郊外戸建が人気! 消費者心理はどのように変化したのか?

コロナ禍以降、リモート業務が浸透したこともあり、郊外の中古戸建取引が活発になっているといいます。2019年から現在にかけて、一都三県における中古戸建市場はどのように動いたのかについてデータから読み解きたいと思います。

郊外の戸建


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千葉・埼玉が躍進

まずは一都三県の中古戸建取引価格がどのように変化してきたかを見てみましょう。次のグラフは2019年1月の価格を1.0としたときの中古戸建価格(建物面積1m²あたり6か月移動平均単価)の推移を示したグラフです。

戸建取引価格の推移

(公益財団法人東日本不動産流通機構「市況データ」より筆者作成)

2020年3月までは概ね横ばいでしたが、同年4月の緊急事態宣言発令で取引価格は落ち込みます。その後、全般的に取引価格は上昇していますが、東京都や神奈川県よりも、千葉県、埼玉県の伸びが顕著になっています。このグラフを見ると、千葉と埼玉の人気が相対的に高まったと結論付けたくなりますが、これ以外にも昨今の状況を表す内なる動向があるはずです。
そこで、中古戸建の買主が、築年数、東京駅からの直線距離、一都三県のどこに所在する物件か、最寄駅(又はバス停)からの距離、バス便か否かといった要素に対して、どのような価値を見出しているのかに注目して分析をしてみることにしました。

具体的には、東日本不動産流通機構に登録された中古戸建(築30年以内、2019年1月~2022年6月、一都三県33,567件)の成約事例をもとに、これらの要素が価格にどのような影響を及ぼしているのか、またその影響が時間とともにどのように変化したのかをpythonという統計ソフトとコンピューターを使って計算しました。

分析結果の概要

次の表は、前述の各要素によって成約単価が何%変化するかを時期ごとに機械学習によって計算した結果です。

(公益財団法人東日本不動産流通機構に登録された成約データより筆者作成。網掛け部分は、括弧内の数値が出力されるが統計的に有意ではない(信頼性が乏しい)ため、係数は0%(価格に影響が及ばない)という結果になっている。)

「築年数」は、2019年上半期が▲2.1%となっていますが、これは1年経過すると2.1%価格が下がるということを意味します。2020年下半期から上昇傾向となり2022年上半期には▲1.7%と変化しています。つまり築年数が古くなっても価格が安くなるという傾向が弱まっており、建物年数へのこだわりが少なくなっていることを意味しています。これは中古マンション市場でも同じ傾向が見られ、中古でも構わないという考え方やリノベーションなどの選択肢が増えたことも一因だと思われます。

「東京駅からの直線距離」については殆ど変化が見られず、概ね▲1.7%(東京駅からの距離が1km離れるごとに価格は1.7%下がるという傾向)となっており変化は見られませんでした。東京中心部から遠くなることに対する価値減少という買主にとっての対価は以前と変わらないようです。

一都三県のどこに所在するかについては、「千葉県所在の場合」、2022年上半期は東京都所在の物件と比べて47.6%、「埼玉県所在の場合」は37.6%成約単価が低くなるようです。いずれも2019年頃と比べるとやや上昇傾向が見られ、東京都所在の物件との格差は少し縮まったことになります。一方、神奈川県は東京都と差はないという結果になっています。先の折れ線グラフの結果とイメージが相違していますが、折れ線グラフは平均取引単価をベースとしたものであることからすると、千葉県と埼玉県については、東京駅からの直線距離が比較的近い場所での取引が多かったことが理由として考えられます。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

駅遠・バス便が善戦

興味深いのは、「最寄駅(又はバス停)からの徒歩時間」と「バス便利用の場合」です。前者は、2019年上半期において最寄駅(又はバス停)からの徒歩距離が1分増えると▲1.4%価格が下がっていたものが、2022年上半期には▲1.1%にとどまっています。徒歩距離が遠くなれば価格は下がるものの、以前に比べて下がり方が0.3ポイント小さくなったのです。後者については、バス便か否かという指標になります。2019年上半期でいうと、バス便である場合には、バス便でない物件と比べて20.6%価格が安くなるわけです、これが2022年上期には▲18.7%となり、バス便でも価格低下傾向が緩和されてきたことを表しています。少々不便になったとしても、よりよい環境での暮らしを求めるという傾向が顕著になったのかもしれません。

限界点に到達?

郊外の中古戸建という範疇で考えると、東京中心部からは極力近い場所が好まれるという傾向は従来と変わらないものの、最寄駅からは比較的遠くても、あるいはバス便であってもかまわないという方が増えてきたというのが、ここ数年の傾向であるということです。

この背景には、リモート勤務が一定程度定着しつつあることが要因と考えられますが、コロナ禍当初に言われたように郊外戸建が大きく躍進するというところまでは至らなかったのではないかと筆者は考えています。ウィズコロナが定着しつつありますが、職場に戻って仕事をするケースも増えており、今後、最寄駅からさらに遠い物件の人気が高まる、バス便人気がもっと高まるとは考えにくく、現状のレベルで限界点を迎えるのではないかと考えています。

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