不動産売却で必要な諸費用とは? 計算方法や相場、税金の控除まで詳しく解説

不動産を売却するときには、さまざまな費用が発生します。不動産会社に支払う仲介手数料や税金などがその代表的な例ですが、不動産の状態などによって生じる費用があり、控除対象となる場合もあります。今回は、不動産の売却を検討中の人に向けて、売却費用について詳しく解説します。

不動産売却で必要な諸費用とは? 計算方法や相場、税金の控除まで詳しく解説




不動産売却の諸費用「仲介手数料」

まずは不動産会社に支払う仲介手数料です。

不動産会社は、不動産売買の仲介業務として不動産情報サイトに物件情報を載せたり、チラシを作成してポストに配布したり、購入希望者の物件見学に立ち合ったりするなどの販売活動を行います。仲介手数料は、不動産会社に仲介を依頼した物件が「売れた場合」にこれらの活動の報酬として支払います。つまり、仲介手数料は仲介業務の「成功報酬」で、仲介を依頼するだけでは発生しません。また、複数の会社に仲介を依頼したとしても、仲介手数料を支払うのは売買契約を成立させた不動産会社のみです。

仲介手数料は、売買契約が成立した時に半分、物件の引き渡し完了時に残りの半分を支払うのが一般的です。ただし、売買契約締結後に売主または買主の事情で契約を解除する場合(手付解除)や、売買代金の未払いなどによる契約違反となった場合(債務不履行による解除)は、結果として売買は成立しませんが、仲介手数料を支払う必要があります。

気をつけなければならないのは、通常の仲介業務で行わない遠隔地の購入希望者のところへ交渉に行く出張費や特別な広告宣伝をしてもらう費用などは、仲介手数料とは別に請求される場合があります。また、測量や建物の解体、荷物の保管やゴミの廃棄などの費用も仲介手数料には含まれず、別途費用が必要になります。

仲介手数料は、宅地建物取引業法(宅建業法)という法律によって「金額の上限」が定められています。計算式は以下の通りです。

仲介手数料の計算式

仲介手数料は売買価格の区分によって計算式が決まっています。なお、仲介手数料の上限は以下のとおりです。

図表1 仲介手数料の上限
売買価格 仲介手数料の上限
200万円以下の金額 売却価格 × 5.5%
200万円を超えて400万円以下の金額 売却価格 × 4.4%
400万円を超える金額 売却価格 × 3.3%
※2018年1月1日の宅建業法一部改正により、400万円以下の不動産売買の仲介手数料は上限が18万円になりました。この上限を適用する場合は、媒介契約時に売主に説明し、合意する必要があります。

なお、売却価格が400万円を超える場合は、区分に関係なく仲介手数料(上限額)が速算できる以下の式を使用します。

【売却価格400万円超の場合の速算式】

仲介手数料=売却価格×3.3%+6.6万円

代表的な売却価格の仲介手数料の早見表は以下のとおりです。

図表2 仲介手数料の早見表
売却価格 仲介手数料(税抜) 消費税 仲介手数料(税込)
1,000万円の場合 36万円 3万円6,000円 39万円6,000円
3,000万円の場合 96万円 9万円6,000円 105万円6,000円
5,000万円の場合 156万円 15万円6,000円 171万円6,000円
1億円の場合 306万円 30万円6,000円 336万円6,000円

不動産売却の諸費用「譲渡所得税」

次に、不動産の売却時にかかる税金についてです。

所有している土地や建物などの不動産を売却して得られた利益のことを「譲渡所得」といいます。その譲渡所得には所得税や住民税がかかります。これらを総称して譲渡所得税と呼ばれることもありますが、税金の名称は所得税と住民税です。

譲渡所得税は単純に不動産の売却金額にかかるものではありません。その不動産を買った時に価格や費用がかかっていますし、売る時にも費用がかかっています。それらの価格や費用を売却価格から差し引いたものが譲渡所得です。つまり、売却によって得た利益(譲渡所得)に対してかかるものなのです。譲渡所得が発生しなければ税金も発生しません。

