アフターコロナ「子育て、二世帯、タワマン」中古住宅選びの新法則
新型コロナ禍は働き方、人との距離、その他、社会を大きく変えた。当然、その影響は住まい選びにも及んでいる。これまでは予算と通勤の利便性が選択時の大きな要素だったが、不測の事態に備えるためには住居費負担はこれまでより抑えたほうが安心と感じた人もいるのではないだろうか。テレワークが可能なら、これまでより30分、1時間あるいはさらに遠くても、広い住まい、環境の良い場所を選ぶ手があると考えた人もいるだろう。
また、新型コロナ禍で休校中の学校で同時双方向のオンライン授業が実施されたり、休業要請に伴い休業補償が実行されるなど、ICT教育や経済対策で自治体格差が大きいことが明らかになってきた。今後はこれまで以上に「何を買うか」に加え、「どこで買うか」がポイントになってくる。そうした変化を踏まえ、これからの中古住宅選びで考慮したい点を考えていこう。
災害時「在宅避難」を基本に安全な立地を選ぶ
緊急事態宣言は解除されたものの、第二波、第三波の可能性が指摘されており、今後しばらくは新型コロナウイルス感染症との共存を考えざるを得ない。それに伴い、災害時に「密閉・密集・密接」にならざるを得ない避難所を避け、可能なら在宅避難という選択が現実的になってくる。避難所には収容人数の限界があり、倒壊の心配が少ないマンション住民は、できるだけ自宅にと留まって生活する「在宅避難」を要請する自治体も多い。一戸建てでも在宅と考えるとこれまで以上に安全を気にした住まい選びが必要になる。
ハザードマップなどを参考に地震に弱い地域や、水害などに弱い低地、水の近くを避ける、造成地では造成方法、擁壁の状態を確認するなど、確認方法は場所によって異なるが、入念にチェックしたい。
また、耐震・耐火性能はもちろん、在宅時間が長くなる可能性を考えると住宅の温熱環境も気にしたい。快適さが異なるのはもちろん、温熱環境は健康寿命にも影響を及ぼす。光熱費が節約できるという観点もある。中古一戸建ての場合、温熱性能に劣る住宅も少なくないので注意したい。
これまでは多かれ少なかれ通勤から立地を考えていた人が多かっただろうが、今後は勤務先、働き方によって自由度が異なってくる。週に一度、二度の通勤で済むなら通勤時間が多少長くなっても郊外の広い家にと考える人も出てくるはずで、実際、都心の駅近マンションから郊外の一戸建てへという動きがあり、緊急事態宣言以降に住み替えた事例も出てきているという。
また、リゾート物件ポータルサイトや空き家掲示板のアクセス数や契約件数が伸びており、都心を離れてリゾート地に住む、地方の空き家利用で安く広い住まいを実現する、二拠点・多拠点生活を模索するなどの動きも読み取れる。
一方で緊急事態宣言下ではやむなくテレワーク体制になっていたものの、一気に元通りという会社やそもそも現場にいないと仕事にならない業種などもあり、これからの住まい選びは働き方から考えることになる。自分たちが現状で何を選択できるか、あるいは住まいに合わせて働き方を変えるという選択はないかなど、これまでとは違う考え方があっても良いのかもしれない。
その意味では間取りやリフォームについても柔軟に考えたほうが良い。家族がそれぞれオンラインで仕事、授業を受けている状況では各自に個室が欲しいと思うのは当然だが、今の状況がいつまで続くかは誰にも予測はできない。それに子どもがいつまで親の家にいるのかなどと考えると、住まい方は時間とともに変わる。
だが、これまではある一時期に焦点を合わせ、すべてをその時点の仕様にしてきた。もう少し家族、時代、社会の変化に合わせて変更できるような住まいであったほうが使いやすいのではないだろうか。最近では間仕切り的に使える家具も多く、使い方によってはその都度間取りを変えることもできる。
同様にリフォームをするとなると一部ではなく、「一度にやったほうが効率的、経済的」とのアドバイスで一気に全部に手を入れるやり方が多かったが、場合によっては少しずつ手を入れて行くほうが賢明なこともある。変化の激しい時代には手に入れた時点で完成品ではなく、住みながら状況に合わせて変化させていくほうが現実的だろう。
地元で過ごす時間を考え、魅力ある地域を選ぶ
在宅する時間が増えたことで、今住んでいる地元に目が向くようになったという声を聞く。これまではさほど意識することがなかった公園や商店街、飲食店などが気になるようになった人も多いだろう。今後も自宅周辺で過ごす時間が増えることを考えると、飽きないようにバリエーション豊富な飲食店が欲しいと思う人もいるだろうし、子どもと過ごせる公園、遊び場が欲しいと考えるかもしれない。以前より自然を求めるようになったという声もよく聞く。人によって欲しいものは異なるだろうが、自分の生活に欲しいものが揃う場所か、きちんと見極める必要があるだろう。
