年末年始だからこそ家族で話し合っておきたい相続の話

年末年始は、両親と兄弟姉妹が実家に集まるという方も多いでしょう。おせち料理に舌鼓を打ちつつ熱燗で一杯という楽しみもあろうかと思いますが、家族が集まるこの時期に、将来の相続について家族で考える場を少し作ってみてはいかがでしょうか。

年末年始だからこそ家族で話し合っておきたい相続の話

せっかく久しぶりに実家に集まるのだから、相続などという縁起でもない話はしたくないと思うかもしれませんが、相続後に揉めるケースのほとんどが、親と兄弟姉妹がそれぞれの悩みや課題を共有し、どう解決したらよいかを事前に相談してこなかったことが原因となっているのです。

どうやって相談するきっかけを作るか

親に対して相続の話をいきなり切り出すというのはとても難しいものです。元気な親に対して「もし亡くなったら」という話をするのははばかられますし、親にしてみたら気持ちのよい話ではありません。
しかし、相続のことを家族で話し合うということは「最愛の親の死」という話ではなく、「残された家族が仲良く円満に暮らす」ということがテーマとなる話です。こうしたスタンスをきちんと取りながら、遺される側の悩みや課題を相談してみてはいかがでしょうか。筆者の経験ではありますが、親として子供の悩みや課題について相談されれば、一蹴するわけにはいかないという方も多いようです。
そして相談するきっかけ作りの前に相続について知っておくべきことがあります。

必ずしも法定相続分通りで分割すべきということではない

相続というと、民法900条にある「法定相続分」をイメージしてしまう方が多いと思います。法定相続分とは、たとえば、配偶者と子供がある場合には、それぞれ半分ずつで、子供はそれを人数分で均等に分けるといったものです。しかし、遺産分割はきっちり法定相続分通りに分けなければならないというものではないのです。
民法906条では遺産の分割の基準について「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。」と定めています。筆者は相続の話を家族でするならば、民法906条の存在にも目を向けておくべきだと考えています。

家計図イメージ

相続人同士が揉めたままだと相続税が高くなることも

相続は税金対策より分割対策が重要です。例えば、既に夫を亡くした母親が都内の実家(一戸建て)に独身の長女と住んでいたところ、相続が発生したとしましょう。現金は少ししかなく、相続人は長女のほかに次女、三女、長男がいたとすると、どのように実家という不動産を分割したらよいでしょうか?4人で共有にするという方法もありますが、そこに住んでいた長女は他の兄弟に家賃を支払うなどの事態が発生するかもしれません。あるいは他の兄弟はお金に困っており、実家を売りたいと考えるかもしれません。

もし親が元気な時代に相談してれば、事前に手が打てたかもしれませんが、このようなケースでは、兄弟姉妹が揉めないための要となっていた母親の死により、思いがけない争いになることもあるのです。

ちなみに相続税は相続発生から10か月後に相続税の申告と納付をする必要があります。このとき遺産分割で揉めていると(遺産分割協議書を作成できていないと)、配偶者の相続税額軽減※1)や小規模宅地等の評価減※2)が利用できず、相続税が思った以上に高くなってしまうということもあります。

※1 配偶者の相続税額軽減
配偶者の課税価格が160百万円まで、または、これを超えても法定相続分までは相続税がかからないというルール。

※2 小規模宅地等の評価減
一定の条件を満たす小規模宅地を承継する場合、一定の割合(5割~8割)で評価額を減額するというルール。

各人の悩みや課題を早めに共有することが大切

筆者は、もともと兄弟姉妹の仲がよくても、相続が発生した結果、争いごとに発展してしまったケースを沢山見てきました。法定相続分だけにこだわって主張し争いになったり、実家の分割方法で争いになったり、相続における遺産分割についてはここでは書ききれないほど争いの種があります。

なお、民法改正に伴い2020年4月より「配偶者居住権」が創設されます。実家を遺産分割する際、残された配偶者の保護を目的にその居住権を認めるもので、相続財産(課税対象の財産)とされます。不動産の所有権は配偶者居住権という負担付所有権として評価されることになりますが、遺産分割のバリエーションが増える分、先を見据えた分割を考える必要もありそうです。

いずれにせよ、相続が発生する前から家族で各人の悩みや課題を共有し相談することが大切なのです。

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