ウィズコロナ時代の「マンションVS一戸建て」今、買うならどっちがお得?

新型コロナウイルスの影響を受け、住宅選びにも大きな変化が起こると予測されている。住宅選びの大きな関心事の一つである「マンションか、一戸建てか」というテーマも、その影響は免れないだろう。ウィズコロナの今、家を買うなら、マンションと一戸建てのどちらが得なのか。各種データから考えてみたい。

マンションVS一戸建て

一戸建てのほうが価格は安く、面積も広い

まずは現状の価格から比較してみよう。下の表は首都圏の新築一戸建てと新築マンションについて、2018年と2019年の平均価格と建物面積(マンションは専有面積)を示したものだ。

首都圏新築マンション・新築一戸建て価格

2019年の数値で比較すると、新築一戸建ては平均価格が4,064万円なのに対し、新築マンションは5,904万円と、1,840万円の差がある。建物面積はというと、新築一戸建てが98.8m²、新築マンションが63.09m²と、逆に一戸建てのほうが35m²余り広い。価格を面積で割ったm²単価で比べると、新築一戸建てが41.13万円、新築マンションが93.58万円と、マンションのほうが2倍以上も「割高」ということになる。前年の2018年と比べても、その差はさらに広がる傾向にある。なお、中古についても築年数が比較的浅い物件については、新築と同様に一戸建て価格よりもマンション価格が高くなる傾向がみられる。

このデータを見た50代~60代の中には、驚いた人も少なくないだろう。というのも彼らの多くが初めて家を買った昭和の時代は、賃貸住宅からスタートしてとりあえずマンションを買い、子どもが成長したら一戸建てに買い替えてゴールするという「住宅すごろく」が一つのセオリーとして定着していたからだ。その価値観には、「若いころは一戸建てには手が届かないから、狭くてもマンションで我慢する」という考え方が染み付いている。

ところが今や、一戸建てよりもマンションのほうが価格も単価も高いのだ。30年前と変わらないのは、「マンションより一戸建てのほうが広い」という点だけとなっている。価格と広さのデータを単純に比較すると、一戸建てのほうがお得と言える状況だ。

マンションと一戸建ての価格の逆転とも言える現象はなぜ起きたのか。最も大きな要因は立地の変化だろう。

昭和の時代はマンションでも一戸建てでも、供給エリアは都心から離れた郊外が主流だった。マンションは駅の近くに建てられることもあったが、それらはむしろ例外的なケースで、大半のマンションは駅からバスを利用する大規模に開発される団地型の物件だ。

こうした郊外の団地型マンションは専有面積70m²~80m²台が中心で今の新築マンションよりは少し広めなものの、一戸建てには及ばない。一戸建てと同様に郊外で駅から離れた場所に立地しながら、面積はやや小さいのだから、マンションのほうが、価格が低くなるのは当然だ。

しかし、時代が平成に入り、いわゆる平成バブルが弾けると状況が一変する。地価の下落とともに、マンションを中心に供給エリアがどんどん都心に近づく「都心回帰」が進んだのだ。同時に郊外の団地型開発が影を潜め、マンションの立地が駅に近づく傾向も強まった。

リモートワークで一戸建ての資産価値が上がる!?

2008年に起きたリーマンショックの直前からマンション価格が上昇し始め、都心での供給は高額物件に限定されるようになる。だが買ったマンションを中古で売るときに大きく値下がりしないよう、「資産価値」を重視する傾向が強まり、駅からの距離が短くなる現象はその後も続いている。

一方で一戸建てについては、そのような都心回帰や駅近志向の流れはほとんど見られない。そうした好立地な土地は地価が高いため、手が届く価格帯の一戸建てを供給するのが難しいためだ。また一戸建て購入者は永住志向が強く、買い替えを前提とした資産価値をさほど重視しないという面もあるだろう。

下のデータは、首都圏で2019年に分譲された新築一戸建てと新築マンションの駅からの徒歩時間別の戸数分布を示したものだ。これを見ると、一戸建ては徒歩10分~15分の戸数が最も多くなっているが、マンションは3分~5分が最も多く、10分を超えると戸数が大幅に少なくなることが分かる。

首都圏2019年新築一戸建てと新築マンション

このようなマンションと一戸建ての立地条件の違いが、価格の逆転現象を促した大きな要因といえるのだ。したがって「一戸建てのほうが広くて安いからお買い得」と単純に断定することはできない。広さや周辺環境か、あるいは都心や駅への近さか、どちらを優先するかによって、お得度の判定も自ずと変わってくる。

コロナ禍が住宅選びに大きな影響を与えたとされる理由の一つに、リモートワークの広がりが挙げられる。在宅で仕事をする割合が高まれば、わざわざ都心の会社に通勤する必要性が薄れ、これまで最重要ポイントとされていた通勤利便性の優先順位が下がるはずだ。

