空き家新税から空き家への対応を考える

今年の3月、京都市が検討を重ねてきた「京都市非居住住宅利用促進税」(京都市空き家新税)が、総務大臣の同意を得たことで正式に導入されました。この税制によって京都市において一定の条件に当てはまる空き家所有者に課税されることになりますが、この制度が今後全国的に拡がるきっかけになるのではないかとささやかれています。今回は京都市空き家新税を概観しつつ、空き家への対応について考えていきたいと思います。

空き家新税から空き家への対応を考える


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京都市空き家新税

京都市空き家新税は、京都市の市街化区域内に所在する非居住住宅(住宅のうち、その所在地に住所を有する者がないもの。なお、住民票の有無にかかわらず、居住実態の有無によって生活の本拠を判断する。)に対し、その所有者に家屋価値割額及び立地床面積割額の合算額によって課すことになっています。事業用で使用しているもの(1年以内に事業で使用する予定のものを含む)や、賃貸又は売却を予定しているもの(1年経過しても契約に至らなかったものを除く)は課税免除となります。

課税額は、家屋価値割と立地床面積割の合計額とされています。家屋価値割は固定資産税評価額の0.7%です。立地床面積割は、非居住住宅の敷地となる土地1平方メートル当たり固定資産評価額×当該非居住住宅の延べ床面積で計算され、その額が700万円未満の場合は0.15%、700万円以上900万円未満は0.3%、900万円以上は0.6%となっています。京都市が公表している例では、土地建物の固定資産税・都市計画税額の合計が約10万円であるような非居住住宅について、約4万7千円程度の追加負担が生じるとしています。なお、施行は令和8年1月1日以後の日とされています。

京都市空き家新税の課税額

このように空き家の所有者に課税することで、空き家の有効活用(第三者への賃貸や売却など)を促し、住宅の供給促進、空き家が使用されることによる安全な生活環境の構築、地域コミュニティーの活性化が実現することを目的としています。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

特定空家との相違点

これまでの空き家関連法令でもっともインパクトが大きいと筆者が考えているものは、平成27年に施行された空家等対策の推進に関する特別措置法です。この法律で「特定空家」に指定され、所有者等による空き家等の適切な管理がなされずかつ勧告に従わない場合、固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外されます。例えば、土地面積が200m²以下であれば固定資産税額が6倍になるというルールで、これも空き家所有者に有効活用を促す政策となっています。

しかし、固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外される状態となるには、(1)倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態、(2)著しく衛生上有害となるおそれのある状態、(3)適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態、(4)その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態の空き家と判断されるとともに、適切な管理を行うよう役所が助言・指導を行っても所有者はこれに従わないことが何度か続き、やむなく役所が当該所有者に勧告するというところまで進む必要があります。つまり、この制度は、空き家だからといって簡単に課税強化をするというものではないわけです。一方、京都市空き家新税は、こうしたステップを踏む必要がないという点では即効性のある仕組みになっていると言えます。

規制強化の動き

政府は今通常国会で、空き家の発生を抑えて活用を促す空家等対策の推進に関する特別措置法の改正案(本年3月3日に閣議決定)の成立をめざしています。上述したように、固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外されるためには、特定空家に指定され、かつ指導してもそれに従わず、勧告に至る必要がありました。改正案では、放置すれば特定空家になるおそれのある空き家(管理不全空家)に対し、管理指針に即した措置を、市区町村長から指導・勧告するという内容になっており、勧告を受けた管理不全空家は、固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外されることになります。管理不全空家とは、窓ガラスが割れたままになっているような状態をいうので、特定空家に指定されるよりもずっと手前の状態にある空き家を想定していると思われ、従来よりずっと手前の段階で課税強化できる仕組みとなるようです。

空き家に対する課税強化の流れは続く

人口減少と新築住宅供給のトレンドが変わらなければ、空き家問題はどんどん大きくなるはずです。したがって今回お話したように、空き家に対して課税することで売却や賃貸といった有効活用を促そうとする政策は徐々に増えていくと考えられます。空き家所有者(その予備軍となる方も含む)にとって必要なことは、自分で利用できるなら利用するか、できないなら利用してくれる人に貸すなり売るなりするための準備を常に行うことです。すぐにできる準備の一つとして、市場の状況(需要の有無や時価など)を不動産会社に定期的に確認するなどが考えられます。

なお、空き家の売却を促す税制優遇策に、一人暮らしの親の自宅を相続し空き家となっている場合に、売却による譲渡益から3,000万円を特別控除できるというルールがあります。空き家の売却を検討するなら、不動産会社や税理士などの専門家に相談しながら上手に活用するとよいでしょう。

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