知っておきたい売却・査定相場比較
駅からの距離
「駅から徒歩○分」と明記された交通機関への距離は、不動産を売却/購入する際に物件の資産価値に影響を与える重要な検討材料です。それだけに、不動産広告においては「徒歩1分の距離は80m」と基準が定められています。 では、駅からの距離は不動産の売却相場において、具体的にどのような傾向があるのでしょうか。さらに、どのような物件が査定において有利なのでしょうか。中古マンションと一戸建ての査定金額例を交えながらご紹介します。

時流によって変動する相場についての
情報収集をサポート
※当社営業担当者が査定いたします。
※宅建業法に基づく査定です。不動産鑑定評価ではありません。
駅からの距離と売却相場の関係性
駅からの距離と売却相場との関係性を理解するために、国土交通省の「不動産取引価格情報」のデータベースから、下記の条件で実際の売却価格データを算出しました。
データの算出条件
・不動産種類:中古マンション
・駅からの距離:30分以内
・間取り:3LDK
・取引時期:2012年~2017年3月

上記の中古マンション売却相場一覧表から、東京や大阪、また愛知といった都市圏が、周辺の都道府県よりも平均的に駅からの距離が近い物件が多く、逆に茨城や静岡といった地方は駅からの距離が遠い傾向にあることがわかります。
つまり、電車移動が中心の首都圏や都市部においては、車での通勤や買い物が中心の地方都市よりも、「駅からの距離が近いか遠いか」は資産価値に対して影響がありそうです。
具体的に、駅からの距離と中古マンションの売却価格がどのような関係にあるのかを確認してみましょう。
東京の中古マンション査定金額における駅からの距離の影響
前出の国土交通省「不動産取引価格情報」のデータベースと同条件の売却価格の情報から、東京都の中古マンション売却相場と駅からの距離について調べてみました。

上記の表によると、駅からの距離が「1~5分」のいわゆる「駅近」な物件における平均平方メートル単価61.3万円を100とした場合に、「6~10分」の57.2万円は約7%の下落、「11~15分」の48.4万円は約20%の下落、「16分以上」は約35%の下落と、平均平方メートル単価に開きがあることがわかります。
また、駅からの距離が離れてもマンションの平均面積に大きな変化がないため、駅に近いほど売却価格が高額になることも良くわかります。もし、「駅から遠くても広いところに住みたい」という人が多いのであれば、売却データにそのような変化があるかと思われますが、「広い部屋よりも駅に近いマンションに住みたい」という傾向のほうが強いと言って良いのかもしれません。

また近年では、バスでの移動が必要な場所で新たに建築されるマンションは少なく、駅からの距離が新築マンション販売において重要な条件となっています。
東京カンテイの「首都圏 新築・中古マンション市場に関するプレスリリース」によると、駅から徒歩15分を超える新築マンションの供給シェアは、2011年の6.6%に対して2016年は3.0%と減少しています。

そのため、駅から離れたマンションの売却については、希望する金額での売却が難しい場合もあると考えておいた方がよいでしょう。
時流によって変動する相場についての
情報収集をサポート
※当社営業担当者が査定いたします。
※宅建業法に基づく査定です。不動産鑑定評価ではありません。
中古戸建て住宅の査定金額例
戸建ての場合は、マンションほど駅近である必要はないものの、やはり人気があるのは徒歩10分圏内の物件と言われています。
公益財団法人不動産流通推進センターの価格査定マニュアルでは、土地の資産価値については「徒歩10分」を基準として、近いか遠いかによって評点をつけています。

例えば、駅から徒歩3分の場合はプラス12の評価、駅から徒歩20分であればマイナス12の評価という評点がつけられます。
なお、評点が査定価格に対して直接◯万円といったかたちで反映されるのではなく、近隣施設の状況や日照、道路の幅など、これ以外の評点と合計した上で物件の査定が算出されます。
東京の中古戸建て住宅査定金額における駅からの距離の影響
前出の「不動産取引価格情報」データベースから、東京都の中古戸建て住宅の売却相場と駅からの距離について調べてみました。データの算出条件としては以下のとおりです。
データの算出条件
・不動産種類:宅地(土地と建物)
・駅からの距離:30分以内
・建物の用途:住宅
・延床面積:50~200平方メートル
・取引時期:2012年~2017年3月

上記の表によると、駅からの距離が「1~5分」の平均平方メートル単価54.7万円を100とした場合に、「6~10分」の52.7万円は約4%の下落とほとんど差がありません。しかし、「11~15分」の47.4万円は約13%の下落、「16分以上」の40.4万円は約26%の下落と、平均平方メートル単価に開きが生じていきます。

なお、中古戸建て住宅の「16分以上」は約26%の下落であるのに対して、前述した中古マンションは同じ「16分以上」で約35%の下落です。この点を比較すると、戸建ての売却価格に対する駅からの距離は、マンションほど影響が大きくないと言えそうです。
駅からの距離と売却相場が一致しない、例外的なケース
都心部であっても、駅前のにぎやかな繁華街に位置する物件より、駅から離れるものの緑あふれる地域にある物件の方が好まれる場合もあります。
中古マンションや戸建て住宅の価格は、駅からの距離だけではなく周辺環境にも左右されるため、売却予定の物件の最寄駅や周辺の地価はどのような傾向にあるのか、情報収集しておくと良いでしょう。
また、駅からの距離は近いが都心から1駅遠い場合と、駅からの距離は遠いものの都心に1駅近い場合では、どちらが売却相場は高いのでしょうか?
同じような環境の駅が続く沿線の場合、駅からの距離が近い物件のほうが好まれる傾向にあります。ただし、これも片方の駅にのみ急行が止まる、大きな駅ビルがあるといった条件の違いがある場合には当てはまりません。
まとめ
駅からの距離は、マンション、一戸建てともに、駅近であるほど魅力的だと考えられます。なかでも、都市部のマンションについては、より駅から近く利便性が高いことを重視される傾向があります。
近年では、このような傾向が強まっていることから、今後も駅から離れた利便性の悪い立地の物件はきびしい査定となっていく傾向が続くと考えられます。駅から離れている不動産の売却を考えている場合は、早期の売却を計画するか、リフォームやリノベーションなどの付加価値をつけることを検討してみてはいかがでしょうか。
<出典>
「不動産取引価格情報」|国土交通省
「価格査定マニュアル」による査定方法|公益財団法人不動産流通推進センター
執筆:平野 絵美
-
- 監修:
- 長嶋 修(ながしま おさむ)
- 経歴:
- 1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「株式会社さくら事務所」を設立、現会長。「中立な不動産コンサルタント」としてマイホーム購入・不動産投資など不動産購入ノウハウや、業界・政策への提言を行う。著書・メディア出演多数。近著に「不動産格差」(日本経済新聞出版社)。
-
無料査定・売却相談
-
住まい探しのノウハウ