株価で読み解くマンション価格
FRB(米国の中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会)によるインフレ抑制のための金融引き締めで世界的な景気後退への警戒感が強まっています。英国やイタリアなどの財政悪化も懸念されており、日経平均は今年9月末には2万6,000円を割り込みました。株価は経済状況を映す鏡ともいわれ、不動産価格にも影響すると言われています。特に、東京都内のマンション価格は、日経平均との相関が強いと言われていますが、株価は今後、マンション価格にどのように影響を及ぼす可能性があるのでしょうか?
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酷似している日経平均株価とマンション価格指数の推移
株価がマンション価格に影響を及ぼしているのであれば、それぞれの過去推移も似たような形状になると考えられます。そこで日経平均株価(月末終値)と国土交通省が発表している不動産価格指数(東京都のマンション価格指数)について2008年1月から2022年9月までの期間をグラフ化してみました(不動産価格指数は現時点で2022年5月までの発表となっています)。

(日経平均プロフィル、国土交通省不動産価格指数より筆者作成)
グラフを一見しただけでも、どちらも似たような推移となっていることがわかります。そこで、次のようなマンション価格指数予測モデルを仮定してみることにします。
一般に不動産価格は、直近の価格の一定割合を引き継ぐと言われていますので、上記式の右辺第二項に「前月の対数価格指数」が含まれています。今月の価格は前月の価格に近い価格で取引がなされるといったほうがわかりやすいかもしれません。上記の予測モデルはこうした性質に日経平均株価の動向も一定割合影響すると仮定したものとなっています。
予測結果
上記のマンション価格指数予測モデルを、一般化モーメント法(generalized method of moments, GMM)という計量経済学において統計モデルのパラメーターを推定するための一般的な方法を使用し上記のパラメーターA、B、Cを推定したところ、Aは約0.22、Bは約0.95、Cは約0.000002となりました。これは、翌月の不動産価格指数は、前月の不動産価格指数の95%相当の値に株価変化の影響を加算するという意味です。株価変化については、100円上がれば指数は0.02%アップするということを意味しています。
こうしてみると、株価変化に対してマンション価格指数は緩やかに変化するということがわかると思います。ですから、よほど急激な変化があり、それが継続しない限り、マンション価格が暴落、暴騰するようなことは考えにくいのです。前月の価格を踏襲しながら株価の変化によって微調整が繰り返されるというイメージでとらえてもよいかもしれません。これまでのマンション価格指数の上昇はこうした形で形成されてきた可能性は高いのではないでしょうか。
ちなみに、この予測モデルで算出した2008年2月以降の予想指数と実際のマンション価格指数を比べると次のグラフのようになりますので、一定の精度はありそうです。

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将来予測
このモデルを使って、株価変化によって、今後、マンション価格指数がどのように変化するか予想してみました。今年9月末の日経平均株価2万5,937円が毎月200円下がり、来年8月末に2万3,937円となった場合と、10月末の株価が9月中旬につけた2万8,000円まで戻り、その後毎月200円ずつ上昇し来年8月末には3万円の大台に乗った場合とを考えてみました。

株価が下落した場合、マンション価格指数は少し下がることがわかりました。なお、この後株価不変のままでもっと時間が経過すると、2031年ころに価格指数は169.1に収束します。一方、株価が上昇した場合、以前の上昇トレンドを取り戻す動きになりました。
円安で外貨が・・・
今回仮定した予測モデルのように、マンション価格が前月の価格と株価だけで決まるわけではありません。株安だけでなく円安が進めば、都心部の高級エリアに存するマンションを海外投資家が購入することも考えられますし、金利の変動や可処分所得の推移、人口動態などの影響も受けるはずですから、この予測の精度は決して高くはないかもしれません。とはいえ、株価とマンション価格の相関が高いことを考えると、今後のマンション価格を読み解くうえで一定の価値はあるかもしれません。
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