そうなると、都心や駅への近さを売り物にしていたマンションの優位性も危うくなってくる。通勤する必要がないのなら、郊外や駅から離れた場所に家を持ったほうが、緑が豊富で子育てもしやすい。しかもそうした場所の一戸建ては、都心のマンションより広くて安いのだ。アフターコロナでは一戸建ての資産価値が相対的に高まると考えられるだろう。

郊外エリアは都心に比べて買い物や食事をする店が少ないと思われるかもしれない。しかし大規模なショッピングモールなどはむしろ郊外のほうが多いし、店舗の数や品揃えも充実している。もし自分の好みの店がなかったとしても、自粛生活で身につけたお取り寄せのネットワークを駆使すれば、すぐになんでも手に入るようになった。

とはいえ、リモートワークが一気に普及するかどうかはまだ不透明だ。職種や企業によっては鉄道を使った通勤が避けられないケースも多いだろう。その場合は逆に、朝夕の通勤ラッシュをなるべく回避するため、勤務先に近い都心マンションの“お買い得度”が上がることになる。

一つ考慮すべきなのは、コロナ禍によって訪日外国人によるインバウンド需要が消滅し、回復には時間がかかると予測されることだ。これまで都心マンションの価格が高騰してきたのは、インバウンドに支えられたホテルや商業施設の用地需要の高まりで、好立地な土地の地価が上昇した影響が大きい。

インバウンド需要が縮小したことで都心の地価高騰が抑制されれば、マンション相場が下落に転じることも考えられる。ただしマンション開発には数年のスパンが必要なことから、用地価格の下落がマンション価格に反映されるのにも相応の期間を要するだろう。

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在宅ワークがはかどるマンションとは?

住み心地も比較しておこう。いくら価格が安くても、自分のライフスタイルに適さない住宅ではお買い得とは言えない。ウィズコロナの生活様式にふさわしいのはマンションなのか、一戸建てなのか。

まずマンションは別名を「集合住宅」と称するように、基本的に「集まって住む」スタイルだ。エントランスやエレベーターなどは多数の居住者が共用することになる。それだけ新型コロナウイルスの感染リスクが高まると考えられるが、消毒を徹底するなど注意深くリスク管理すれば解決できるレベルといえるだろう。最新のマンションでは非接触キーの採用などで、ボタンに触れずにエントランスやエレベーターを通過できるケースもある。

在宅ワークのしやすさという点では、床面積が広めな一戸建てにやや分があるだろう。個室が4つある4LDKタイプなどは作業スペースも確保しやすい。LDKと異なる階で作業をすれば、テレビ会議中に子どもの声に悩まされる心配も少なそうだ。

だがマンションでも、共用スペースが充実した大規模物件なら、家族から隔離された空間で仕事をこなせる場合もある。最近のマンションは共用部にスタディルームやワークスペースを設けた物件も増えており、誰にも邪魔されずに仕事や会議に集中できるだろう。

ウィズコロナでは、建物内の換気が重要とされる。今の住宅はマンションも一戸建ても24時間換気が義務付けられており、この点では優劣はない。だが、エアコンを効かせながら換気も必要となると、できるだけ冷暖房効率のよい、つまり断熱性の高い住宅が望まれる。

一般的に柱や床などの躯体が木造で窓が多い一戸建てに比べて、躯体がコンクリートのマンションのほうが断熱性は高めといわれている。床面積が小さめなこともこの点では幸いし、電気代のお得度ではマンションが有利といえそうだ。もちろん一戸建てでも高い断熱性を実現することは可能だが、現状では建築費が高めになることは避けられないだろう。

マンション
マンションVS一戸建て比較表

マンションでは月々の固定費として管理費や修繕積立金のほかに、クルマを所有している場合は駐車場代もかかる。これに対し、一戸建てはたいていの場合、敷地内に駐車スペースが確保されており、費用面ではお得だ。近年ではクルマ離れが広がり、駅近のマンションならわざわざ駐車場代を払わなくとも鉄道でどこへでも出掛けられるライフスタイルが定着しつつあった。

だが公共交通機関の利用を最小限にするという新しい生活様式では、再びクルマのニーズが高まることも予測される。駅近のマンションの場合は、敷地外に駐車場を借りるとなると自ずと負担も増えるだろう。クルマでの移動を前提とするのであれば、駐車場代も含めて損得を比較する必要がありそうだ。

マンションと一戸建てのお買い得度をさまざまに比較してみると、ウィズコロナでは一戸建てに有利になる要素が多そうだが、こうした情報を参考に、ご自身のライフスタイルに合わせた家選びを心がけたい。これまではマンションの価格が高騰して一戸建てとの差が開きつつあったが、今後はそうした流れにも変化が出てくるかもしれない。

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