築15年目以降の中古マンションは値下がりしにくいのか?

10年ほど前までは、中古マンションは築15年ころから値下がり方が緩やかになると言われていました。ですから、築15年前後の中古マンションを購入すれば、値崩れしにくいという意見が多く聞かれました。あれから10年経過し、中古マンション取引は活況となっています。築15年ころから値下がり方が緩やかになるという傾向は、最近でも同じなのでしょうか?

築15年目以降の中古マンション

10年前とは様相が異なる

あるマンションがどのように値下がりするかを的確に予測することは極めて困難です。しかし、現時点で取引されている中古マンションにおいて、築年数の違いによって平均成約単価がどのように変化するかを調べることは可能です。そこで、東日本不動産流通機構に登録された東京23区の中古マンション成約データをもとに、築年数別の平均成約単価をグラフ化してみました。

東京23区 築年数別平均成約単価(円/㎡)

公益財団法人東日本不動産流通機構に登録された成約データより筆者作成

赤い折れ線グラフは2006年から2010年に登録された築年数別の平均成約単価です。確かに築15年ころから値下がり傾向が止まりつつあるようです。一方、青い折れ線グラフは2016年から2020年(10月末まで)に登録された平均成約単価です。こちらは築25年ころから値下がり傾向が止まりつつある傾向を示しています。10年前に言われていた「築15年前後が狙い目」という話ではなくなっていることがわかります。また、築35年から築40年ころにおいて、成約単価が少し上昇していることがわかります。

変化した理由

このような変化が起こった主な理由は、古いマンションの取引量が増加したことにあると筆者は考えています。次にお示しするグラフは、同じ時期(2006年から2010年および2016年から2020年)における築年数別の成約件数です。

東京23区 築年数別成約件数

公益財団法人東日本不動産流通機構に登録された成約データより筆者作成

10年前(赤い棒グラフ)と現在(青い棒グラフ)を眺めてみると、右に引きのばされた形状になっているように見えると思います。特に、築15年から築20年の中古マンション取引と築30年以上の中古マンション取引が大きく増えていることがわかると思います。

買主からすれば、築年数が1年違えばそれなりの価格差はあるべきと考えるでしょうから、築15年から築20年程度の中古マンション取引が増えたことによって、築15年以降の中古マンションにおいても築年数の差が価格に現れるようになったのではないかと筆者は考えています。

築30年以上の中古マンション成約単価が少し上昇しているのは、売主が不動産会社であるリノベーション済み物件が含まれているからではないかと思います。実際、リノベーション済み中古マンションは広く販売されていますし、築年数が30年以上のリノベーション済み物件も多く見受けられます。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

築30年超のマンションでもエンドユーザーに売れる時代に

リノベーション済み物件に対するニーズの増加は、不動産会社によって作り込まれたリノベーション物件よりも、自分で好みの空間を作りたいというニーズも生み出しています。築30年以上で特段手を加えていない中古マンションを探し、自ら改修工事をプロデュースするという方もみられるようになってきました。

その結果、築30年以上の中古マンションは転売業者(古い物件を購入し、改修した上で市場に供給する不動産会社)に売るしかないとする従来の考え方が、昨今では一般の市場でも適正な価格で売却ができると考えられるようになってきました。

築25年以上を狙うなら維持管理にも注目

10年前は築15年前後の中古マンションは値下がりしにくい狙い目物件と思われていましたが、現在では築25年前後まで値下がりが続くということが分かりました。それでは、今後は築25年前後の中古マンションを狙えばよいのでしょうか?

筆者は、築年数が古くなると、市場で評価されるマンションとそうでないマンションの格差が大きくなると考えています。築年数が新しいうちは、そういった格差は表面化しにくいですが、古くなってくると維持管理の質が価格に反映してくると考えられるからです。マンションは個人が保有しているお部屋だけでなく、区分所有者が共有する共用部の維持管理が重要です。建物や設備の老朽化に管理組合がきちんと取り組んでいるか、十分な修繕積立金を収集しているか、適切に修繕しているかという点が価格に反映していくでしょう。

また、周辺地域とのコミュニケーションも重要です。マンション管理組合が近隣のお祭りに参画するなどという取り組みなどの活動がそのマンションの存在を周辺地域に認識させ、中古マンションとして売却した際、若い世代が購入する可能性を高めるというケースもあります。区分所有者が若返ることは、マンションの維持管理の継続性も高めること につながります。これらの取り組みは管理会社任せでは実現できません。管理組合が自ら取り組んでいるかどうかも注視する必要があるのではないかと考えています。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

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