不動産を借りたり、購入を検討したりする際に、必ず情報として提示されるのが「築年数」です。これは、物件を借りる・購入する側にとって、築年数が大きな検討材料になるためです。仮に、ほぼ同じ条件の物件が2つあり、それぞれの築年数が「3年」と「新築」で見た目の差がほとんどなかったとしても、新築物件を選びたいと思うのは当然の消費者心理でしょう。
そのため、逆に自分が物件を売却する側になったときも、築年数を考慮した上で価格設定を行う必要があるのです。
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※宅建業法に基づく査定です。不動産鑑定評価ではありません。
査定金額における「築年数」の重要性
一般的に、不動産の売却額は不動産会社からの査定によって提示されることが多いものです。ただし、査定額の算出においても築年数は重要な要素となります。
国によって定められている建物の耐用年数によると、木造戸建て住宅は22年、鉄筋コンクリートなどのマンションは47年となっています。そのため、売却における建物の価値査定という観点では、築25年以上の戸建ては価値がゼロの「古家(ふるや)」として扱われることがほとんどです。
もちろん、耐用年数を過ぎたら即座に住めなくなるわけではないので実際には価値があるわけですが、査定金額には反映されにくいものです。
不動産の査定は、建物の状態、駅からの距離、人気のあるエリアか否か、物件の間取りや広さなど、さまざまな要素を総合的に判断した上で価格が算出されます。なかでも、築年数は建物の状態や地域の人気度と異なり、誰でも確認できる客観的なデータですから、査定において重要な情報となるのです。
では、築年数を重ねることで査定金額はどのように変化するのでしょうか?もう少し詳しく解説していきます。
築年数と査定額(資産価値)の関連性
築年数と資産価値の大まかな傾向について考えてみましょう。不動産の資産価値をできるだけ最大化するためには、いつ売却するのがよいのでしょうか。
国土交通省がまとめた「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」によると、木造戸建て住宅の資産価値は、築15年ほどまでは下落率が比較的大きく、築10年で半分ほどに下がってしまいます。築15年を過ぎた後は徐々にゆるやかになり、築20年以降はほぼ横ばいとなります。
一方、マンションは購入後1年で価値が急落するものの、資産価値が減少するペースは木造戸建て住宅に比べればゆるやかで、築10年で70~80%程度の価値を維持しています。しかし、築25年が経過する頃には、価値はおよそ半分になる傾向にあります。
このように、マンションの耐用年数は47年と木造戸建ての22年に比べて倍以上の期間が設定されているため、資産価値の算出において減価償却される(=価値が減少する)ペースが、中古マンションは中古戸建て住宅よりゆるやかな傾向にあります。
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築年数による中古マンション売却額の比較
大まかな傾向をつかんだところで、実際の中古マンション売却価格を参考に築年数と売却金額の変化を追ってみましょう。築年数が5年以内の「築浅」物件が売却された成約金額を100とした場合に、築年数が経過するとどの程度資産価値が下落してしまうのか、東日本不動産流通機構が算出した「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2016年)」のデータを参考に計算してみます。
築10年以内のマンション
築10年以内のマンションの評価額は、築浅物件の8割程度が目安です。築年数が10年以内のマンションは、設備も整っていて内装へのダメージも少ないことから、下落幅が少ない価格での取引きが期待できます。特に人気が高い都心部や、マンション購入後に土地開発が行われたエリアなどは、場合によっては購入価格を上回る価格での売却が望めます。なお、築10年以内の物件は室内の状態の良さも求められます。査定価格の下落幅を抑えるためにも、室内をきれいな状態に保っておくよう心掛けましょう。
築11~20年のマンション
築11~20年のマンションは、築浅物件の6~7割程度での売却が期待できます。価格が手頃になることから、「値ごろ感のあるマンションを手に入れたい」「中古でも駅から近いほうが良い」と考える方にとっては、魅力的な築年数だといえるでしょう。また、マンションの場合は築25年まで住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を利用できるのも購入メリットとしてあげることができます。
築21~30年のマンション
築21~30年のマンションの売却価格は、築浅物件のおよそ4割が目安です。築年数の経過が進んでいることから、エリアや間取りだけでなく、リフォームの有無によって価格が左右される築年数だといえるでしょう。
