夫婦共働き世帯の住宅ローン 単独で借りるべき?夫婦それぞれで借りるべき?
住宅を購入する際は、多くの人が住宅ローンで資金を調達することになります。昨今は夫婦いずれも仕事に就いている世帯が増えていますが、この場合、どちらか一方が借りる手段と、夫婦それぞれで借りる手段が考えられます。そこで今回は、共働き世帯を対象に、住宅ローンの選択肢とメリット・デメリットについて紹介します。
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夫婦のいずれかが単独で借り入れる
世帯種別を問わず利用できる、もっともベーシックなパターンです。住宅購入に充てられる自己資金額や希望する借入額によっても違いますが、夫婦共働きの場合、より安定的で収入の多いほうが借りるのが一般的です。
メリット
・万一の場合でも安心
住宅ローンを借りた人が死亡したり、重度の障害を負ってしまったりという場合、団体信用保険によって残債が免除されます。例えば、住宅ローンを借りた夫が返済途中で死亡してしまった場合、収入があるからといって妻が返済を代行する必要はありません。
・配偶者の収入が減っても影響を受けにくい
例えば、妻が出産や育児で退職したり、休業中の収入が減ったりしても、夫だけが住宅ローンを借りているのであれば、夫婦それぞれが返済義務を負う後述の2パターンに比べて、リスクを低減できます。
デメリット
・借り入れ可能な金額が低くなる
住宅ローンで借りられる金額は、借りる人の収入に応じた上限があります。夫婦のいずれか一方だけが住宅ローンの債務者になる場合、夫婦それぞれが返済義務を負う場合に比べて調達可能額が低くなるため、希望物件の金額によっては購入できないことも出てきます。
・住宅ローン減税制度は借りた側にしか適用されない
住宅ローンを組むと、一定の期間、残債に応じて所得税や住民税が軽減されることがあります(条件などの詳細は当サイト内「住まいの税金ガイド 1-4. 住宅ローン減税制度」参照)。 住宅ローン減税制度は住宅ローンの利用者だけに適用されますから、夫婦それぞれで借り入れる場合に比べて節税効果が下がります。
夫も妻も債務者になる(連帯債務型)
利用する住宅ローンは世帯として1本ですが、借入額は夫婦の収入を合算した世帯収入をもとに算出されます。このため、借りた後は夫婦双方で返済義務を負うことになります。
メリット
・単独で借りる場合より借入可能額が増える
上記のとおり、借入額は夫婦の合算収入がもとになるので、単独で借りる場合に比べて借入可能額が増えます。
・夫婦それぞれに住宅ローン減税制度が適用される
住宅ローン減税制度も、事前に決めた持ち分に応じて夫婦それぞれに適用されます。世帯全体で見れば、単独で借りる場合より、節税効果が高まる可能性があります。
・ペアローンに比べて手続きの手間や手数料を軽減できる
後述するペアローンは、2本の住宅ローンを利用することになります。連帯債務型の場合、住宅ローンの本数は1本なので、手続きに必要な手間や手数料を軽減できます。
デメリット
・比較検討できる範囲が狭まる
住宅金融支援機構の「フラット35」以外で、連帯債務型を適用できる住宅ローンは少数です。このため、他の場合に比べて、金利などの条件を比較検討できる選択肢が狭くなります。
・双方の収入を前提に返済計画を立てると、リスクが高まる
例えば、月々の返済額のうち夫が6割・妻が4割を負担するといった感じで、お互いに一定の収入があることを前提に返済計画を立ててしまうと、将来的なリスクが高まります。典型例が、出産や育児にともなう退職・休業で妻の収入が減った場合。あてにしていた妻の収入が減る分、夫の負担が大きくなってしまいます。
・団体信用生命保険には夫婦のどちらか一方しか加入できない
万一の際に返済義務が免除される団体信用生命保険には、基本的に夫婦のいずれか一方しか加入できません。つまり、加入していない側に万一のことがあると、残された側は返済し続ける必要があります。このリスクを回避するため、例えば「フラット35」では夫婦連生型の団体信用生命保険「デュエット」が用意されていますし、民間ローンでも同様の団体信用生命保険を扱っている場合があります。ただしオプションなので、当然保険料が割高になります。
夫婦それぞれが住宅ローンを利用する(ペアローン)
夫と妻それぞれが、自身の収入額に応じて住宅ローンを利用するパターンです。世帯としては合計2本の住宅ローンを利用することになります。
メリット
・単独で借りる場合より借入額を増やせる
連帯債務型の場合と同様、単独で借りる場合に比べて借入可能額が増えます。
・夫婦それぞれに住宅ローン減税制度が適用される
夫婦双方が住宅ローンの利用者になるため、減税制度もそれぞれの借入額に対して適用されます。単独で借りる場合に比べて節税効果が高まる可能性があります。
デメリット
・団体信用生命保険が適用されるのは、自身の借入額に対してのみ
夫婦それぞれが住宅ローンを組むので、団体信用生命保険にも、それぞれが加入することになります。万が一のことがあった場合に免除されるのは加入者の残債だけなので、配偶者は自身の返済義務を負い続けます。
・他方の収入が減った場合のリスクが高い
それぞれが返済義務を負うので、夫婦のいずれかがなんらかの事情で失職・減収した場合でも、他方の収入で補うことが難しくなります。
・手続きの手間や手数料が増える
単独で借り入れる場合や連帯債務型を利用する場合に比べて住宅ローンの本数が増えるため、そのぶん手続きに要する手間や手数料も増えます。
将来の計画を立てるのはもちろん、不測の事態にも備えたい
子どもをもうけるかどうかも含め、夫婦それぞれがどのような働き方をしていくつもりなのかによっても、適した選択肢は変わってきます。お互いによく話し合い、将来の計画をしっかり立ててから検討してください。また「親の面倒を見るために退職せざるを得なくなった」など、長い人生には不測の事態もあり得ます。ここまで紹介してきたどのパターンを利用する場合でも、上限まで借りるのではなく、余力を残すように心がけましょう。
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