地震災害リスクと都内住宅価格の関係

私たちが住まいを選ぶ際、利便性や快適性を重視し、それが住宅価格に反映されているというのは直感的にも理解できます。ところで、住む地域の危険性については、市場はどの程度意識し、それが価格にどの程度反映しているのでしょうか。
今回、東京都が発表している「地震に関する地域危険度測定調査」を利用して、地域の危険度が住宅価格にどの程度影響しているのか調べてみることにしました。

総合危険度ランクとは

地震に関する地域危険度測定調査画面

東京都都市整備局:地震に関する地域危険度測定調査サイト(2021/05/18時点)

地震が発生すると、揺れによる建物の倒壊、さらには火災の発生による延焼等、大きな被害を引き起こす可能性があります。この調査では、地盤の特性(揺れを増幅する地盤の緩さの程度)・建物の密集度・建物の特性(構造や耐震性)から導かれる「建物倒壊危険度」と、出火の危険性・延焼の危険性から導かれる「火災危険度」に、地域の道路の多さ、道路ネットワーク密度の高さといった道路基盤などの整備状況から評価した「災害時活動困難度」を加味し、「総合危険度」を測定しています。「総合危険度」は相対評価により、都内5,177町丁目を5段階でランク分けしています。

地震の揺れによる以下の危険性を町丁目ごとに測定しています。

 建物倒壊危険度   建物倒壊の危険性
 火災危険度   火災の発生による延焼の危険性
 総合危険度   上記2指標に災害時活動困難度を加味して総合化したもの 

地域危険度はそれぞれの危険度について、町丁目ごとの危険性の度合いを5つのランクに分けて、以下のように相対的に評価しています。

(注)危険度のランクは相対評価のため、安全性が向上していても、他の町丁目の安全性がより一層向上している場合には、危険な方向にランクが変化している場合があります。(東京都都市整備局ホームページより抜粋)

地図を見ると、東京23区の東部はランク4やランク5が多く、西側に行けば行くほどランク1や2の割合が多くなっていることが分かります。これは23区内には東京都下エリアよりも地震の揺れが増幅されやすい地域が多く広がっており、そこに木造住宅が密集していたり、道路が狭く消防活動が難しい地域がある場合、結果として、総合危険度が高くなる傾向があると考えられます。東京都下エリアは台地が多く見られるため、地盤は良好ですし、敷地に対してゆったりと建物を建てるケースが多いことから、総合危険度ランクは低くなっているようです。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

総合危険度は価格に影響しているか?

住宅価格は、東京都下より23区内のほうが高いというのが一般的です。これは東京駅への近接性が大きく影響していると考えられます。また、それぞれの住宅価格は、東京駅への近接性のほか、最寄駅からの距離、建物の築年数、マンションであれば所在階などのいくつかの物件属性によって価格が形成されていると考えられます。そこで、こうした属性による品質を一定のものとみなせるよう数学的に処理することで、総合危険度ランクそのものが住宅価格にどの程度影響しているのかを分析します。利用したデータは、公益財団法人東日本不動産流通機構に登録された2020年4月1日から2021年3月31日までの中古一戸建ての成約データと中古マンション成約データです。

次のグラフは総合危険度ランクが中古一戸建てと中古マンション価格に与える影響度合いを示したもので、総合危険度ランク3を基準にしたとき、他のランクに該当した場合の価格への影響度を数値化して表しています。

総合危険度ランクが住宅価格に与える影響

(公益財団法人東日本不動産流通機構に登録された成約データおよび総合危険度ランクより筆者作成)

具体的には、都内の中古一戸建てがランク4に存している場合、ランク3と比べて6.43%価格が低くなる傾向があるということを表しています。中古マンションについて見てみると、総合危険度ランクが高くなれば価格が下降していくという合理的な結果になっていることが分かると思います。一方、中古一戸建てについては、ランク4と5になると大きくマイナスの方向に影響していますが、ランク1から3まではあまり変わりがないという結果になっています。
 
なぜこのような結果になったのか想像の域を超えませんが、マンションは地震で建物が大きく破損した場合、土地持分だけを売ることができませんし、自分の意志だけで建物を修繕することもできませんので、危険度のより低い地域に対する評価が高まり、総合危険度ランクが1や2に対する選好が強まったのではないでしょうか。一方、一戸建ては土地だけでも売ることができますし、建物を自分の意志だけで修繕したり建替えたりできるという点から、ランク4や5のように総合危険度が高い場合は価格に対してマイナスに影響するものの、危険度がより低い地域に対する評価が上がらなかったのではないでしょうか。

総合危険度が高いエリアに住むならば備えを十分に

南関東におけるマグニチュード7程度の大地震の発生確率は、今後30年以内に70%程度(発生予測確率は地震調査研究推進本部による)と予測されています。あるいは首都直下型地震についても常に注意したほうがよいと言われています。こうした中、ランク4やランク5のエリアで住宅を取得してはいけないのでしょうか。もちろん、より危険度の少ない地域のほうがよいとは思うものの、必ずしもランク1だから安全というわけではなく、その地域の危険性について日常から意識し、備えを怠らないことのほうが大切なのではないかと考えています。

ランク4やランク5が他の地域よりも価格が低い傾向にあるならば、価格が安い分、火災保険だけでなく地震保険に入るということも検討できます。地震で建物が全壊したり半壊したとしても、火災保険では補償されませんし、地震が原因となる火災も火災保険では補償されないということをご存知だというかたは少ないのではないでしょうか。もし、ランク4やランク5のエリアで住まいを購入するのであれば、ランクに一喜一憂するのではなく、地震保険以外にも、例えば、家具への転倒防止器具設置、食料・飲料・生活必需品などの備蓄、非常用持ち出しバッグの準備、家族同士の安否確認方法など、備えをどうするかを考えることも重要だと思います。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

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