古いマンションの購入時に知りたい耐震性の簡単な見分け方

マイホームといえば「夢の一戸建て」という話は一昔前、近年ではマンションを選択する人が多くなっています。その圧倒的な要因に利便性が挙げられ都内の新築マンション価格はここ数年で高騰し平均価格が6,000万円を超えてきました(※(株)不動産流通研究所 首都圏マンション市場動向2020参照)。そのため、無理をして長期ローンを組むと将来の売却時にマンション価格が想定以上に下落した場合、損切をしても住宅ローンの残債が残ってしまうかもしれません。それなら、新築より価格の安い中古マンションを検討したほうがよいという考え方もあります。同等の広さや立地条件の中古マンションなら自分好みにリフォームして、新築マンションより安く済ませる工夫も可能でしょう。しかし、そこで心配なのは建物の耐震性です。

古いマンション

新耐震というだけでは安心できない

一般的に1981年5月31日までに確認申請を受けた建物は「旧耐震」、1981年6月1日以降の確認申請を受けた建物は「新耐震」と呼ばれ、新耐震の建物なら安心といわれていますが、1995年の阪神大震災で新耐震設計のマンションでも倒壊してしまったマンションも少なくないことが分かりました。(図1)

鉄筋コンクリート造の場合

日本建築家協会 都市災害特別委員会緊急報告書

どのようなマンションが倒壊してしまったのかといえば、1階が駐車場など柱だけになっているピロティタイプのマンション(図2参照)です。
マンションは戸境壁が耐震壁という地震の揺れに対して耐震性を持たせる重要な壁になっています。
ピロティマンションでは上階には戸境壁の耐震壁はあるのに1階では耐震壁がなくなっているケースがほとんどです。耐震壁がないからといって欠陥マンションではなく、新耐震の基準で設計されているのですが、大地震時に上階と1階との耐震性のバランスが悪いと、1階に地震力が集中してしまうことが判明したのです。そのため、阪神大震災のあった同年に設計基準が変わり駐車場などのピロティ形式であっても耐震壁を入れるか、入れられない場合は柱の強さを増すよう設計基準が変わり、柱は大きく鉄筋量も多くなる設計基準になりました。
このように建物の耐震性はバランスが重要なのです。

1階のピロティ部分が崩壊

図2 1階のピロティ部分が崩壊

例えば阪神大震災で中間階が倒壊してしまった市庁舎(図3参照)はその階より下に鉄骨が入ったSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)を使用し、その階より上では一般的なRC造(鉄筋コンクリート造)であったことが分かっています。

6階部分が崩壊した神戸市役所

図3 6階部分が崩壊した神戸市役所

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

建物形状も重要な要素

また、建物のバランスという面を重視するなら、建物の立面形状や平面形状も大きな要素なのです。図5-(1)~(2)のような平面形状が変形しているマンションでは、平面的にL型の頂点部に地震力が集中しやすく、上階が斜線制限などにより道路側より後退している(図4-(1))建物などもバランスの悪いマンションです。道路側と反対側では一階の柱にかかる重量が違うからです。

地震に弱い建物形状

(3)※建物そのものはLやコ形状のように悪くはないが、ひとつの棟が被害を受けると全体で費用を負担することになる

このようなバランスの悪いマンションが全て危険だということではありません。耐震診断で問題なしと判断されていれば安全です。しかし、多くの中古マンションは耐震診断がされていません。そのため、耐震診断が行われて耐震性が確保されていないマンションの購入検討には次のようなところをチェックすることで簡易的に耐震性の良し悪しを見分けることができるのです。

(1)1995年以前のマンションでは1階に住戸がなく柱だけの駐車場になっていないか
(2)建物全体の平面形状がシンプルになっているか
(3)上階が斜線制限などにより道路側より後退していないか


この3ポイントを満たしていれば少なからず安心といえるでしょう。

メンテナンスの重要性

旧耐震マンションの全てが危険だということではなく、図-1で分かるように1971年6月以降のマンションなら柱の鉄筋量を多くする構造設計基準の改訂がなされたマンションのため、阪神大震災でも被害が少なかったことが判明しています。現在では建築後約50年経過していますが、外壁の維持メンテナンスがしっかりしていれば、鉄筋量に変わりはないため築50年経過しているからといって耐震力が低減しているわけではありません。
このように建設年により簡易に分かる、マンションの耐震性について、阪神大震災時の報告に基づいて記載しましたが、あくまでその時点での耐震性であり、その後のメンテナンスがきちんと行われているのかも重要な要素です。メンテナンスがされていなければクラックなどから鉄筋が錆び耐力が低下しているかもしれません。
なお、売主、買主の意向に応じてインスペクション(建物状況調査)を実施した場合、劣化状況、欠陥の有無、改修すべき箇所の報告がされますので購入する判断の1つとして捉えることができます。

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

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