宅建業法規制改正でハザードマップの説明を義務化 水害被害の9割は危険が指摘されたエリアで起こっている

このところ毎年のように、台風や豪雨災害が発生しています。そのため、宅地建物取引業法の施行規則が改正され、2020年8月から不動産取引に当たっての重要事項説明時に、ハザードマップを用いて取引対象物件の所在地について説明することが義務化されています。それだけ重視されているハザードマップ、その所在や内容についてしっかりと理解しておきたいところです。

ハザードマップイメージ

洪水浸水想定区域と実際の浸水エリアがほぼ一致

このところ、わが国では毎年のように大規模な水害が発生しています。気象庁では、損壊家屋等1,000棟程度以上、浸水家屋1万棟程度以上の家屋被害、相当の人的被害などがあった場合に名称を定めていますが、2015年以降だけでも図-1にあるような大規模な災害が発生しています。
たとえば、2018年の「平成30年7月豪雨」では、西日本を中心に広域的かつ多発的に河川の氾濫、崖崩れが発生し、家屋の全半壊は2万棟を超え、浸水家屋は3万棟近くに達し、200人以上の犠牲者が出ました。
国土交通省では『平成30年7月豪雨災害の概要と被害の特徴』と題した報告書を作成していますが、そのなかで、「小田川(岡山県倉敷市)では、洪水浸水想定区域と実際の浸水範囲がほぼ一致にもかかわらず、51名が死亡」とし、ほとんどの被害がハザードマップで危険エリアとされている場所で発生しているにもかかわらず、大きな被害が出たと総括しています。

資料:国土交通省気象庁ホームページ

資料:国土交通省気象庁ホームページ

ハザードマップを十分に理解している人は少数派

事前にハザードマップを入手して、危険に応じた対応をとっていれば、被害の多くは防げたのではないかという反省があるわけですが、実は、この時の被害に遭った44市町のすべてが洪水、土砂災害ハザードマップを公表していました。しかし、それが十分には活用されていなかったのです。
災害後、兵庫県立大学の研究チームが調査したところ、被害に遭った人たちのうち、ハザードマップについて「内容を理解していた」とする人は24%にとどまり、「見たことはある」が51%、「知らなかった」が25%という結果でした。
「見たことはある」が内容を十分に理解していない人、またそもそも存在を知らなかった人たちが多かったわけで、それが被害の拡大につながった面もあるのではないでしょうか。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

ハザードマップの上で所在地を明示する

こうした現実を踏まえて、広く国民にハザードマップの存在を周知徹底し、その理解を進めてもらおうという狙いから、宅地建物取引業法の施行規則が改正され、2020年8月から不動産取引などの重要事項説明時にハザードマップによる説明が義務化されました。
国土交通省では、運用に当たってのガイドラインを次のようにまとめています。

・水防法に基づき作成された水害(洪水・雨水出水・高潮)ハザードマップを提示し、対象物件の概ねの位置を示すこと

・市町村が配布する印刷物又は市町村のホームページに掲載されているものを印刷したものであって、入手可能な最新のものを使うこと

・ハザードマップ上に記載された避難所について、併せてその位置を示すことが望ましいこと

・対象物件が浸水想定区域に該当しないことをもって、水害リスクがないと相手方が誤認することのないよう配慮すること

リスクが高い地域からの移住にポイント付与

このハザードマップの重要性を広く認識してもらうため、2021年4月上旬申請開始予定の「グリーン住宅ポイント」制度において、「災害リスクの高い区域から移住するための住宅」がキーワードになっています。この制度では、高い省エネ性能を有する新築住宅であれば、基本40万ポイント(40万円相当)が付与されますが、「災害リスクの高い区域から移住するための住宅」については、特例として合計100万ポイントになるのです。また、中古住宅についても、「災害リスクの高い区域から移住するための住宅」であることが、30万ポイント取得の条件のひとつになっています。
これは、住宅購入に当たって消費者に災害リスクについて理解してもらい、少しでも被害も小さくしたいという考え方を反映した動きといっていいのではないでしょうか。

生命・財産を守るために必要なこととは

これから住宅の取得を考えるのであれば、希望エリアのハザードマップを取得して、安全な場所かどうかを必ず確認しておきましょう。
ハザードマップの内容は市区町村によって若干の違いがあるとはいえ、基本的な内容は統一されています。
例として図-2の東京都世田谷区のハザードマップをみてみると、世田谷区と川崎市の間を流れる多摩川沿いに、リスクの高いエリアが広がっていることが分かります。洪水が発生したとき、どれくらい浸水するのか、その範囲、浸水の深さなどが色分けされているので、希望エリアの安全度を推し量ることができます。浸水とは別に、土砂災害のリスクのある場所も点在していることが分かります。
また、洪水が発生した場合、どの方向に避難すればいいのか、避難所はどこか、その途中に地下道などの危険な場所がないかどうかなども確認することができます。
このように、事前にハザードマップを確認し、希望エリアのリスク度合いはどうか、避難所などが近くにあるかどうかなどを十分に理解しておくことが、生命を守り、住まいを守ることにつながるのです。

図-2 東京都世田谷区の多摩川水系ハザードマップ

図-2 東京都世田谷区の多摩川水系ハザードマップ

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

購入

エリア・沿線・ご希望の条件から物件を探す

ご留意事項

本コンテンツに掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、当社の見解を示すものではありません。
本コンテンツに掲載の情報は執筆時点のものです。また、本コンテンツは執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び当社が保証するものではありません。
本コンテンツは、情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
本コンテンツに掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、当社は一切責任を負いません。
本コンテンツに掲載の情報に関するご質問には執筆者及び当社はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。