都区部オーナーチェンジ区分マンション価格に変調?

東京23区内のオーナーチェンジ区分所有マンション(賃借人付き投資用区分所有権マンション)は相変わらず人気があるようです。リタイアを機に安定収益を得たいという方や、若い方でも将来の年金代わりとして、あるいは、若いうちに経済的に自立し、仕事を辞めるという生活スタイル、すなわちFIRE(Financially Independence, Retire Early)を目指すために投資したいという方も多いようです。そうした中、オーナーチェンジ区分所有マンションの価格は継続して上昇してきましたが、最近になって変調が見られるとの声が聞かれます。

都区部オーナーチェンジ区分マンション価格に変調?

価格上昇ペースが鈍化

そこで、東京23区内で取引された2021年1月から2022年6月までの中古マンション成約事例(公益財団法人東日本不動産流通機構に登録された取引事例のうち有効データ合計21554件。うちオーナーチェンジは2295件。)を使って、オーナーチェンジマンションの価格分析をしてみることにしました。
分析方法は、マンションの専有面積、築年数、最寄駅からの距離(徒歩分数)、所在階、所在区、オーナーチェンジか否かといった各物件の属性の違いを取り除き、2021年1月以降の価格指数を作成します。次に、マンション価格には季節要因(季節によって価格が高かったり低かったりすること)があるため、対象月を含む6か月前までの指数の平均値(6か月移動平均)を作成し、次のようにグラフ化しました(移動平均を取っているため2021年6月以降の価格指数となります)。

オーナーチェンジVS居住用中古マンション

(公益財団法人東日本不動産流通機構に登録された取引事例より筆者作成)

グラフの通り、オーナーチェンジと空室(居住用中古マンション)は、昨年末までは同じような価格上昇を見せていましたが、今年になってからはそのペースに差が生じ、オーナーチェンジの勢いが落ちつつあることがはっきりしてきました。一方、区分所有マンションはその専有面積が狭いと投資用、広いと居住用が多くなるといった傾向がありますので、専有面積40m²未満、40m²以上とに分けて価格トレンドを見てみることにします。

上昇傾向が続く40m²未満

次のグラフは専有面積40m²未満のグラフです。先ほどのグラフとは異なり、居住用中古マンション価格が2022年1月以降横ばいとなっています。一方で、オーナーチェンジは上昇傾向を維持しています。

オーナーチェンジVS居住用中古マンション

(公益財団法人東日本不動産流通機構に登録された取引事例より筆者作成)

40m²未満は、オーナーチェンジ区分所有マンションでは主要なマーケットで、初めて投資をする方にとっては総額が大きくないことから人気がありますし、セールスをする不動産会社もこのマーケットに軸足をおくケースが多いといったことから、需要が下がりにくいという傾向があるのだと思われます。一方、居住用は、専有面積によって住宅ローンが利用できないケースが多いことなどから、これまでのような価格上昇を市場が受け入れにくくなっているのではないでしょうか。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

40m²以上は価格下落の兆候も

次の専有面積40m²以上のグラフでは、居住用は変わらず上昇トレンドのままとなっていますが、注目すべきはオーナーチェンジの価格が今年に入ってから横ばい、最近では低下傾向がみられるようになっていることです。筆者が現場の声を聞く限りでは、昨年末までに価格が上昇しすぎたことに対する価格調整という意見と、今後の金利上昇や景況感悪化リスクを踏まえた価格調整という意見が出ています。どちらが正しいかはわかりませんが、価格調整の傾向がみられることに変わりはありません。
40m²未満のオーナーチェンジにおいて価格は上昇傾向となっていましたが、40m²以上の場合はなぜこのように価格調整の傾向がみられるのでしょうか。これは少なからず不動産投資の経験がある投資家が比較的多いことから市場をシビアに見ている可能性がある、投資家同士のコミュニティーが多く存していることから、敏感に価格が反応しやすいという可能性があるのではないかと思います。実際、筆者のクライアントにおいても、DINKS向けの専有面積40m²以上の広さがあるオーナーチェンジ物件を検討される方は、不動産投資経験をお持ちの方が多く、単身者向けの面積となる物件を検討している方は、初めて投資される方のほうが多い傾向があります。

オーナーチェンジVS居住用中古マンション

(公益財団法人東日本不動産流通機構に登録された取引事例より筆者作成)

投資用区分マンション価格が低下する兆候?

さて、これらの分析から何が言えるでしょうか。筆者は一つの仮説として次のように考えています。
オーナーチェンジのマーケットでは、専有面積40m²以上のマーケットのほうが投資家の経験値が比較的高いことや投資家間コミュニティーが充実していることから、市場環境の変化に対して素早く反応します。専有面積40m²未満のマーケットは初めて投資をする投資家や経験の少ない投資家が比較的多く含まれることから、40m²以上のマーケットに比べて市場環境の変化にさほど敏感ではなく遅れて反応する。遅れて反応するのは、経験ある投資家の動きや考え方などが、ウェブサイトやSNSなどを通じて徐々にマーケットに広がっていくと考えられるからです。
この仮説が正しいとすれば、40m²以上のマーケットで価格のダウントレンドがより顕著になった場合、おそらく40m²未満のマーケットにも波及すると考えられます。そうだとすると、東京23区内のオーナーチェンジについては、40m²以上のマーケットを注視しておく必要があるのではないかと筆者は考えています。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

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