築30年超のマンション
築30年を超えた物件になると、マンション価格は大きく下落し、築浅物件の4割以下となる可能性が高まります。リフォームの有無や、エリア、建築基準法が改正された昭和56年(1981年)以前か以後かといった点でも価格差が出てきます。
築年数による、中古戸建て住宅の売却額の比較
中古マンションと異なり、中古戸建て住宅の資産価値は減少するペースが速い傾向にあります。国土交通省がまとめた「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」を参考に、築年数と売却金額の変化をまとめると以下のとおりです。
築10年以内の戸建て
中古の戸建て住宅は、一般的に築10年で新築価格と比べて建物の価値は半分ほどになる傾向があります。ただし、築10年以内で大手ハウスメーカー施工の物件は、下落幅が少なくなる可能性があります。
なお、中古住宅で住宅ローン減税が受けられるのは原則築20年以内と決められています。控除を利用したい方にとっては、築10年以内の物件は魅力的だといえるでしょう。
築11年~20年の戸建て
木造戸建て住宅は、築15年を目安として下落幅がゆるやかになる傾向にあります。築15年で新築価格の約2割まで下がるのが一般的とされています。
なお、木造住宅の耐震基準は2000年に改正が行われています。そのため、2000年6月1日以降に建築確認が行われた物件の場合、それ以前の物件に比べて耐震性能への信頼性が高くなっています。
築20年超の戸建て
築20年を超えると、戸建ての建物部分について資産価値はほとんどなくなると考えてよいでしょう。築30年などの戸建てについては、「古家付きの土地」として、土地のみの価格で取引されるのが通例です。場合によっては、建物を解体して更地の状態にしたほうが売却しやすいこともありますので、建物の価値と税制面の影響などを総合的に判断して売却方針を決めることが必要となります。ただし、雨漏りを防止する部分や構造など、建物の基本性能に問題がなく、内外装に一定のリフォーム・リノベーションが施されている物件はその限りではありません。
築年数と売却相場の傾向における例外的なケース
基本的に、マンションも戸建ても古くなるほど資産価値は下落し、新築価格より売却額が低くなります。
しかし、中古マンションの場合は例外的に東京都の一部人気エリアにおいて、売却額が購入額を上回る可能性もゼロではありません。また、デザイナーズマンションなどの中には、築年数が増えても価値が下がりにくい物件もあります。しかし、こうした価格の上昇が発生する例外的なケースはごく稀で、多くの場合は築年数が増えるに従って価値は下がっていきます。
中古の戸建て住宅は、築年数が増えるほど資産価値は下落していきます。ただし、戸建て住宅の場合は建物の価格が下落しても、土地の資産価値が建物と同様に経年で下がるということはありません。過去10年の公示地価を見ても、リーマンショックなど景気変動の影響を除けば土地の価格は概ね横ばい傾向と言えます。さらに、人気エリアに位置する物件の場合、建物自体は古く資産価値がゼロだとしても、土地の査定額が値上がりすることで下落幅の少ない金額で売却できるケースもあります。
まとめ
マンションにおいても戸建てにおいても、築年数は売却額を左右するものです。しかし、築年数が資産価値に及ぼす影響の大きさは、エリアや物件の種類、室内の状態などによって変化します。建物が古い場合と新しい場合では、新しい方が高額査定となる可能性が高いものの、古いからといってまったく価値がないとも限りません。
高い価格での売却を望むのであれば、できるだけ早期に売却するほうがいいですが、ある程度人気のあるエリアの物件であるなど、築年数以外の条件によっては希望に沿った売却が可能なケースもあるといえるでしょう。
<出典>
中古住宅流通、リフォーム市場の現状|国土交通省
築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2016年)|東日本不動産流通機構
執筆:平野 絵美
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- 監修:
- 長嶋 修(ながしま おさむ)
- 経歴:
- 1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「株式会社さくら事務所」を設立、現会長。「中立な不動産コンサルタント」としてマイホーム購入・不動産投資など不動産購入ノウハウや、業界・政策への提言を行う。著書・メディア出演多数。近著に「不動産格差」(日本経済新聞出版社)。
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