街という観点では今後、重要になってくるのが行政、中でも首長の姿勢だ。しばらくは分散登校などが続くことを考えるとICT教育に取り組んでいない自治体には学力低下の懸念があるし、域内の中小事業者を大事にしない自治体では買い物などの利便性が落ちる、税収の低下で各種サービスが持続できなくなる可能性も出てくる。首長の姿勢については政治としてではなく、街の価値を落とさないための施策が打ち出せているかどうか、自治体経営という観点で考えると理解しやすい。
ひとつ、気になるのは子どもを巡る教育の変化が現時点であまり見通せていないこと。仕事については、時間はかかるとしてもテレワークが進展するであろうと思われるが、教育については小中高、そして大学とどう変化していくか。オンライン授業が増えていくとしても通学が必要となれば立地ではその点を考慮する必要がある。それぞれの家庭の教育方針などと含めて検討、情報収集しておきたい。
自分らしい住まいを考え、選ぶ好機となる
以下、具体的な住宅、立地などについていくつか個別に見ていきたい。
●近郊に親の家がある⇒二世帯化でコスト削減も
まずは首都圏近郊に親の家があったが、これまでは通勤時間がネックで自身の住まいとして選択できなかったというケース。今後、通勤が障壁にならなくなり、かつ新規に取得するよりもコストが抑えられ、それぞれの世帯にある程度の広さが確保できるようなら二世帯住宅化することを提案したい。親が高齢で基礎疾患があるなど感染症に対して不安がある場合には水回りなども含めて完全分離型にできるかどうかがポイントになろう。
親の家でなくても都心から30~50キロ圏内には開発から30年以上が経過し、駅から距離がある、坂があるなどの理由から空き家が増えている。だが、ゆったりと広さを持って作られている住宅地があり、そうした街を再評価する動きも出てきそうである。古い住宅の中には今と違い、リビングを広く取るより、個室を多く配した間取りもあり、家族それぞれがオンラインで勉強や仕事をするのに便利なこともありそうだ。
●タワーマンション⇒競争力を保ち続けられる立地か
集合住宅を建設する際にはその立地で集客できる範囲、想定できる集客数を検討する。港区の一等地など超都心であれば首都圏全域はおろか、日本全国、世界から集客できる可能性があり、私鉄沿線でも急行停車駅などであれば沿線全域からも集客が期待できるだろうが、各駅停車しか止まらない駅の場合は最寄り駅を含めて周辺2~3駅が良いところといった具合だ。ただ、各駅停車しか止まらない駅でも過去10年間にそのまちでの新築住宅供給が少なかったらある程度の数は売れる。
集合住宅の将来性については同様に考えれば良い。特にタワーマンションは修繕積立金などの維持費が高くつく傾向があり、築年が経つにつれて不利になる可能性があるのだが、それでも希少性が保たれていれば価値は落ちない。広い範囲から集客できる街でタワーマンションなら良いが、地方都市の、その域内からしか集客できない街でタワーマンションはどうだろうと考えれば良いのである。今後、企業の業績が悪化し、倒産や失業者が増加すると、固定的な支払いを増やしたくないサラリーマンが増えることが考えられ、タワーマンションではこれまで以上に慎重に立地の希少性を考える必要がある。場所によっては飽和状態、多すぎるということもあるだろう。
ちなみにタワーマンションでは建物内で密が生じるのではと心配する人がいる。通勤時間帯などにエレベーターが混雑する可能性はあるが、テレワーク、フレックスタイムなどで通勤時間帯はばらばらになっていくと考えると、それほど気にしなくても良いのではなかろうか。
●どこかに住み替えたい⇒定額サービス利用などで体験
思い切って今いる土地を離れてなどと妄想しているのであれば、お試しであちこちに住んでみる、体験してみるという手はどうだろう。ここ2~3年、定額で全国各地のホステルや住宅を泊まり歩けるサービスが出てきており、様々な街に生活する経験ができる。
新型コロナはこれまでの生活を変えるチャンスでもあり、海外などに行きにくい時期の長期休暇を利用して自分の働き方、住まい方を再考しつつお試しされて、これからどうするか考えてみても良いのではないか。通勤が毎日必須でなくなるだけで住まいの自由度は変わる。自分らしい住まいとは何かを考え、選ぶには好機だろう。
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