具体的には、譲渡所得は「不動産の売却価格」から「不動産の購入時にかかった費用(取得費)」と「売却にかかった費用(譲渡費用)」を引いて算出します。計算式は以下となります。

譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)

取得費は、不動産の購入にかかった費用のことです。売却する土地・建物の購入代金や建築代金、購入手数料、測量費、整地費、建物解体費、設備費、改良費などです。また、不動産を購入時に納めた登記費用、不動産取得税、印紙税や、借り主に支払った立ち退き料、不動産を購入するために借りた資金の利子なども含まれます。ただし、既に事業所得などの必要経費に算入された事業用不動産の場合は含まれません。

譲渡費用は、不動産の売却のためにかかった費用のことです。前述した仲介手数料や印紙税、立退料、建物解体費などが譲渡費用に含まれます。譲渡費用は売却するために直接使った費用なので、修繕費や固定資産税などは含まれません。

譲渡所得にかかる税金

譲渡所得には譲渡所得税がかかります。

譲渡所得税は正式名称ではなく、譲渡所得にかかる所得税、住民税を合わせたものを指します。

所得税は国に納める国税、住民税は都道府県や市区町村などに納める地方税です。また、所得税には復興特別所得税が含まれます。復興特別所得税は2011年の東日本大震災の復興支援の財源として使われる税金で、2037年まで所得税に加算される2.1%の加算分を指します。

所有期間による税率の違い

譲渡所得税の税率は、不動産を所有していた期間が5年以下か、5年超かによって異なります。

所有期間が5年以下の不動産を売却した場合は「短期譲渡所得」、5年超であれば「長期譲渡所得」となり、税率は長期譲渡所得の方が低くなっています。短期の売買で税率が高く設定されているのは、バブル経済期のころのように投機目的で土地を短期売買することを抑制する目的があるためです。

所有期間は、売却した年の1月1日時点を基準として5年以下か5年超かを決めます。例えば、2016年3月に取得し、2021年4月に売却すると、実際の所有期間は5年を超えます。しかし、税務上の所有期間は売却した年(2021年)の1月1日にさかのぼって判断するため、所有期間は4年となり、短期譲渡所得になります。そうなると高い税率で課税されるので、不動産の売却を考えるときは売却時期には注意が必要です。

図表3 所有期間による税率の違い
所得種類 所有期間 所得税 住民税 復興特別
所得税
合 計
短期譲渡所得 5年以下の土地・建物 30% 9% 0.63% 39.63%
長期譲渡所得 5年超の土地・建物 15% 5% 0.315% 20.315%

不動産売却の諸費用「印紙税」

印紙税は広範な文書に負担を求める文書課税のことです。

不動産を売却するとき、売主と買主で交わす不動産売買契約書に印紙を貼り、消印をすることで「納税した」ことになります。印紙税の金額は不動産の売買金額によって変わります。

軽減税率の適用

印紙税は売却金額に応じて高くなります。また、印紙税は消費増税にともない2022年3月31日までは軽減税額が適用されます。

税額は以下の表の通りです。例えば、売買価格が3,000万円の不動産を売却する不動産売買契約書を作成した場合は、契約書に1万円の印紙を貼ります。

図表4 軽減後の税額
契約金額 軽減後の税額
1万円未満 非課税
1万円以上、50万円以下 200円
50万円を超え、100万円以下 500円
100万円を超え、500万円以下 1000円
500万円を超え、1000万円以下 5000円
1000万円を超え、5000万円以下 1万円
5000万円を超え、1億円以下 3万円
1億円を超え、5億円以下 6万円
5億円を超え、10億円以下 16万円
10億円を超え、50億円以下 32万円
50億円超 48万円
契約金額の記載のないもの 200円

印紙税を納めなかった場合

印紙税は税金ですので、印紙を貼って消印しなければ納税していないとみなされます。印紙税を納付しなかった場合は、印紙税の額と、その2倍の額の合計額(つまり、納めるはずだった税額の3倍)の税金を過怠税として徴収されます。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

