【2020年】過去10年間の公示地価推移から読み取る今後の住宅地価動向

2020年3月18日、国土交通省が標準地の地価を公示しました。3大都市圏の過去10年間の対前年変動率と中心部平均m²単価の推移をもとに、今後の動向を不動産アナリストに予想していただきました。

※本記事に掲載している折れ線グラフは、地価公示にともなって国土交通省が公表した各都府県地価の対前年変動率をもとに編集部で作成しました。いずれも2011年の地価を100とした場合の推移を表しています。

公示地価推移イメージ画像

首都圏エリア

東京都は上昇を続け、3県はほぼ2011年時の水準に

首都圏公示地価

いずれもリーマン・ショックを機に下落傾向が続いていましたが、東京都は2013年から上昇傾向に転じています。一方、神奈川県・埼玉県・千葉県は、東京都に比べると上がり方が鈍く、しばらく横ばい状態・微増傾向が続いていましたが、2020年には、ほぼ2011年並みの水準に戻っています。

「2つの新駅とその周辺の街づくりで注目されている港区や、渋谷スクランブルスクエアの開業や銀座線ホーム・埼京線ホームの移設などで進化を続ける渋谷区など、東京都は、区部を中心にマンションを含めた大規模開発が活況で、毎年プラス2%台で推移を続けてきました。3県の地価の上がり方が鈍かったのは、一戸建てメインのエリアも多いためです。神奈川県なら、みなとみらいを擁する横浜市西区や武蔵小杉駅を擁する川崎市中原区、埼玉県なら京浜東北線沿線の市区、千葉県なら浦安市や千葉県中央区など、マンション開発が活況だったところは、上昇率も高くなっています」(東京カンテイ高橋さん、以下同)

不動産市場の動きは当面停止。その後の動向に注視

今後の推移で気になるのは、新型コロナウイルスの感染者増加にともなう景気の行方やその影響です。

「首都圏に限らず全国的にいえることですが、当面、不動産市場はフリーズした状態が続くと予想されます。このため、短期的には、取引件数が減ることはあっても、価格自体は据え置かれ、急落することはないと思われます。中長期的には、実体経済が停滞して雇用や賃金レベルに影響する恐れがあります。こうなると、買い控える人や所有不動産の現金化を急ぐ人が増え、地価下落に転じる可能性があります。動向を注視する必要がありますね」

名古屋圏エリア

マンション建設が相次いだ愛知県は上昇傾向を継続

名古屋圏公示地価

愛知県は、東京都と同様に2013年で下落が止まり、以降上昇傾向を続けています。一方、岐阜県と三重県は、下落傾向に歯止めがかからず二極化が進行しています。

「愛知県では、名古屋市内をはじめ、郊外にある自動車製造拠点の近くでも複数のマンションが開発され、地価を押し上げてきました。一方、岐阜県と三重県は、流入人口より流出人口が上まわる状態が続いているため、住宅ニーズが限定的です。また、マンションの開発が少なく、一戸建てが中心というマーケット特性も影響しているようです。マンションの場合、開発対象面積が広いうえに投資対象にもなるため、地価に一定以上の影響が出ますが、一戸建ては実需中心で対象面積がさほど広くないため、ある程度供給があっても、地価を押し上げるまでにはいたらないのです」

経済基盤を支えるトヨタ自動車の動向に注目

これまでの愛知県は、リニア中央新幹線開業への期待感や、トヨタ自動車の業績伸長をフックに上昇を続けてきました。

「トヨタ自動車は、愛知県内の複数の工場を稼働停止するなど、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて軌道修正を余儀なくされています。当然、堅調に右肩上がりを続けてきた地元経済にも陰りが生じるはずですから、住宅市場にも少なからず影響が出るでしょう。また、実需中心の岐阜県・三重県も、新型コロナの影響で賃金水準が下がれば、住居の購入を見合わせる人が多く出てくるでしょう。こうした負の連鎖をどれだけ食い止められるかが、今後の地価動向の行方を左右するでしょう」

関西圏エリア

府県単位では、2014年以降ほぼ横ばい状態が続く

関西圏公示地価

いずれも微減してきましたが、大阪府と京都府は2016年から微増に転じています。府県単位で見れば、おおむね横ばい状態が続いてきたといえます。

「府や県でまとめると、リーマン・ショック後も人口減の影響で、東京都や愛知県のような上昇傾向がうかがえません。しかし、大阪市西区や天王寺区、京都市上京区や東山区など、大阪市や京都市の一部では顕著な上昇率を示しているエリアもあります。かつては住む場所と考えられていなかったエリアが再開発で注目を集めたケースや、外国人観光客の増加などで経済活動が活性化し、ホテルとの競合などで地価が上がったケースが数値に表れているようです。一方、兵庫県では、こうしたパターンに当てはまるところが少ないため、他の2府に後れを取っているものと思われます」

激減した観光客をどこまで呼び戻せるかがカギ

関西圏は、インバウンドに後押しされて地域経済が活発になってきました。が、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により、訪日観光客は大幅に減っています。

「本来は、今年に予定されていた東京オリンピックに続く目玉として2025年の大阪万博開催をさらなる飛躍につなげたいところでしたが、新型コロナによって先行きが不透明になってしまいました。すでに各報道で取りざたされていますが、宿泊業や飲食業などのサービス業は、軒並み影響を受けています。これらの問題がどのように収束し、どこまで観光客を呼び戻せるかが、今後の動向のカギをにぎるでしょう」

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