23区中古マンション価格動向 価格上昇率に格差

今年も早いもので3ヶ月が経過しました。その間、ゼロ金利の解除、株価4万円超えといった住宅市場にも少なからず影響がありそうな出来事が起こっています。ここで、この3ヶ月の中古マンション成約データを使って、23区内の中古マンション市場にどのような変化の兆しが見られるか調べてみました。

23区中古マンション価格動向 価格上昇率に格差

依然として価格は上昇傾向だが、上昇率は落ちている。

まずは、2013年から2024年までの東京都23区における中古マンション価格の推移とその変化率について見てみましょう。非営利財団法人東日本不動産流通機構に登録されている2013年1月から2024年3月までに取引された東京都23区内の中古マンション成約データ16万2,029件を使って、23区内の価格指数推移とその変化率を調べてみました。価格指数は、マンションの専有面積あたりの成約単価について、最寄り駅からの距離や築年数、所在階、所在区を利用して品質調整しています。これを行うことによって、例えば築年数が古いものが多く取引されていたとしても、価格指数はその影響を受けない形となります。

次のグラフはこうして作成した2013年を1.0とした価格指数推移とその変化率(前年と比較した価格の上昇下降の割合)のグラフです。2013年以降、23区の中古マンション価格は上昇を続けていますが、その変化率に表れているように、2016年から2019年にかけてその上昇率は徐々に小さくなっていく傾向にありました。2019年ころはこうした価格上昇トレンドはもう限界だろうと業界でささやかれていた時代でもあります。

しかし2020年のコロナ禍対策で、日本銀行がマネーストックを急増させたことから、マネーが株式や不動産に流れ込むことになります。結果、23区内の中古マンション価格も2021年には急上昇しました。しかし2022年以降、その上昇率は再び下がり続け、現時点では5.3%の上昇率となっています。

価格推移(2013年=1.0)とその変化率

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

区によって異なる上昇率

これを区別に見てみたところ、価格変化率にばらつきがあることが分かりました。東京都23区における2024年の価格変化率は5.3%でしたので、7%以上の上昇を見せている区と3%以下の上昇率となっている区を抽出してグラフを作成してみました。

上昇率の高い5区と低い5区

7%以上の上昇率となったのは、千代田区、中央区、港区の都心3区に加え、台東区と足立区となっています。都心3区の価格上昇率は当然として、台東区は2021年に他の区ほどは価格が上昇しなかったことで価格調整が起こっていないこと、足立区は都区部中古マンション価格が高騰した中でも、比較的低価格で購入可能な物件が多いことから需要がここに流れたことが理由ではないかと筆者は考えています。

一方、3%以下の上昇率となったのは世田谷区、目黒区、太田、板橋区、江戸川区でした。東京南西部の人気エリアである世田谷区、大田区、板橋区、江戸川区は23区の外郭エリアに存しており、人気エリアではあるものの、一般の購入者にとっては買いにくい金額帯まで価格が上昇しすぎた感がありますので、そのため上昇率が抑えられているのではないでしょうか。目黒区は外郭エリアではありませんが、2020年、2021年の上昇率は都心3区以上であったことが影響して価格上昇率が調整されていると思われます。

可処分所得上昇への期待が鍵

第一四半期経過時点ということでもあり、今回見られたような傾向が今後も継続するかどうか、当面は様子を見ていく必要があると思います。住宅価格は、景況感の好転、株価上昇、適度な物価上昇とこれに追従する賃料上昇への期待、金利動向や市中マネーの増減、暮らし方(共稼ぎ世帯増加)などに影響されます。2013年以降では、異次元緩和、共稼ぎ世帯の増加、マネーストックの急増が住宅価格に影響を及ぼしましたが、今後はどうなるのでしょうか?

円安を回避する目的で政策金利を上げるのではと考えているエコノミストもいれば、日銀は為替政策で利上げをしたと見られたくないはずと考えるエコノミストもいます。筆者は、一気に政策金利を上げると市場が混乱するので本格的な正常化は2025年以降と考えていますので、金利が住宅価格に影響を与えることは、当面考えなくてもよいかもしれないと思っています。一方、共稼ぎ世帯は今後もさらに増えていく可能性があります。独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると2013年には59%の世帯が共稼ぎ世帯でしたが、2023年には71%まで上昇しています。共稼ぎ世帯がさらに増えれば住宅価格の上昇要因になる可能性は十分にあります。そして、最も重要な鍵は、可処分所得がさらに上昇するという、期待が高まる経済環境が創出されるかどうかだと思います。共稼ぎ世帯のさらなる増加と可処分所得上昇への期待の高まりが、今後の住宅価格動向を占う鍵になると思っています。

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