不動産売却の諸費用「住宅ローン返済手数料」

住宅ローン返済中の不動産を売却する場合、住宅ローンを一括返済する必要があります。銀行などの金融機関で住宅ローンを一括返済する場合、手数料が必要な場合があります。各金融機関によって異なりますが、手数料は1万円~3万円程度が目安で、一般的に、一括返済の手数料は一部繰上返済の手数料より高く設定されています。

なぜ住宅ローンの一括返済が必要かというと、住宅ローン返済中の不動産には「抵当権」が登記されているからです。これは住宅ローンの借入先の金融機関が、融資と引き換えに融資した不動産を担保にした登記で、この抵当権を外さないと、住宅ローン返済中の不動産は売却することができません。司法書士に依頼すると手続きをしてくれます。

不動産売却の諸費用「登記費用」

住宅ローンを完済したら抵当権を抹消します。そのためには登記簿上の抵当権を抹消する手続きが必要で、登記費用が発生します。

抵当権をそのままにしておくと必要書類を紛失してしまうリスクもありますし、売却や融資、相続の際に手間取ることもありますので、早めに抹消しておきましょう。ちなみに、登記簿(登記簿謄本)とは、不動産の種類、構造、所有者などを記した帳簿のことで、不動産の所有者を明確にすることによって不動産売買を安全で円滑にするためのものです。

抵当権抹消の費用は、手続きを依頼する司法書士への手数料を含めて5,000円~2万円が目安です。個人で手続きすると1,000円~2,000円ほどで済ませることもできますが、複雑なので司法書士に依頼しましょう。

不動産売却の諸費用「その他の費用」

不動産の売却では、上記以外にも費用がかかる場合があります。

ハウスクリーニング費用


売却する物件をきれいにしておくことで、買い手が見つかりやすくなり、値下げ交渉を受けにくくなるという効果が期待できます。クリーニングする場所としては、浴室と洗面台、トイレ、キッチンなどの水回りとレンジフード、床、壁紙などが挙げられます。これらは内見時に購入検討者がよく見る場所で、不動産全体の印象に影響します。そのため、自分で掃除するよりもプロに徹底的に掃除してもらった方がよい場所といえます。クリーニング費用は家の広さや状態、掃除する場所の数などによりますが、3万円~10万円くらいが目安です。

図表5 ハウスクリーニング代の目安

マンションの場合
広さ 料金相場
1R / 1K 20,000円 ~ 40,000円
1LDK ~ 2LDK 35,000円 ~ 70,000円
3LDK ~ 4LDK 70,000円 ~ 120,000円
5LDK 以上 100,000円 ~
一戸建ての場合
広さ 料金相場
1LDK ~ 2LDK 50,000円 ~ 95,000円
3LDK ~ 4LDK 80,000円 ~ 135,000円
5LDK 以上 120,000円 ~

測量費用


測量はその土地の「境界」と「面積」を明らかにするために行います。土地の境界が明確になれば正確な面積が算出できるので、登記簿の面積との相違などによる売買契約・引き渡し後のトラブル防止にもなります。

また、境界を明確にすることで隣地とのトラブル予防になります。トラブルの可能性が低ければ不動産の価値は高くなる傾向にあり、スムーズな売却につながります。

測量の費用は、市や国の立ち合いが必要かどうかによって変わり、30~100万円程度と差があります。
 

解体費用


一戸建ての売却では、築年数が古い建物を解体して更地にして売るほうが高く売れることがあります。

建物の解体費用は建物の構造によって変わり、1坪あたり、木造住宅で3~4万円、鉄骨住宅で4~5万円、RC住宅で5~6万円くらいが目安です。1坪あたりの解体費用と建物の床面積を掛け算して、解体費用の総額の目安が把握できます。

図表6 解体費用の目安
建物の構造 坪単価 解体費用の目安
木造 3~5万円/坪 30坪:90~150万円 50坪:150~250万円
鉄骨造 4~6万円/坪 30坪:120~180万円 50坪:200~300万円
RC造
(鉄筋コンクリート造)
4~7万円/坪 30坪:120~210万円 50坪:200~350万円

