住宅用地を購入する際に知っておきたい、接道と敷地形状のメリット、デメリット

住宅用地を購入する際に、道路がどの方角にあるのか、敷地の形はどうなのか、気になるところだと思います。郊外のように敷地が50坪以上あるケースなら、様々な間取りが考えられますが、都市部に多い敷地が30~40坪程度の小規模敷地の場合は用途地域による法的制限や道路の方位・敷地の形による影響が大きいのです。
そこで、敷地形状の違いや、用途地域などこれに伴う法令制限により北道路、南道路のメリット、デメリットについて説明します。

住宅地

敷地形状が道路に対して横長の場合

住居関連地域内で(注1)、建ぺい率60%、容積率200%程度の地域(2階建てや3階建て住宅が混在している地域)の場合を例えに、横長敷地で考えてみます。
図-1の南道路のケースでは、低層住居専用地域で北側斜線制限がある場合は2階建てが限度ですが(図-6参照)、その他の住居関連地域なら3階建てが可能になります(注2)。
南道路ではアプローチが南側になり玄関部分が必要で南面の開口が狭まり、他の居室を1階に配置する多少の妨げになりますが全体的には南面の間口が広くとれるため1階居室も十分可能です。また南側に庭や空地が取れますので、日照も多く道路からの距離が取れるためプライバシーを守れます。


図-2の北道路のケースでは、道路幅が6m以上あれば3階建ても可能ですが、道路幅が4mだと図-5のように道路斜線制限で2階建てが限度です。しかし、図-7のように北道路から建物を1.5m以上離せば道路斜線制限をクリアして3階建ても可能ですが、狭い敷地の北側に1.5m以上の無駄なスペースを多く生み出してしまいます。間取りでは北側に玄関や浴室・洗面・トイレ・納戸など日照を不要とする部屋を配置すれば、南側に多くの居室を設けることができます。北側斜線制限がある地域なら南側隣地の建物からの日当たりの影響も少なく1階の居間も快適に過ごせる間取りが可能です。南側に3階建て建物がある場合でも、居間を2階もしくは3階に配置することができれば明るい居間を設けることができ、間取りを考える上では一番有利な敷地形状といえます。
しかし、どちらのケースでも、駐車スペースを設けると南側に配置する部屋が制限され1階の間取りにしては大きなマイナスになります。

注1:住居関連地域:第1種・第2種低層住居専用地域、第1種・第2種中高層住居専用地域、田園住居地域、第1種・第2種住居地域、準住居地域
注2;住居関連地域では都市計画で決められた容積率(敷地の面積に対して建てられる住宅の全体の面積の割合)と道路幅員に対する制限があります。道路幅員×0.4と地域で決められた容積率と比べて小さい方が限度となります。前面道路幅が住宅地によくみられる4mの場合は、4m×0.4=160%が限度となりますので、建ぺい率(敷地面積に対して建てられる1階部分の面積の割合)60%いっぱいに計画した場合は、3階建てにすると60%×3階=180%と、容積率オーバーになりますので注意が必要です。建ぺい率を50%で計画すれば50%×3階=150%で160%をクリアしますので現実的です。

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敷地形状が道路に対して縦長の場合

図3の南道路のケースでは、低層住居専用地域で北側斜線制限がある場合は図-6のように2階建てが限度です。図-8のように北側を3m程度空ければ3階建てが可能ですが北側に活用の難しい空地ができて現実的ではありません。北側斜線制限のない他の住居関連地域では3階建てが可能です。アプローチが南側になり玄関部分が必要で他の居室を配置する妨げになるため、間口が狭い縦長敷地では1階に居間などの居室を配置するには不利になりますが、南道路からの距離が取れますのでプライバシーを守れます。しかし、駐車スペースを確保しようとすると1階に居室を設けることは困難です。

図-4の北道路のケースでは、図-2のケースと同様なメリットやデメリットがあります。また、南側に3階建て建物がある場合でも、南側隣地よりの離れが横長敷地より多く取れますので1階居間での日当たりも確保できる可能性も高く、縦長敷地ならではの快適に過ごせる間取りが可能です。


注5:北側斜線制限がある地域でも、横長敷地なら東もしくは西側に空地をとることができれば、天空率という手法を利用することにより北側斜線制限や道路斜線制限が緩和され3階建てが可能な場合もありますので、専門家にご相談ください。

敷地選びで南側道路にこだわらない

これまで説明したように都市部に多い小規模な住宅用地を購入する際、北側斜線制限の有無と接道の方角は大きな要素になります。北側斜線制限のある低層住居専用地域の場合は、2階建てなら横長敷地なら、間取りを優先するなら北道路、日照を優先するなら南道路といえます。縦長敷地の場合は、南側隣地の建物の高さによりますが北道路のほうが間取りや日照でも有利な場合がありますので詳細な検討が必要です。同じ地域に3階建てを計画する場合は敷地形状によらず北道路が有利です(注5)。
北側斜線制限のない低層住居専用地域以外の住居関連地域なら、道路斜線制限が中心になります。その場合は図-6の道路から建物との距離(a)がとれるため、南側空地が多く取れる南道路が有利といえます。
このように、敷地の形状や用途地域により南側道路が必ずしも有利とは言えません。また、敷地の形状によっては道路の方位に関係なく、間取りを考える上で設計の良し悪しでデメリットをメリットに変えることもできるのです。そのためには事前に専門家に依頼することにより、道路付けや敷地形状により最適なプランニングが提案されると思われます。

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