子育て終了世代の住み替え戦略とそれが示唆すること
最近、60歳前後の方から住み替えの相談を受ける機会が増えています。共通しているのは、単なる住宅の買い替えではなく、「住まいを資産としてどう使うか」という視点です。長く住んできた住宅を売却し、その資産価値を人生後半の生活設計にどう生かすか。いわば「住まいの出口戦略」を意識した相談と言えるかもしれません。今回はこうした視点を持つ方が徐々に増えつつある背景について考えてみたいと思います。

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ダウンサイジングと郊外への住み替えで含み益を実現
筆者のもとに相談に来られるこの世代の多くは、子育てを終え、住宅ローンも完済しているか、残っていたとしてもわずかというケースがほとんどです。家族構成は夫婦二人となり、これまで住んできた3LDKや4LDKの住まいは広すぎると感じるようになります。さらに働き方も変わってきます。これまでのような重い職責から外れたり、関連会社に出向したりして、早朝から夜遅くまで働く必要がなくなるケースも少なくありません。通勤時間を最優先に考える必要も薄れ、職住近接という条件の重要度も相対的に下がります。こうした状況の中で浮上してくるのが、「ダウンサイジングと郊外への住み替え」です。広い住まいを売却し、夫婦二人に適したコンパクトな住宅へ移る。さらに郊外へ移れば、住宅価格の差によって手元にまとまった資金が残る可能性が高くなります。
近年、都市部の住宅価格は大きく上昇してきました。特に都心部のマンション価格は顕著で、長く住んできた住宅が想定以上の価格で売却できるケースも珍しくありません。こうした価格上昇は若い世代にとっては住宅取得のハードルを上げる要因となっていますが、長く都心に住んできた世代にとっては含み益の増加として認識されているのです。
保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。
老後資金の調達や健康維持を目的とした住み替え
都心の住宅を売却し、より小さな住宅へ住み替える。さらに郊外へ移れば、その価格差は大きくなり、売却後に数千万円規模の資金が残ることもあります。もちろん、売却時の税金や諸費用、住環境の変化など、慎重に検討すべき点は少なくありません。それでもこの資金は退職後の生活資金や資産運用の原資として活用できます。いわば「住まいという資産の一部を取り崩して老後資金を作る」という、人生後半戦に向けた生活の再設計です。
住み替えは生活スタイルの変化とも結びついています。たとえば、駅から少し距離のある住宅をあえて選び、日常的に歩く環境を確保する人もいます。健康維持を目的とした住まい選びであり、こうした発想は現役世代の住宅選択とはやや異なるものです。仕事中心だった生活から、暮らしの質を重視する生活へと軸足が移る中で、住まいの役割も変化していると言えるでしょう。
若い世代にも重要な示唆がある
もっとも、このような住み替え戦略が成立するためには重要な前提条件があります。それは住宅ローンの残債がほとんど残っていないことです。住宅価格が上昇していても、ローン残高が大きければ売却時に手元に資金は残りません。逆にローンをほぼ返し終えていれば、住宅は大きな資産として機能します。この点は、これから住宅を取得する世代にとっても重要な示唆を含んでいます。仮に今後、日本でもマイルドなインフレが定着し、住宅価格が長期的に上昇する傾向が続くとすれば、住み替えによって資金を生み出す機会は若い世代にも広がる可能性があります。しかし、その機会を生かせるかどうかは住宅ローンの設計に大きく左右されます。
近年は50年返済の住宅ローンなど、超長期の借り入れ商品も登場しています。返済期間を延ばせば月々の負担は軽くなりますが、その一方で住宅を売却して資金を生み出す余地は小さくなる可能性があります。
ライフステージによって住まいを変える
住まいは「一生住み続ける場所」と考えられがちですが、実際にはライフステージによって必要な住まいは変化します。子育て期には広さや通学環境が重要になりますが、子どもが独立すれば住まいの条件は大きく変わります。そう考えるならば、住宅ローンの完済時期を人生の節目に合わせて設計するという考え方もあるでしょう。たとえば、子どもが独立する頃に住宅ローンを概ね完済しておく。そうしておけば、その後の住み替えによって住宅資産を現金化する選択肢を持つことができます。
住まいを「消費」としてだけではなく、「人生の途中で活用できる資産」として捉える発想です。近年増えている60歳前後の住み替え相談は、こうした住まい観の変化を象徴しているのかもしれません。住宅は単に長く住む場所ではなく、人生のステージに応じて役割を変える資産でもあります。住まいをどう買うかだけでなく、どう終えるか。住み替えによる「住まいの出口戦略」は、その資産を人生のどこで、どのように生かすのかを考える一つの方法と言えるのではないでしょうか。
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