家財等の処分費用


不動産を引き渡す時や解体する時は家の中を空にしておくのが基本です。そのため、家財などの処分費用も考慮しておく必要があります。

不用品は、自分で自治体の粗大ゴミ収集所に持ち込むなどして処分する方法がもっとも安くすみます。ただし、多くの自治体では粗大ゴミの処分は有料です。また、回収にきてもらう場合、処分可能な日が指定されていることもあります。そのため、効率よく処分する方法として、片付け専門の会社などに依頼することもできます。

不用品処分の依頼費用は、処分するものの量によりますが、一戸建ての場合で15万円~50万円程度が目安です。少しでも費用を抑えられるように、無料で処分できる不用品などを計画的に捨てていくことが大事です。

不動産売却にかかる税金の特別控除

マイホーム(居住用の不動産)の売却では、一定の条件を満たすことによって控除が受けられ、納税額が少なくなることがあります。ただし、自己判断で適用できると思っても適用外になるおそれもありますので、税務署もしくは不動産会社に相談するのがおすすめです。

マイホームを売却した場合

マイホームの売却で発生した譲渡所得は最高3,000万円まで非課税になる控除が受けられます。これを「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。
 
控除を受けるための条件を満たせば、前述した短期・長期の所有にかかわらず、最大3,000万円までの所得が非課税になり、譲渡所得に対して所得税や住民税がかかりません。

控除を受けられる条件 


控除を受けるための条件には、売主の居住用の不動産であること、譲渡先が配偶者、直系血族、同族会社ではないこと、前年や前々年にこの控除を使っていないことなどがあります。売却時に住んでいなくても、居住しなくなってから3年以内であればこの特例を使うことができます。

10年を超えて所有していた場合

3,000万円の特別控除を適用しても譲渡所得が残る場合、売却したマイホームが10年を超えて所有していたものであれば、軽減税率の特例を使うことによって譲渡所得にかかる税率が低くなります。ただし、「特定居住用財産の買い換え特例」は併用不可となります。

特例を受けるための条件は、売却した年の1月1日時点での所有期間が10年を超えていることのほかに、前年や前々年にこの特例を受けていないこと、親子や夫婦間の売買ではないことなどです。これら条件を満たしていれば、譲渡所得3,000万円の特別控除適用後、6,000万円以下の部分が譲渡所得の10.21%(2.1%は復興特別所得税)に軽減されます。

図表7 10年超所有軽減税率の特例
譲渡所得(3,000万円の特別控除適用後) 所得税 住民税 合 計
6,000万円以下の部分 10.21% 4% 14.21%
6,000万円超の部分 15.315% 5% 20.315%

不動産売却で赤字になった場合

マイホームの買い替えのためにそれまで住んでいた不動産を売却し、その不動産の売却で損失が発生した場合は、売却した翌年に確定申告をすることにより一定の要件を満たす場合、損失分を他の所得(給与所得や事業所得など)から引くことができます。これを損益通算といいます。

損益通算によって所得の総額が低くなると、その分だけ税金が少なくなります。また、翌年(確定申告する年)の所得から損失分を控除しきれなかった場合は、残った損失額をその次の年から3年間に渡って繰り越すことができます。これを、「譲渡損失の繰越控除」といいます(「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」)

控除を受けられる条件

この制度を使うための条件は、居住用の不動産であること、現時点で住んでいない場合は、居住しなくなってから3年以内であること、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること、売却した年の12月31日時点で、新たに購入したマイホームの住宅ローンが10年以上残っていること、災害によって滅失した家屋で、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること、床面積が50平方メートル以上であること、取得した年の翌年12月31日までの間に居住していた・居住する見込みであること、売主と買主が親子や夫婦など特別の関係にないことです。

まとめ

不動産を売却するときは、不動産会社に支払う仲介手数料について把握しておくだけでなく、住宅ローン返済手数料、登記費用などの諸経費、譲渡所得税や印紙税、不動産売却にかかる税金の特別控除などの活用できる控除、その計算方法や相場、売却で赤字になった場合などについても、しっかり押さえておくことが大事です。

見落としやミス、トラブルを防ぐ方法としては、専門知識が豊富な会社に相談するのも1つの有効な手段です。不動産売却を考え始めたら、いろいろ相談に乗ってくれる会社を探して、一緒に売却を進めていきましょう。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

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