新型コロナに見る投資用不動産の動向は如何に?

新型コロナウイルスの感染拡大で国内外の経済に多大な影響が及んでいます。24,000円前後だった日経平均も今年3月には17,000円を割り込むところまで下落しました。株価は将来の経済予測を織り込んだひとつの指標です。株価変動は不動産にも少なからず影響を及ぼしますので、投資用不動産への影響が懸念されます。

空き店舗

強い相関関係が認められるが・・・

投資用不動産の価格推移を示すものとして国土交通省の不動産価格指数(商業用不動産)があります。この不動産価格指数とTOPIXの2003年以降の動きをみてみましょう。以下のグラフを見ると、似たような動きをしていることがわかります。相関係数を計算すると0.844と強い正の相関が認められました。

商業用不動産指数とTOPIX

国土交通省「不動産指数」、TOPIX月次データより筆者作成

商業用不動産指数は、1年毎のデータであるためTOPIXは12月時点での1年平均を採用しています。
グラフを見ると、2008年のリーマンショック時は同時に株価も不動産も下落していることがわかります。
一方、2015年、2019年、2020年に株価下落が見られますが、下落が一時的または緩やかであったことからか、商業用不動産の価格推移は上昇傾向を保っていました。

おそらく、リーマンショック時のような急激な株価変動が2年も続くと、比較的短い時間で国内経済にも大きな影響が及び、商業用不動産の価格も反応したと考えられます。

今回の新型コロナウイルス感染拡大によって1700台だったTOPIXは3月に1200を割り込みましたが、現在は1400台中盤まで回復していますので、リーマンショック時の下落ほどには至っていません。
しかし、緊急事態宣言が今後長きにわたって解除されない、ワクチンがなかなか完成しないなどといった事態になれば、株価は今より大きく下がる可能性があり、その場合は商業用不動産価格にも影響を及ぼす可能性があるといえそうです。

店舗テナントを抱える投資用不動産に打撃

リーマンショック時は、サブプライムローンなどの低格付け債権が含まれた当商品を抱え込んだ金融機関が大きな損失を被り、それが世界の経済に波及するという流れでした。
しかし、今回はかなり様子が異なります。
今回は外出自粛によって、飲食店や物販店の経営が成り立たなくなり、家賃支払いが滞るという事態があちこちで発生し、店舗などに賃貸している投資用不動産がダイレクトに影響を受けているのです。

実際、1階が店舗、2階以上が事務所または共同住宅という投資用不動産の所有者から、借入返済が難しくなっているのでどうしたらよいかという相談が筆者のところにも来るようになっています。
個人オーナーだけでなく、不動産会社や不動産ファンドが保有する投資用不動産でも、休業を余儀なくされている服飾系物販店舗、飲食店舗(上場企業も含まれます)や宿泊関係などから賃料減免要請を受けているとの声が聞かれます。

2013年以降、不動産価格が上昇し概ねピークに到達したのではないかと2018年頃からささやかれていましたが、こうした中、キャピタルゲインが狙いにくくなった投資用不動産市場、特に店舗テナントを抱える投資用不動産において、インカムを直撃する新型コロナウイルスの感染拡大は大きな打撃となっています。
話題になっている店舗テナントに対する与党の家賃支援策の実現は、テナントとオーナー双方にとってまずは期待されるところです。

ところで、2013年以降、戸建住宅がやや上昇にとどまっている一方で、マンションは大きく上昇しています(マンションの価格指数は2007年4月から公表)。
マンションは共稼ぎ世帯の増加に伴う駅近物件の実需増という現象に加え、海外資金の流入や相続対策によるマンション投資需要の増加といった背景から戸建住宅とは異なる推移となったものと考えられます。

一方、概ね実需のみで価格形成されていると考えられる戸建住宅は2000年以降、価格変動の幅に大きな変動はありませんでした。

問題はこうしたこれまでのトレンドが今回の景気後退でどうなるのかということです。

経済活動再開のタイミングとワクチン完成がカギ

株価下落よりも先に家賃というインカムに大きな影響をもたらしている新型コロナウイルス感染拡大ですが、いかに早い段階で感染者数の減少を実現し経済活動が再開できるかが問われています。
時間がかかればかかるほど、投資用不動産市場の傷口は広がる可能性があります。

現時点では店舗テナントを抱える投資用不動産を中心に大きな影響が出ていますが、このまま感染者が減少しない、経済活動が再開できないという状況が長引けば、事務所賃料や住宅家賃の支払い能力も低下し、投資用不動産市場は全体的に悪化する可能性が大きくなります。仮に、この状況が長引き、株価下落や景気悪化がリーマンショック以上になってしまうとすれば、投資用不動産価格は少なくとも当時同様、3割以上の下落を覚悟しなければならないかもしれません。

経済活動がいつ正常化するのか、ワクチンの完成と浸透はいつになるのか。これらの目途が早い段階で見えてくることを期待せずにはいられません。

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