遺産が少なくても相続争いは起こる

相続で揉めるというのは、たくさんの遺産がある一部の人だけというイメージがあるせいか、「うちは財産が少ないから揉めることはない」とおっしゃる方に出くわすことがよくあります。
確かに遺産が多ければ多いほど、相続人同士での争いが発生しそうな気はしますが、現実は必ずしもそうではないのです。

遺産が少なくても相続争いは起こる

遺産額が少なくても争いに

平成28年の司法統計のうち「家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件のうち認容・調停成立件数」を調べてみると、遺産額が1000万円以下の事件件数割合は33%、さらに5000万円以下になると75%となっており、遺産額が少なくても相続人の間で揉めることが多いことがわかります。

遺産額による事件数割合

また、遺産額が1000万円以下であり、遺産が不動産だけである場合の事件の割合は45%、さらに1000万円超5000万円以下のときは22%となっており、不動産だけの遺産相続においては、遺産額が少ないほうがより争いが起きる傾向が見受けられます。

遺産相続における不動産に関する割合

司法統計平成28年度「遺産分割事件のうち認容・調停成立件数-遺産の内容別遺産の価格別-全家庭裁判所」より筆者作成

分割が難しい実家

ところで、なぜ遺産額が少なく、遺産のうちのほとんどが不動産であると、遺産分割事件に発展する件数が多くなるのでしょうか。実は、遺産額が少ないのに相続人間で揉めてしまいがちなのは、親の残した遺産の大半が実家であるという場合です。

親の残した実家の扱いについては、売って換金したいという子供もいるでしょうし、思い出がある実家をすぐには売りたくないと考える子供もいるでしょう。実家の敷地がある程度大きく、相続人の間で納得できる区画に分割できるのならまだよいのですが、なかなかそういった土地は少ないというのが実情です。

実家に住み続けたい相続人がいると

特に、相続人の一人がそこに住んでいる場合は、他の相続人と揉めやすくなります。

一般に、実家を分割する場合、上述したように土地を分割するといっても、家屋を壊さずに区割りできることはほとんどありません。

実家に住む相続人も他の相続人と一緒に実家を売却し、金銭で分割(換価分割)するという方法もありますが、そこで得た金銭で実家から転居できるかどうかは、実家の売却額によりますし、相続人が多ければ手に入る金額も少なくなり転居が現実的でなくなります。

実家に住む相続人が現金など自分の資産を他の相続人に支払うことで対象不動産のすべてを承継する(代償分割)という方法は、そこに居住する相続人にある程度の資産がなければ実現できません。

いずれも上手く分割できないとなると、相続人全員が実家を共有せざるを得なくなります。その場合、売って現金化したい相続人の意向に沿えるものではないため、事実上、問題の先送りということになりますし、次に相続が発生すると共有者がさらに増え、処分や活用に関する意思統一が一段と図りにくくなります。また、実家に住み続ける相続人がどの程度の家賃を支払うべきかという新たな論争も出てきます。

親が元気なうちに

このように遺産のほとんどが実家(不動産)である場合、相続人の間での分割が難しく揉め事になりやすい面があります。

うちは兄弟姉妹が仲良しだから大丈夫という方もいらっしゃいますが、親の手前、兄弟姉妹で言い争うことがないだけで、相続が発生し親という精神的支柱を失ってしまった後は、激しく対立し始めるということもあるのです。

ですから、親が元気なうちに家族で話し合っておいたほうがよいのです。そこで話がまとまらなくても、将来起こりうる課題について親と子供達が認識することが大事なのです。そうした課題認識をしたうえで、不動産に強い税理士や信託銀行などの専門家に相談してみるのもよいでしょう。

子供達が相続発生後に相続争いにならないように、親自らが遺言書を作成するというのも一考です。遺言書を作成しておけば、将来、子供達が相続争いに巻き込まれることはなくなります。遺産の分け方については、遺留分(相続財産の一定割合を取得できるという権利相当分)などにも注意が必要ですし、来年の民法改正に伴い遺言の作成方法も変わりますので、前述した専門家に相談するとよいでしょう。

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