旗竿地なら地価が安いが気をつけなければいけないこんなこと

住宅用地で道路に面する間口が狭い通路になっており、その奥に広い敷地があるものを見かけたことがないでしょうか。このような敷地のことを、旗竿の形(通路部分が竿で路地状部分ともいわれ奥の敷地が旗です)をしているので旗竿地といいます。不動産用語では敷地延長の物件(敷延物件)とも呼ばれます。このような敷地は道路に敷地自体が面している物件に比べて地価は安いのが一般的です。しかし、安い分制限もあるので注意が必要です。
街で4区画の旗竿地を含む分譲地を見ることは少なくないと思いますので、そのような例をとって説明します。

旗竿地

4区画に分譲する場合の法的条件

大きな敷地を4区画にして分譲する場合、旗竿地の路地状部分の幅員は最低2m以上必要です。建築基準法で建物は道路に2m以上接しなければならないからです。しかし、2m以上の路地状部分の長さがいくらでもよいといえばそうではなく、条例で通路幅と奥行きで制限があることが通例です。
東京都の条例では、路地状部分の奥行きが20mを超える場合、幅員は3m以上ないと建築することはできません。地価が高い都市部では、狭小敷地に3階建てを建てるケースも少なくないのですが、同条例では道路に面する区画が3階建てで一般的な木造住宅だからといって、旗竿地も同じ構造の木造では建てられません。旗竿地に3階建ての建物を建築するには耐火建築物造や準耐火建築物といった木造でも耐火性の強い建物にしなくてはなりません。

1.低層住居専用地域の場合(注1)

北側斜線制限には気をつける

低層住居専用地域では北側斜線制限(注2)がありますので、北側の隣地境界線に面する建物の5m以上の高さについては高さ制限がかかり隣地より離さなければなりません。
AとC区画で2階建てを計画する場合には、階高が普通の高さの建物なら北側隣地境界より1m程度離せば、同じくらいの規模の建物が計画可能です。
BとD区画で3階建てを計画する場合にはどちらの区画も北側斜線制限により3m程度北側隣地境界より離さなければなりません。

採光制限にも気をつける

AとC区画で2階建てを計画する場合を考えてみます。Aの区画では路地状部分も敷地面積に入りますので、旗の部分に相当する敷地には大きく建てられそうですが、C敷地に面する部屋は採光制限のため(注3)2m程度は離さなければならずC区画の建物より小さくなるかもしれません。C区画に関しては建ぺい率(注4)を守れば基本的にどのような計画でも建築可能です。
BとD区画で3階建てを計画する場合、B区画では3階建てだと採光のためD敷地に面する部屋は、2階建ての場合より多く離さなければならないケースがでてくるため、結果的にはD区画より建築面積(注5)が小さな建物しか建築できないことになります。

1.低層住居専用地域

(注1) 低層住宅専用地域:ほとんどの市街地では都市計画法で13種の用途地域に定められています。その中で特に第1種低層住宅専用地域・第2種低層住居専用地域については、「低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域」とされているため他の地域と比較すると建築制限が厳しく規定されています。

(注2) 北側斜線制限:第1種・第2種低層住宅専用地域では、北側隣地より【5m+境界からの真北方向の離れ距離×1.25】以下の高さに建物を建築しなければならないという制限です。

(注3) 居室の採光制限:居室には室面積の1/7以上の採光に有効な開口部が必要で、該当居室の窓の上部にあたる建物の高さと窓の前の敷地境界線までの距離の割合に制限があり、3階建ての一階の居室などは3m近く離さなければなりません。ただし、1階に居室をつくらなければ、2階建てと同様1.5~2m程度の離れで可能です。居室の前面が道路の場合は制限はありません。

(注4) 建ぺい率:敷地面積に対する建築面積の割合で、用途地域ごとに上限の割合が定められています。

(注5) 建築面積:建建物を真上から見たときの外周で求めた面積のこと。一般的な住宅では、1階部分の面積がそれにあたります(建坪とも呼ばれます)。建築面積は敷地面積に対する建ぺい率以下に抑えなくてはなりません。

エリア・沿線・ご希望の条件から物件を探す

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

2.低層住居専用地域以外の場合

低層住居専用地域以外なら北側斜線制限は不要

低層住居専用地域以外の住居関連地域でA・B・C・Dの4区画のケースで考えてみます。低層住居専用地域以外の地域ではどの区画でも北側斜線制限がありませんので、北側隣地境界からの制限は受けませんので、北側隣地からは最低50cm程度離せば建築可能です。

採光制限には気をつける

AとC区画で2階建てを計画する場合には同じくらいの建物が可能です。ただしAの区画では路地状部分も敷地面積に入りますので、C敷地に面する部屋は採光のため2m程度は離さなければなりませんのでC区画の建物より小さくなるかもしれません。C区画に関しては建ぺい率を守れば基本的にどのような計画でも建築可能です。
BとD区画で3階建てを計画する場合には北側斜線制限はありませんが、採光の規定を受けますのでB区画では3階建てだと採光のためD敷地に面する部屋は、低層住居専用地域と同様2階建ての場合より多く離さなければならないケースがでてくるため、結果的に建築面積がD敷地の建物より小さい建築になるでしょう。

低層住居専用地域以外の住居関連地域

旗竿地での注意と活用

前述しましたように旗竿地では建てられる建物が小さくなる可能性が否めません。特に3階建てだと低層住居専用地域だと、北側斜線制限が厳しく北側隣地より建物を多く離さなければならない他、条例で旗竿地に建築する建物の防火的な構造の強化を求められる場合もあり注意が必要です。

路地状部分が狭いと建築するときの重機の搬入も難しいため建築費もアップします。このような理由から旗竿地では2階建てが多いのが一般的です。路地状部分の幅員が2mほどしかない場合は自転車やバイクは置けても自家用車を置くことは難しいですが、住宅に続くアプローチの活用として園芸プランターの置き場所として利用するとよいでしょう。地状部分の幅員を広げて駐車できるようにした物件も見受けられますので、そのような物件なら路地状部分も十分に生かせられることができるでしょう。また、旗竿地物件は道路から離れているため車の往来による騒音が少なく、通行人の視線を気にする必要がなくプライバシーを保ちながら静かに暮らせるという住環境がメリットがあるだけでなく、固定資産税が整形地の物件と比較して安いなど、地価が安いメリットを享受できると思います。

旗竿地ではアパートなどの共同住宅は条例等で建築できない地域が多いですが、住戸数の少ないテラスハウスや玄関別の二世帯住宅などは可能なため、面積が広い旗竿地で地価が安ければ投資も含めた検討価値があるでしょう。旗竿地で地価が安いのは、様々な法規制で思い通りの建物が建てにくいということを知っておき、それでも自分にとってメリットがあるか?路地状部分が活用できるか?ということを検討するとよいでしょう。

※本原稿は都市計画法で定められた住居関係地域における戸建て住宅を対象としたもので、工業関係地域・商業関係地域では異なりますのでご了承ください。

エリア・沿線・ご希望の条件から物件を探す

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

戸建購入
ご留意事項

本コンテンツに掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、当社の見解を示すものではありません。
本コンテンツに掲載の情報は執筆時点のものです。また、本コンテンツは執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び当社が保証するものではありません。
本コンテンツは、情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
本コンテンツに掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、当社は一切責任を負いません。
本コンテンツに掲載の情報に関するご質問には執筆者及び当社はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。