【2018年】過去10年間の公示地価推移から読み取る今後の住宅地価動向
2018年3月27日、国土交通省が標準地の地価を公示しました。
3大都市圏の過去10年間の対前年変動率と中心部坪単価の推移をもとに、今後の動向を不動産アナリストに予想していただきました。
首都圏エリア
都心部の上昇率鈍化が目立つように
2013年以降、3県の対前年変動率はほぼ横ばいですが、東京都の対前年変動率はプラス1%台の上昇傾向が続いていて、2018年には2%台になりました。東京都心部の人気や資産性の高さが全体をけん引している表れといえます。
「ただし、都心部を区別に見ると印象が変わります。例えば2017年がプラス7.5%だった千代田区は2018年には3.3%に、2017年がプラス6.2%だった中央区は2018年にプラス2.2%と、上昇傾向が鈍化しています。ここ数年、高騰が続いたために、消費者が追随できなくなってきた結果でしょう。3県それぞれのなかでも、東京23区に接したエリアとそれ以外で、似たような傾向をうかがえます」(東京カンテイ高橋さん、以下同)
東京都内は城北・城東エリアの上昇傾向がしばらく続きそう
東京都心部の上昇傾向が鈍化している一方、城北・城東エリアの上昇傾向は昨年よりさらに強まっています。2017年と2018年の対前年変動率を比べると、荒川区がプラス3.9%からプラス6.1%に、北区がプラス3.5%からプラス5.6%となっています。
「従来から人気・価格ともに高い都心部や城南・城西エリアから目を転じる人が増えてきているためでしょう。ただし、数年程度のタイムラグを経て、城北・城東エリアの上昇度合いも落ち着くはずです。これからの住まい購入は、予算や立地、タイミングなど、自身の都合に合わせて選ぶという動きが主流になっていくのではないでしょうか」
名古屋圏エリア
人口増加中の愛知県が市場をけん引
地域経済の中核を担うトヨタ自動車が好調を維持し続けている愛知県では、2013年以降、対前値変動率がプラス続きになっています。
「流入人口が流出人口を上回っていることもあって、住宅の購買ニーズが堅調に伸びているためでしょう。2018年の対前年変動率が愛知県全体より高いエリアを見てみると、名古屋市中区がプラス4.3%、中村区がプラス1.7%となっています。再開発による注目度アップが要因になっていると思われます。また、豊田市はプラス3.1%、長久手市はプラス4.3%ですが、こちらは一戸建て需要が伸びている影響が表れているようです」
名古屋圏エリア全体ではしばらく同様の傾向が続く見込み
地価が上昇を続けている愛知県に対し、他の2県の対前年変動率はマイナス続きとなっています。
「流入人口より流出人口が多いために住宅市場がなかなか活性化していないということでしょう。2県では、当面、これまでと似た推移が続く見通しですから、検討中の人にとっては、景気動向などを気にせず自身のタイミングで購入できるともいえます。一方、愛知県では、過熱気味の東京から名古屋市内の物件に投資マネーが流れ込んでいます。まだ上昇余地が残されているので、自動車産業が好調な限り、しばらくは上昇傾向が続くと見込まれます」
関西圏エリア
商業地は上昇傾向だが、都市中心部以外の住宅地は依然として低調
リーマン・ショックによる大幅下落から、対前年変動率がプラスにならないままだった関西圏エリアですが、2018年は大阪府がプラス0.1%、京都府がプラス0.3%に微増しました。
「大阪市内・京都市内の一部では新築マンションの供給が活発だったため、これが2018年の住宅地の数字に表れているのでしょう。一方で、商業地の対前年変動率は、大阪府がプラス4.9%、京都府がプラス6.5%と、一定以上の伸びを示しています。これは海外観光客の増加によるところが大きいため、府県単位での住宅地の地価は、依然として上昇に転じにくい状況が続いているといえます」
今後は、徐々に上昇傾向が波及する可能性が
観光客の増加は、直接は住宅ニーズに影響しませんが、地域経済の活性化にはつながります。
「観光客が増えれば、もてなすための労働需要も高まります。働く人が増えれば、これにともなって人口や住宅需要も増えることになります。また、名古屋圏エリアと同じ理由で、関西圏エリアでも、東京都内からシフトした投資マネーが増加しつつあります。これらの現象は、今は特定地域に限られていますが、徐々に範囲を広げていくでしょう。つまり今後は、大きな変化が起きない限り、住宅地の地価も少しずつ上昇傾向を強めていくと見込まれます」
※当記事の掲載データは、すべて国土交通省が公開している公示地価をもとに作成したものです。
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