していることから、その国の潜在力を示唆しているということなのではないでしょうか。

2000年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災と経済を揺るがす出来事が発生したものの、戸建住宅の指数は上限120、下限90という範囲で推移していました。
今回の景気後退が過去のレベルと変わらない程度の景気後退で済むのであれば、戸建住宅の価格幅は2000年以降の幅を見ておけばよいということになります。

とすれば戸建住宅の価格の水準は下がっても90程度(現状より▲15%程度)、そしてしばらくするとその中間にある105程度、すなわち概ね現在の水準程度に最終的には落ち着くのではないでしょうか。

一方で現在のマンション価格指数をみるとTOPIXのほうが大きく下回っている状態です。 1993年から1998年ころのTOPIXも戸建住宅の指数を大きく下回っていましたが、当時の戸建価格は大きく下落しました。
これと同じ動きが起こるとすれば、マンションは価格調整が進む可能性があると考えられます。

ただし、共稼ぎなどによる暮らし方の変化による実需によって生じた戸建住宅との価格差は残るはずですので、戸建価格と同水準まで下がるということはなく、筆者の肌感覚ですが、マンション価格指数は現在の約150程度から120程度(現状より▲20%程度)まで下がる可能性があり、しばらくすると135~140程度に落ち着くのではないかと考えています。

これまで体験したことのない景気後退なら?

今回の景気後退はリーマンショック以上のインパクトと言われますので、過去の推移からだけで予測することは無理があります。
もし、今回の景気後退が、私たちが過去に経験したことのないようなものとなるのであれば話は別です。

TOPIXが戸建住宅の指数を突き抜けて下回る期間が相当期間続いた場合は、戸建住宅もマンションも先の想定以上に値下がりする可能性があるでしょう。その意味では、住宅価格の動きを読むにあたっては、上記に記載したTOPIXと二つの不動産価格指数の動きには注目しておくとよいのではないかと思います。

政府の金融財政政策だけでなく、私たち一人一人の行動もこれら資産価格の変動に影響する可能性がありそうです。何とかみんなで乗り切りたいと思います。

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