2000年6月以降か否かで異なる中古一戸建ての耐震性

東日本大震災が発生してから10年が経過しました。気象庁によると、最近1年間で東北地方太平洋沖地震の余震域において発生したマグニチュード4以上の地震は、本震発生後の1年間と比べて25分の1以下に減少しているものの、東北地方太平洋沖地震発生以前である 2001 年から 2010 年の年平均回数(138 回)と比べると 1.5 倍程度であり、東北地方太平洋沖地震発生以前に比べて活発な地震活動が継続しているとしています。

中古一戸建ての耐震性

こうした中、リモートワークの進展に伴い郊外の中古一戸建ての購入を検討しようという方にとっては、耐震性は無視できない重要な要素になっているのではないでしょうか。今回は、中古一戸建ての耐震性に関するチェックポイントについてお話しします。

新耐震基準は人命を守ることが目的

「新耐震基準」という言葉をお聞きになったことはありますでしょうか。新耐震基準とは1981年6月1日以降の基準で、この日以降に建築確認申請を行った建物は新耐震基準の建物となります。一方、1981年5月以前の基準は旧耐震基準と言われています。新耐震基準は1978年の宮城県沖地震の被害を踏まえて基準が制定されており、中規模の地震(震度5強程度)に対しては、ほとんど損傷を生じず、極めて稀にしか発生しない大規模の地震(震度6強から震度7程度)に対しては、人命に危害を及ぼすような倒壊等の被害を生じないことを目標としたものとされています。つまり、必ずしも「新耐震基準ならば安心」というわけではなく、人命は何とか守ることができるという基準であるという理解をしておく必要があります。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

木造住宅は2000年6月に基準が変わった

日本木造住宅耐震補強事業者共同組合『建築年度で耐震性をチェック(大規模地震と建築基準法の変遷)』

このように中古住宅には「新耐震基準」と「旧耐震基準」が存するわけですが、木造住宅については1995年の阪神淡路大震災の経験から2000年6月に耐震性に関する基準が改正されているのです。つまり木造住宅は新耐震基準と言っても、1981年6月から2000年5月までの基準と、2000年6月以降のより耐震性の高い基準が存在するわけです。
一方、鉄筋コンクリート造のマンションなどの耐震基準は1981年の改正以降大きく変わっていないこともあり、木造住宅であっても「新耐震基準ならば最新の基準」というイメージを持ってしまう方が見受けられるのかもしれません。

実は木造住宅に関しては、2000年に建築基準法が一部改正され、耐震性を担保するためにいくつかのルールが追加・強化されました。例えば、住宅は大きな窓が沢山ある場合、柱だけでなく壁の強さで揺れに耐えうるようにしなければなりません。このとき壁の量(筋交いなどがある耐震壁)の量を強化しています。また、壁の量が一部に偏ってしまっては壁が少ない部分が損傷するリスクが高まりますので、壁のバランスも規定されています。また、筋交いなどは釘で打つだけといった施工が許されていましたが、筋交いのサイズなどに応じた金具で緊結(しっかりと結びつけること)しなければならないことになりました。そして、地耐力(地盤が建物の荷重に耐える力)に応じた基礎とすることが規定され、事実上、地盤調査を行わないと建築できないルールになっています。

2000年5月以前の木造住宅を自分でチェックできる

そうは言っても、2000年5月以前の基準で建築された中古住宅を購入する場合には、一般財団法人日本建築防災協会が公表している「-昭和56年6月から平成12年5月までに建築された- 木造住宅の耐震性能チェック(所有者等による検証)」を利用して、自分で耐震性をチェックしてみるという方法があります。

この耐震性能チェックは、

(1)平面および立面形状が整形かどうか
(2)柱や梁・土台に接合金物が使われているかどうか
(3)外壁面の4面で窓やドアなどの開口部がない壁の長さが3割以上かどうか
(4)全般的な劣化状況はどうか


といったことをチェックすることで、「一応倒壊しない」または「専門家による検証が必要」といった判断ができるようになっていますので、ご不安な方は自分で試してみたり、わからないことがあれば不動産会社に相談しながらチェックしてみるといいでしょう。

地理院地図の自然地形も利用してみる

このように建物の耐震性をチェックすることも大事ですが、2000年5月以前の木造住宅は地盤調査をする必要がなかったため、地盤に不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。その場合には、国土地理院の「自然地形」を検索してみるとよいでしょう。検索したいエリアを入力して地図上で知りたい場所をクリックすれば、その土地の成り立ちや、一般的な自然災害リスクに関する説明がポップアップするようになっています。地盤調査のような精緻なものではありませんが、どのような地盤なのか、例えば地震の揺れを増幅するような土地なのかどうかといったことが分かります。

国土地理院『ベクトルタイル「地形分類」』

活発な地震活動はまだ継続していると言われています。中古一戸建てを購入するにあたり耐震性については、2000年6月以降の建築基準法の基準に基づく建物かどうかをまずチェックしてみましょう。その基準で建築された木造住宅でない場合は、一般財団法人日本建築防災協会が公表している「木造住宅の耐震性能チェック」を使って自分でチェックしたり、地理院地図の「自然地形」で土地の成り立ちを確認してみましょう。その上で必要に応じて建築士などに相談するとよいと思います。

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