年代から建築当時の法令やトレンドをチェック 特徴から見る中古マンション

構造や設備・仕様などのトレンドは、時代によって次々と移り変わりますし、建築基準法など法令の改正によってもマンションのスペックや住み心地は変化します。
そこで今回は、建てられた時期による中古マンションの違いをご紹介していきます。

年代から建築当時の法令やトレンドをチェック 特徴から見る 中古マンション 構造や設備・仕様などのトレンドは、時代によって次々と移り変わりますし、建築基準法など法令の改正によってもマンションのスペックや住み心地は変化します。そこで今回は、建てられた時期による中古マンションの違いをご紹介していきます。

法令編

□新耐震基準
1981年6月から、建築基準法で定められている建物の耐震基準が強化されました。一般には、新たな基準を“新耐震基準”、以前の基準を“旧耐震基準”と呼びます。

「1960年代から70年代にかけて起きた大地震で、地震に強いと思われていた鉄筋コンクリート造の建物が、倒壊・大破するケースが目立ちました。これを受けて、従来の耐震基準が見直されたわけです。旧耐震基準の『震度5程度の地震に耐えうる』に対して、新耐震基準では『震度6以上の地震で倒れない』と、規定が強化されています。耐震基準は、最低限のレベルを定めたものなので、旧耐震基準時代の物件がすべて弱いというわけではありませんが、中古マンション選びでは、新耐震基準の物件かどうかにこだわる方が多いですね」(木村さん、以下同)

□シックハウス対策
2003年7月から施行されている改正建築基準法には、シックハウス症候群の原因となる化学物質の室内濃度を下げるための規制や義務が加わっています。

「法律改正により、有害な化学物質を発散させる建築材料に対して使用制限や特定薬剤の使用禁止の基準が設けられ、同時に換気設備の設置が義務づけられました。主な規制対象となっている有害物質・ホルムアルデヒドは、接着剤や塗料に含まれていましたが、この規制によりかなり減ってきています。しかし、規制対象外の有害物質もありますし、持ち込む家財道具から有害物質が発散する可能性もあるので、24時間換気システムなどが設置されていれば安心ですね」

□品確法
購入後に手抜き工事が発覚するといった住宅に関するトラブルを未然に防ぎ、消費者を保護することを目的とした法律で、2000年4月から施行されています。 「新築住宅の基本構造部分に関して、売り主に10年間の瑕疵担保責任が義務付けられました。中古物件を購入する人に直接のメリットはありませんが、同法律施行後に建築された物件については、構造部分の信頼性が高まったといえるでしょう。また、この法律の一環として住宅性能表示制度も創設され、住宅の性能を細分化して表す基準が明確に定められました。性能表示は義務ではありませんが、適用している物件なら消費者にとって比較検討しやすくなるというメリットがあります」

竣工日(=建物完成日)だけでなく建築確認を受けた日も要チェック!

マンションの建築主は、建設前に、仕様や設計などが建築基準法にのっとっているか審査を受けることになっています。審査に合格した後に建築確認済証を取得し、それから実際の工事が始まるわけです。

「例えば、法律が改正されて新耐震基準が導入されたのは1981年6月1日からですが、これは、以降の建築確認申請は新耐震基準で審査しますよという意味です。つまり、竣工日が法律の施行日より後のマンションでも、建築確認を受けた日が1981年5月以前なら、旧耐震基準で審査を受けたことになります。中古マンションというと竣工日に気を取られがちですが、建築確認を受けた日を調べることも忘れないようにしてください」

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構造編

□地震対策
構造における地震対策は、下表のように大きく3種類に分けることができます。

耐震構造・制振構造・免震構造

「1990年代中頃くらいから制振構造や免震構造といった技術がマンションにも導入されはじめ、ハイレベルな耐震性能を持つことを売りにしたマンションが増えました。また、住宅性能表示制度がスタートすると、耐震性能の等級レベルを上げてセールスポイントにするマンションも多く出ました。ただし、そもそも法律で義務付けられている耐震基準のレベルが高いことや、建設コストがかさむことなどから、ブームは徐々に沈静化しました」

