母親は施設入居、認知症の父親の在宅介護で直面した介護、お金、不動産の難題

両親が認知症で介護を余儀なくされた黒川家の人たち。母親を施設に入れて後悔した娘の黒川玲子さんは、父親は在宅で面倒をみようと決意する。コロナ禍の在宅介護ではいろいろな事件が起きるという。両親の介護で直面した介護、相続のトラブルを明らかにする。

94歳、認知症の父を「在宅介護」する理由

61歳にもなると、どちらかの親か両親ともに他界しているケースが多いが、ありがたいことに両親は健在である。しかし、健在といっても母は86歳、レビー小体型認知症で歩行が困難なため8年前から施設に入居している。父は94歳、アルツハイマー型認知症で要介護3、私と娘(孫)の3人、在宅で生活をしている。

父は認知症を発症して約4年、なにかのスイッチが入ると認知症の周辺症状が現れ、私にとってはびっくりするような言動をするが、普段はいたって普通の94歳である。
在宅介護をしていると、いろいろな事件が起こる。先日、ショートステイを利用中に39度の高熱を出し急遽発熱外来を受診。PCR検査の結果は陰性だったが、高熱のために一人で歩くことができなくなってしまった。熱が下がるまでの数日間、トイレ介助や着替えの介助で大騒ぎ。一番辛かったのは、夜間のトイレ介助である。夜中に何回も「お~い、お~い……」と呼ばれて起こされる。日中は仕事があるので昼寝をする暇もなく、私の体力は下がる一方で、重度の親の介護をしている人たちの苦労を思い知った。

仕事と介護の両立は大変である。にもかかわらずなぜ父を在宅で介護をしているのかと言うと、母を施設に入居させたことを未だに後悔しているからである。軽いうつ病を発症した母は、次第にめまいがひどくなり、水を飲むことも困難になった。脱水の危険性があるため点滴のために入院した。

しかし、点滴を嫌がる母は拘束され、ベッド上での生活をよぎなくされ次第に筋力は衰え、車いすでの移動生活となった。自宅を改修することも考えたが、施設へ入居することを選んだ。10年経ったいまでも母は「早くみんなで暮らしたいね」と言う。その言葉を聞くたびに胸が張り裂けそうになる。だから父は、私が頑張れるだけ、在宅で介護をすると決めているのである。
私には弟がいるが、独立して家を出ている。おまけに、離婚していて嫁がいない。したがってなんの迷いもなく、両親の介護は私の役目だと思った。弟は口だしをすることもなく、気を遣ってくれていて今のところ黒川家は平和である。しかし、世間では介護をめぐっていろいろな問題が起きているようである。しかし、世間では介護をめぐっていろいろな問題が起きているようである。

友人のケースだが、旦那の親と同居していたため介護者となった。たまに来る兄妹は「親の面倒を見に来た」とは言うが、何もせず来るたびに「預貯金がどうのとか、家の名義はどうだとか」あきらかに親の財産にしか興味がない様子だという。そこで、友人がとった行動は「遺言書」を作成してもらうことだった。「息子夫婦が献身的に介護をしてくれたから、息子には遺産を多く譲りたい」と一筆添えてもらったそうだ。

老人ホーム8年間の利用料が2,800万円?

認知症の介護はさまざまな問題が起きるが、お金の問題はそのひとつである。

数年前、父の通帳を見て「なんでこんなに残高が減っているんだ!」とびっくりしたことがある。原因は、母の有料老人ホームの利用料だった。8年間のホーム利用料の合計は2800万円を超えていた。施設入居は入院と異なり、先が見えない。母のように8年も頑張って生きていてくれるということは、その分、利用料がかかり続けるということだ。8年間も気が付かなかった能天気な私は、「このままではわが家は破綻する」と思い特別養護老人ホームを探して母を転居させた。

しかし、残念ながら転居してわかったことは、利用料の差はいろいろなサービスでの差であった。自分らしく、美味しいものを食べて、ある程度自由に暮らしたいのなら、高い利用料がかかる。

認知症の親の預金口座から介護費用を引き出せないケースが続出しているという。幸い、わが家は、母が「自分に何かあったら」と、預貯金の口座の管理を私に託してくれていた。父はキャッシュカードでお金を下ろすことすらできない人だ。あの時、母が教えてくれていなかったら、入院費も払えなかったかと思うと、今更ながらぞっとする。

親が認知症になり貯金通帳を必死に探して見つけたが、通帳印もカードの暗証番号も分からず苦労したということは良く聞く話である。事前に家族で話し合っておくことをおすすめする。

両親に介護が必要になってから、私は自分の老後について考えるようになった。お金に無頓着な私は、貯金とか資産運用とかを考えたことすらなかった。しかし、すずめの涙のような年金では楽しい老後生活なんて送れるわけはないことを痛感した。在宅で介護保険のサービスを利用するのにもお金はかかる、入院費だってばかにならない。

認知症の父が紛失?家の権利書が見つからない

あまり考えたくはないが、いつか介護をする必要がなくなる日が来る。お墓はあるので心配ないが、気になるのは相続のことだ。預貯金はきっちり分ければすむかもしれないが、問題は築40年の家だ。数年前、父が「固定資産税が3000万円になったので家を売った(父の妄想)」と大騒ぎしたことがあり、権利書を探したがどこにも見あたらなかった。実は、権利書や通帳など重要な書類を母が一カ所にまとめおいてくれていたのだが、父がどこかにやってしまったようだ。そう、わが家には家の権利書がないのである。おまけに「山口県に兄弟名義で土地を所有している」と言っている(たぶん妄想)。権利書がなくて名義変更や売買はどうすればいいのか?と疑問は尽きないが、考えただけでぞっとするので現状は放置状態である。

わが家は、弟は離婚し嫁がいないし、莫大な財産もない。おまけに姉弟仲良しなので「相続争い」は無縁だと思っていたら、最近仕事でご一緒する行政書士から「お金がない方がもめるケースが多いのですよ。身内は一度もめると他人より厄介ですからね」と言われてしまった。「相続は争続って言いますよねえ~」と冗談を言ってみたものの、後々慌てないように、専門家に相談をしておいたほうがいいかと考えている。

いつ起こるかわからない親の介護だからこそ、親が元気なうちに、家族で話し合ってみることをお勧めしたい。さらに、気がかりな点がある場合は、相続や不動産に詳しい専門家に相談してはいかがだろうか。相談できる専門家がいるだけでも安心できそうだ。

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