「中古マンションの建物構造の違いによるメリット、デメリット」 ~購入時に知っておきたい構造の豆知識~

最近の新築マンションの構造は鉄筋コンクリート造が一般的です。しかし、中古マンションの購入検討を行っていると、高層マンションでは鉄骨鉄筋コンクリート造と記載されている建物も見受けられます。両方ともコンクリート造なのですがどこが違うのでしょうか。結論から言えば、鉄骨鉄筋コンクリート造は鉄筋コンクリート造と鉄骨造の良いところをとりいれたハイブリットの構造で、耐震性も高く優れた構造物といえるのです。まず、鉄筋コンクリート造についてみてみましょう。

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鉄筋コンクリート造のしくみ

鉄筋コンクリート造は英語でReinforced Concreteといいます。日本では略してRC造と呼びますが、Reinforcedの意味は「強化された」「補強された」という意味ですから、強化されたコンクリートということになります。何で強化されたといえば、お分かりのように鉄筋です。それでは、鉄筋はどのような補強の役割をしているのでしょうか。

鉄筋は圧縮には弱いが引っ張りには強い。コンクリートは圧縮には強いが、引っ張りには弱い。これらの、それぞれの短所を補いあったのが鉄筋コンクリート造です。
図1で説明しますと、コンクリートでできた角材の両端に支持材を入れて浮かせ、中央に力を掛けたとします。すると角材の下側が引っ張られ、力が強くなると最終的には下側からヒビが入り最後には折れて壊れてしまいます。この角材が壊れないようにするにはどうしたらよいでしょうか。角材の引っ張られる部分に、部材が引っ張られたとしてもそれに抵抗する事ができる材料を挿入すればヒビ割れが出ずに壊れないようになります。その材料のひとつに鉄筋が考えられたのです。

図1.材料に力が加えられた時に生じるメカニズム

鉄筋は鉄を細い棒状に加工されたものですが、細い鉄筋一本でも乗用車を一台くらいは吊り上げてしまうくらい引張り力には力を発揮する材料です。しかし、鉄筋を両側から圧縮すると曲がってしまいます。鉄も塊なら圧縮にも強いですが、細い棒状では座屈してしまうのです。
鉄筋は圧縮には弱いが引っ張りには強い。コンクリートは圧縮には強いが、引っ張りには弱い。このように、それぞれの短所を補いあえば丈夫な材料になることがお分かりいただけると思います。
鉄筋コンクリート造をさらに細かく見ていきましょう。図1の角材を鉄筋コンクリート造の梁に見立てると、鉄筋は図2のように挿入されているのです。

梁の中央部は図2のように引っ張られる力が多い下側に多くの鉄筋が入ります。この鉄筋を主筋といいます。主筋の周りをぐるっと、あばら筋(スタラップ)と呼ばれる鉄筋を巻いてコンクリートの中に生じる斜めの力によるひび割れを防ぐのです。
鉄筋コンクリート造は火や水に弱い鉄筋をコンクリートという、火や水に強い材料の中に入れ込んで一体的施工でつくるため耐火性、耐久性に優れます。地震時の揺れは鉄骨造より少ないのですが、自重が大きいため地震による影響が大きいのも鉄筋コンクリート造の特徴です。

鉄骨鉄筋コンクリート造

それでは鉄骨鉄筋コンクリート造とはどのような構造メカニズムなのでしょうか。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は英語でSteel Reinforced Concreteといい、鉄骨で補強されたコンクリート造ということです。
それではなぜ鉄骨が入るのでしょうか。

鉄筋コンクリート造も柱間隔が長い建物や、階数が多く高い建物になると、鉄筋の本数が増えてきますが、あまり本数が増えすぎると鉄筋の間隔が狭くなり、コンクリート(砂利・砂・セメントに水を加えて練ったもの)の中の砂利などがつまり鉄筋とコンクリートの一体性がそぐわれてしまいます。そこで、鉄筋の代わりに鉄骨を入れれば一気に多くの鉄筋の本数がまかなえることになります。そうした構造が鉄骨鉄筋コンクリート造で、鉄骨に主な強度を持たせ鉄骨を取り巻くように鉄筋を配置し、あとは普通の鉄筋コンクリート造と同様に、型枠で囲みコンクリートを流し込んで一体化した構造形式で、鉄筋コンクリート造の強度をアップさせたものと考えてもよいでしょう。そのため、大まかな特徴は鉄筋コンクリート造と同じになります。
鉄骨鉄筋コンクリート造は鉄骨に強度を多く持たせているため比較的小さな断面で丈夫な骨組みをつくることができ、鉄骨の特性であるじん性(物質の粘り強さを表す技術用語で、以前は「ねばさ」と呼ばれていましたが、近年は「靱性(じんせい)」の方が多く用いられます)を合わせ持つため耐震性に優れます。ねばり強さがあるため、高層建築や柱間隔が大きい建物に適しています。

高層建築に適している鉄骨造と比べてコンクリートとの複合体のため振動が少なく、遮音性にすぐれているため高層建物の中でも居住用建物に向いているといえます。
しかし、施工の難易度が高く、鉄筋と配筋の取り合いやコンクリートの打設が非常に難しいのもこの構造の特徴です。また、工事費は鉄骨部分が含まれるためRC造より高く、解体もRC造以上にしにくいのも特徴といえます。さらに、鉄骨を組み上げた後、鉄筋コンクリート造と同様の工事が始まりますので、工期は鉄筋コンクリート造より長くなります。
そのため、現在はコンクリートの強度をあげた高強度コンクリートにより、高層建築でも鉄筋コンクリート造が可能となったため鉄骨鉄筋コンクリート造は少なくなっています。

図3.RC造とSRC造の見取り図

不動産流通研究所「月刊不動産流通」2020年6月号より転載

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

まとめ

物件を選ぶ際、物件の詳細情報をご覧になると思いますが、購入希望条件がそろった物件の中で、構造の情報をご覧ください。最近の建物では鉄筋コンクリート造がほとんどを占めていますが、過去の物件では鉄骨鉄筋コンクリート造との記載も見受けられます。そのような物件は、鉄筋コンクリート造と同様、耐震性が高いだけではなく、さらに「ねばさ」があるため地震時の安全性が高いと考えられますので、耐震性のより高い物件を希望するのであればおすすめです。

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