境界標は自らの眼で確認を
慣れ親しんだ一戸建てを売却するというとき、「境界標なんて見たことがありません」とか、「境界標が見当たらない」ということを言われることが多々あります。境界標とは、土地の境界点を示す目印で、コンクリート杭、金属プレート、金属鋲など、さまざまな種類があります。境界標の有無など、日頃は気にならないと思いますが、売るときに境界標があるべきところにないと、少々面倒なことも。今回はそんなお話をしたいと思います。
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境界明示が行われないケースがある
一般的な不動産売買契約書には、境界明示という条項があります。具体的には「売主は、買主に対し、残代金支払日までに、土地につき現地にて境界標を指示して境界を明示します。」といった条文になっています。これは、排他的な所有権を売主が買主に明示する義務があるということを意味します。後で境界に関してトラブルが発生すれば、売主にも責任が及ぶことがあるので注意が必要なのです。
しかし、境界明示をしないままに物件を引渡してしまうというケースが少なくありません。仲介業者に任せてしまうというケースもあり、買主自らが確認していないことはかなり多いのではないかと思います。結果、一度も境界標を見たことがない、ということが起こってしまうようです。
保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。
最近出くわした事例
10年ほど前に新築分譲戸建を購入したという方の事例です。今回、お子様が社会人になるタイミングなので買い換え予定だと言います。購入時の書類も完璧に残っていて、売却するにあたって特段の問題はないかと思ったものの、境界標が一か所見当たりませんでした。所有者に聞いても、今まで一度も見たことがないとの回答でした。法務局に登録されている地積測量図を見ると、境界標が見当たらない部分は「計算点」(測量図作成時には境界標は存在せず計算上の点であることを意味します。)になっていました。通常は、分譲会社が買主に物件を引き渡す時までに境界標を入れるはずなのですが、どう探しても見当たらないというのです。
現場に行ってみると、境界標があると思われる場所は、隣地のコンクリート塀と所有地の目隠し塀との間にありそうでしたが、双方の塀の隙間は3センチほどしかありませんでした。所有者によると、目隠し塀がある状態で購入したということなので、購入時に境界標を確認できなかった可能性があります。地面に境界標が設置できない場合、コンクリート塀の上に金属プレートを貼るというケースもありますが、上から見ても金属プレートは見当たりませんし、貼られたあとも残っていませんでした。
結局、塀の一部を壊して、杭が埋まっていないか確認するしかなく、もしそれでも見つからなければ、隣地所有者の合意を得て境界標を新設する必要があります。というのは、一般的な不動産売買契約書には境界標がない場合、後日トラブルがおきないようにするため、「売主は、買主に対し、その責任と負担において、新たに境界標を設置して境界を明示します。」と書かれているからです。境界標を正しい位置に設置するには、必要な範囲を測量し、測量データと境界についての資料と照らし合わせるなど専門的な知識と技術が必要となりますので、資格のある土地家屋調査士に依頼する必要があり、一定の費用がかかるのです。
購入時に境界標を全て確認したのに・・・
購入時には境界標は全てあったのに、いつのまにか境界標が見当たらなくなってしまうということもあります。大抵の場合は土が雨などで流されて境界標が埋もれてしまうというケースです。この場合はシャベルなどで 掘り起こせば見つかることが多いです。購入時に境界標がどこにあったかを確認しておく、境界標の位置が分かるよう写真に収めておけば、探すのも簡単です。
しかし、掘っても見つからないというケースもあります。よくあるのは塀の解体・新設で境界標も一緒に取り除かれてしまうというもの。工事業者に事前に注意するよう言っておけば、除去されることはありませんが、そもそも境界標の有無やどこにあるかが分かっていないと注意喚起もできません。また、隣地において塀を解体・新設する場合なども、注意喚起をしておく必要があります。
購入時の境界明示は欠かさず、写真などで記録を
境界標がない場合、土地家屋調査士が、いろいろな証拠書類、例えば、かつて隣地と合意した境界確認書や精度の高い地積測量図(2005年3月7日以降に作製され法務局に登録されている測量図)などを用いて、現況測量図を作成します。その現況測量図を基に、隣地所有者と境界点はここで間違いないという合意をし、そのうえで境界標を新設することになります。しかし。隣地所有者との関係性が悪い場合、合意してくれないというケースもあるので注意が必要です。
重要なことは、購入時に必ず境界明示を受け、あるべきところに境界標があることを確認し、写真などの記録を保存しておくこと。隣地で建物や塀の解体・新設工事などが始まる場合で、境界標に影響が及びそうな場合には注意をすること、年に一度の大掃除の時期に、境界標を再確認しておくことです。
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