「傾斜マンション問題」で考察 安全な中古マンションの選び方

2015年10月に発覚した、神奈川県横浜市のいわゆる「傾斜マンション」の問題。この報道があって以来、マンション購入を考えている人の中には、現物を直接確認できることから中古マンションを検討する方が増えているといいます。では、どんなマンションなら安心なのでしょうか。注目すべきポイントをまとめてみました。

 「傾斜マンション問題」で考察 安全な中古マンションの選び方

そもそもどの程度の傾斜が問題になるのか?

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マンションの場合、一住戸だけの傾斜角度を調べてもあまり意味がない

2015年10月に発覚した神奈川県横浜市の「傾斜マンション」の問題は、杭の一部が地中の硬い地盤に達しておらず、杭打ちの適正さを示すデータも本来のものでなかったことから大きなニュースになりました。マンションの住人は、心身はもちろん、経済的にも計り知れないダメージを被っています。
もし自分が買ったマンションがそうだったとしたら……そんな不安を感じる方は少なくないでしょう。

では、そもそもどの程度の傾きが問題となるのでしょうか。

2000年に施行された品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)では、
(1) 3/1000未満の傾斜を「構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が低い」
(2) 3/1000以上6/1000未満の傾斜を「構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が一定程度存する」
と定めています。一般的には、新築なら(1)まで、中古なら(2)までを許容範囲とするケースが多いようです。しかし、
(3) 6/1000以上の傾斜は「構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が高い」
となっており、購入に適しているとは言いづらいと考えられます。

「土地の形状の影響を直接受ける一戸建てならともかく、マンションは、建物をつくったゼネコンの技術力によって、一戸一戸、1000分の1単位で微妙に傾斜角が異なるケースもあります。したがって自分が買おうとする住戸の傾斜角が1000分3未満だったとしても、別の住戸ではもっと悪い数字を示している可能性もあるのです。傾斜角を調べるため、中古マンション購入前にビー玉や水の入ったペットボトル、市販の水平器を使って住戸内を測り、品確法上問題のない数値を示していたとしても、そのマンション全体が安心できるとは限りません」(木村氏 以下コメントは同じ)

文字どおりの土台になる地盤の固さを調べる

基礎杭が固い支持層に到達していれば安心であるということは、裏を返せば、そうした杭を打たなければならない程、表面の地盤がもろいことを示唆しているとも考えられます。であるならば、元々の地盤が強固な場所に立つマンションなら、信頼性は比較的高いという考えも成り立ちます。
「該当するマンション周辺の地盤状況を調べるには、例えば、地盤ネット株式会社の“地盤ネット安心マップ”や、ジオテック株式会社の住宅地盤情報提供システム“ジオダス”などインターネット上のフリーサービスの利用もおすすめです。住所などを打ち込むだけで手軽に強度のデータを入手することができます。あるいは、そのマンションが立っている自治体や国土交通省など行政が公開しているハザードマップなどで土地の液状化の危険度を調べることもできます」
気に入ったマンションが立っている場所の地盤をこのような方法で調べ、納得がいけば具体的に購入を検討していくといいでしょう。

マンションを支える杭の長さをチェックする

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PC杭の長さがマンションの品質のカギを握る

仮に強固な地盤に立っているマンションではなかったとしても、基礎杭が強固な支持層に到達していれば耐震性や傾斜などの問題は起こりにくいと言えます。そこで注目したいのが、打ち込まれている杭の長さです。
「マンションを支える杭(「PC杭」「プレキャストコンクリートパイル」と呼ばれる)は、一般的にひとつの長さが10~12m、最長でも約16mとされています。地面から支持層までの長さがPC杭より長い場合は、地中で継ぎ足すか、円柱状の穴を掘り、鉄筋を落とし込んだ後にコンクリートを流し込む「場所打ち」とよばれる工法が採用されます。いずれにせよ、支持層までの距離が長いマンションはそれだけリスクが増大すると考えられます。理想を言えば、杭の長さが20m以内のマンションを選びたいところです」
杭の長さは「設計図書」という書類で確認することができます。管理組合が保管しているケースが一般的なので、仲介会社に頼んで見せてもらうようにするといいでしょう。
また、マンションの着工から竣工までの工期の長さもバロメーターになるそうです。
「ハイグレードな低層マンションやタワーマンションでは変わってくるケースもありますが、業界では、一般的な中高層マンションの場合なら、そのマンションの階数+3~4ヵ月が標準的な工期とされています。これより短いと何らかの事情で間に合わせや、手抜き工事が行われている可能性がないとも限りませんので、一応の目安としてもいいでしょう」
工期は、仲介会社、あるいはマンションを分譲・販売した会社に聞いてみる、もしくは売主が持っている物件概要が記載された物件パンフレットなどで確認するといいでしょう。

2000年4月以降に建築確認を受けたマンションを探す

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2000年4月以降に建築確認を受けているかがひとつの目安に

先に触れた品確法は、2000年(平成12年)4月に施行された法律です。それ以降に建築確認を受けたマンションは、大きな問題が起きる可能性が比較的低いと木村さんは言います。
「というのは、品確法では新築住宅の基本構造部分に関して、売主に10年間の瑕疵担保責任(※)が義務付けられているからです。中古物件を購入する人に直接のメリットはありませんが、この法律が施行された後に建築された物件については、構造部分の信頼性が品確法施行以前に比べて高まったと言っていいでしょう」

※建物、宅地に契約の締結当時既に欠陥・キズなど隠れた瑕疵があった場合、売主が買主に対して瑕疵の修復を行う、あるいは損害が発生した場合に損害金を支払うこと

マンション管理組合がどれだけ機能しているかを知る

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マンションの資産性は管理組合の活動内容にも左右される

さまざまなチェックを行い、納得してマンションを購入し、暮らし始めた。しかし、それでも万が一何らかの問題が起きたとしたら――その際、対処の当事者になるのはマンションの管理組合です。理事会を中心にして真摯に問題に向き合い、どれだけ善処できるかが問題解決までの道のりの長短を決めると言っていいでしょう。
では、その中古マンションの管理組合はどのくらい機能しているのか。それを測る重要なバロメーターになるのが、管理組合が積み上げた「実績」、つまり、管理組合総会議事録などの書類です。
「耐震補強、給排水管工事、諸々のトラブル解決などが誠実にクリアされた歴史があるかを確認しておきましょう。その管理組合の問題対処能力が分かり、万が一の事態に対しても安心感を得ることができます」 これも仲介会社に依頼して見せてもらうといいでしょう。もちろん、ご自身がマンションを購入したあかつきには、自らも積極的に管理組合活動に貢献するようにしてください。

表面的な情報ではなく「基本」の見極めが大切

「傾斜マンション」問題発覚後、住戸内の傾斜が●度傾斜だから危ない/安心できる、といった側面に注目が集まっていました。しかし、目を向けるべきはそうした表面的な情報ではなく、もっと抜本的な部分です。具体的には本稿で述べたとおり、地盤の強度や杭の長さ、建築確認を受けた時期、マンションの価値を維持するために大きな役割を担う管理組合の活動内容などに注目しましょう。それらをしっかり調べ、納得したうえで購入を検討することが大切です。

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