どうする? 相続で引き継いだ空き家

相続で空き家を引き継ぐというのはよくあることです。空き家を引き継いだばかりの時にはどうしたものかと悩むということはほとんどないようですが、相続してから何年もの間、空き家のまま保有し続けてきた結果、思わぬ問題に気づくというケースが散見されます。空き家を保有し続けることは、実は、様々な問題をはらんでいるのです。

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空き家を保有し続けることはお金を捨てているのと同じこと

不動産を保有する以上、土地と建物に固定資産税や都市計画税がかかります。都内の住宅ならば年間で十数万円以上はかかるというケースも多いはずです。マンションならば管理費や修繕積立金もかかります。10年以上空き家のまま保有するということは、実に100万円以上のお金をドブに捨てているのと同じことになります。

また、そのくらいの金額ならたいした影響はない、あるいは郊外なのでもっと金額は少ないので問題ないと考え、空き家をそのまま放置し続けると、雑草などが生い茂り、近隣からクレームを受けることもあります。不法投棄などの問題も発生する場合があります。

固定資産税が大幅アップ

それでもそのまま放置すると、固定資産税と都市計画税が一気に5倍程度までアップしてしまう場合があります。2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法 」により「特定空家」に認定されると、固定委資産税と都市計画税の住宅用地における特例が外されてしまうのです。

「特定空家」とは、
(イ) そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれがある、
(ロ) そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれがある、
(ハ) 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている、
(ニ) その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である、
といった状態の空き家を指します。

つまり、空き家を保有する以上、責任を持って管理をせよということなのです。特定空家に認定されないようにするためにはお金が当然かかります。
空き家は思った以上にお金が出ていくものなのです。

空家等対策の推進に関する特別措置法

共有者が増えて意思決定ができない

いつでも売れるからしばらくは空き家のまま保有し続けても問題ないと考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、空き家を相続する場合、大抵は兄弟姉妹で相続し、所有関係は共有になります。兄弟姉妹でさえ、相続した空き家を売りたい、貸したい、しばらく保有したいと意見が相違し、話が前に進まないということが起こりえますが、さらに新たな相続が発生すると世代の異なる共有者がさらに増え、ますますスムーズな意思決定ができないという問題も起こってきます。

売るか貸すかをまず検討

このように空き家を放置し続けると思った以上のお金がかかったり、いざ売ろうと思っても共有者間の意思統一が図れなくなったりといったことが起こります。ですから、空き家を相続したらまずは売るか、貸すかを検討することをお勧めします。

需要がある立地ならば売ることも貸すことも可能です。需要の有無については不動産会社に相談すればすぐにわかりますし、売った場合の手取額と貸した場合の長期的な収支、それぞれのメリットやデメリットについて、空き家所有者の個別事情も踏まえたうえでアドバイスを受けられます。

一方、需要が極めて少ないと、不動産会社はビジネスとして成立しにくいと判断し、その空き家の仲介などを取り扱ってくれない場合があります。
そのような場合、公共の空き家バンクや民間の空き家相談窓口を頼るという手があります。公共の空き家バンクは各地方公共団体が運営しており、ホームページなどに相談窓口の連絡先が掲載されています。また、民間の空き家相談窓口にも様々のものがありますが、いずれも売却や賃貸の相談窓口として機能はしていますが、需要が少ない分、簡単に買主や入居者を見つけることができるというわけではないようです。

早めに動くことが肝要

平成25年の住宅・土地統計調査によると、日本国内の空き家は約820万戸、空き家率は約13.5%、東京都区部においても10%前後の空き家率となっています。2030年には空き家率が3割程度にまで上昇するという予測もあります。両隣を含め1軒は空き家という時代がもう目の前まで来ているのです。

そんな状態になれば売却も賃貸も今よりも難しくなる可能性があります。ですから空き家を相続したら、早い段階で売るか貸すかを検討すべきなのです。すぐに実行しないにしても、いつまでに売却するといった意思決定を相続人の間で決めておくだけでもよいと思います。

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