□空間確保
柱や梁が室内に出っ張っていると、家具類をうまく置けない、圧迫感が生じるなどのデメリットがあります。

「これを受け、室内を広くスッキリさせる工法・構造の開発が進みます。まず1990年代後半には、梁の設置場所を従来の工法と上下逆にして室外に出す逆梁アウトフレーム工法が登場し、流行していきました。その後、バルコニーの奥行きに関する規制緩和が実施され、2000年前後には柱を室外に出すアウトフレーム工法も登場。以降、広く普及していきます」

一般的な工法・逆梁アウトフレーム工法

従来とは梁の付け方を逆にしてバルコニー側に出すことでフラットな空間を確保。
加えて、開口部も高くとれるようになった。

一般的な工法・アウトフレーム工法

従来の工法では室内側に出っ張っていた柱をバルコニー側や共用廊下側に出す工法

設備・仕様編

□セキュリティ対策
1990年代後半から2000年代初頭にかけて、ピッキングによる侵入盗が多発しました。

ピッキングされにくいディンプルキー

ピッキングされにくいディンプルキー

「これを受け、マンションにも防犯対策が積極導入されるようになります。ピッキングされにくいディンプルキーが急速に普及し、鍵をセンサー部分にかざして共用玄関のオートロックなどを解錠する非接触式のICキーも出てきました。また、防犯カメラの設置や、警備会社と提携したオンライン監視などが広まったのは2000年代からです」

□居室まわり
「バブル経済崩壊で、1990年代前半から景気が低迷しはじめると、それまであまり着目されなかった“長く住むための配慮”という考え方が出てきました。リフォームや間取り変更の自由度が高い二重床・二重天井、段差を解消したバリアフリーといった仕様が増えてきます」

二重底・二重天井

支持ボルトなどを使ってコンクリートスラブと仕上げ材の間にスペースを設ける仕様。
配管や電気配線の自由度が高まるので間取り変更にも対応しやすく、室内をフラットにできるといったメリットがある。

また、ブロードバンド環境にも注意したいところです。

「光回線やケーブルテレビ経由の高速インターネット回線が導入されるようになったのは、2000年前後からです。集合住宅の場合、自分の住居だけに回線を引くという手段が取れないケースが多いので、中古マンションをチェックする際には状況を確認してください」

□キッチンまわり
家事がラクになると人気なのが食器洗浄機です。

食洗機

「1980年代後半に出はじめ、現在の新築物件でもオプション扱いになっているケースが多い設備です。その便利さが反響を呼び、1990年代からは新居購入時にオプションで同時に申し込むという人が増加。オプション購入時の単価も下がってきていますから、築年が新しいほど食洗機が付いている可能性も高いでしょう。また、生ゴミを自動処理するディスポーザーは、1990年代から登場し、2000年くらいから採用するマンションが増えました」

□浴室まわり
着目したいのが、ユニットバスのサイズの変遷です。

ユニットバス

「専有面積70m2の3LDKで考えると、各年代のスタンダードは、1970年代が120cm×160cm、1980年代が130cm×170cm、1990年代の終盤以降が140cm×180cmという感じですね。基本的に、築年が新しいほど広いといえます。また、浴室暖房乾燥機はもともとオプション扱いの設備でしたが、シックハウス対策が義務化された後に建ったマンションでは、24時間換気システムと併用することで標準装備となっているケースが増えています」

まとめ

□今なら築5年から築10年のマンションが狙い目!?
以上のように、マンションは様々な面で進化を続けています。

年代順に流れを整理してつかんでおこう

「ただ、急テンポな進化やトレンドの変遷というのは、2000年代前半で落ち着いた感があります。昨今の新築マンションは、従来は過熱気味だったスペックを必要十分レベルに見直し、コスト(=価格)を下げる方向にシフトしています。築5年から築10年くらいのマンションなら、今どきの新築物件のスペックと比べても見劣りせず、しかも価格は割安という可能性が高い。そんな視点で中古物件を探してみるのもひとつの手です」

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