新築一戸建てと新築マンションの比較~マンション・一戸建て住宅データ白書2023

東京カンテイが「マンション・一戸建て住宅データ白書2023」を発表しました。 一戸建て住宅とマンションでは立地選択の差異が明確に表れていますが、どちらの供給も若干の駅遠シフト傾向がみられます。

新築一戸建てと新築マンションの比較~マンション・一戸建て住宅データ白書2023

首都圏

最寄駅からの駅徒歩所要時間新築一戸建ては徒歩15分が増加
一戸建て2番目の山は10分から13分へシフト新築マンションは引き続き5分にピーク

新築一戸建ては徒歩15分での分譲が大きく増加、新築マンションは“5分の壁”が明確に

最寄駅からの徒歩時間別に2023年に新規分譲された一戸建て住宅と新築マンションの分譲戸数分布を見ると、一戸建て住宅とマンションでは立地選択の差異が明確に表れる。(バス便物件を除いて25分まで集計)新築一戸建て住宅の徒歩時間については、首都圏において15分以内で供給する傾向が一層強まり、15分の山で3,369戸から4,285戸と大きく増加している。2番目の山は、前年は10分であったが、2023年は13分へとシフトし、12分と14分での供給も増加している。実需層にとって生活利便性を左右する駅徒歩時間は依然として重視されているものの、用地取得難や資材価格の高騰により立地に若干の変化があったと見られる。

「家は駅に近いほどよい」という価値観はマンションと変わらないが、駅周辺は戸建ての住環境には適さないことや都市計画上高度利用や商業用途を主眼に置いた計画が採用されているエリアが多いことで、かえって一戸建て住宅が供給しにくい環境となっていることなど、一戸建て住宅には独自のロジックが働いていると考えるべきである。このような結果から一戸建て住宅の供給においては、新築マンションで起きているような“駅近”をめぐる供給立地の競合状況が起きにくい。

一方、新築マンションでは2023年も引き続き駅徒歩5分以内に強いこだわりを持って供給されていた様子が分かる結果となっている。ただし、首都圏においては駅徒歩5分での供給が前年の4,633戸から6,101戸へと大きく増加し、“5分の壁”がより明確なものとなっているほか、2番目のピークが3分から4分へと変化した。一戸建てと同様にマンションにおいても用地取得難が続くが、コロナ禍を経て観光業が復活。ホテルの建設が増加しており、今後のマンション供給立地にも影響を及ぼすと考えられる。物価高も相まって、駅近物件の入手はより厳しいものとなるだろう。

首都圏 2023年新築一戸建て住宅と新築マンションの徒歩時間別分譲戸数分布(バス便を除く)

2023年行政区別新築一戸建て分譲戸数ランキング

2023年の首都圏行政区の中で1年間に新築一戸建て住宅が最も分譲されたのは埼玉県川口市で1,503戸であった。川口市は2022年の1,382戸から戸数を大きく伸ばし、4年連続の1位となった。2位は東京都八王子市の1,190戸で、こちらも前年の885戸から大幅に戸数が増加し、順位を6位から押し上げた。3位は東京都練馬区の1,136戸で、順位は変わらなかったものの戸数は前年の961戸から伸ばしている。4位は東京都足立区の1,125戸となった。前年2位の千葉県船橋市は1,091戸で前年の1,143戸から減少し5位に後退した。

ベスト10の顔ぶれは前年から変わらなかった。うち8都市が戸数を伸ばし、年間1,000戸以上供給された都市が2022年の2から6へ増加している。このうち東京都八王子市は順位の変動が最も大きくなった。ベスト10の中でマンション戸数が増加したのは4都市で、一戸建てとマンションの戸数バランスには変化が見られる。顕著であるのは埼玉県川口市で、前述の通り一戸建て戸数は増加しているが、マンション戸数は1,089戸から237戸へと大きく減少し、戸建てメインの立地へシフトした様子である。

前年は登場しなかったが2023年にベスト30位以内に入った都市は26位の東京都立川市を筆頭に28位:埼玉県草加市、29位:東京都小平市、30位:神奈川県小田原市となっている。反対に埼玉県春日部市(前年14位)、神奈川県大和市(21位)、さいたま市見沼区(28位)、神奈川県横須賀市(30位)が圏外に去った。

2023年都市圏別行政区別新築一戸建て住宅分譲戸数ランキング

一戸建て住宅調査対象の条件:(1)敷地面積50~300m2の物件 (2)最寄り駅からの所要時間が徒歩30分以内かバス20分以内の物件 (3)木造 (4)土地・建物ともに所有権の物件

対象地域:全国
地域区分:【首都圏】 東京都 神奈川県 千葉県 埼玉県

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

中部圏

新築一戸建て・新築マンションの最寄駅からの徒歩時間分布一戸建てピークが15分に変化
用地取得難と価格高騰による新築マンションは引き続き駅徒歩6分が最多

新築一戸建のピークは徒歩10分→15分に変化新築マンションも駅遠へのシフトが見られる

最寄駅からの徒歩時間別に2023年に新規分譲された一戸建て住宅と新築マンションの分譲戸数分布を見ると、一戸建て住宅とマンションでは立地選択の差異が明確に表れる。(バス便物件を除いて25分まで集計)新築一戸建て住宅は中部圏のピークは前年の10分から2023年は15分へと変化した。実需層にとって生活利便性を左右する駅徒歩時間は依然として重視されているものの、用地取得難や資材価格の高騰により立地に若干の変化があったと見られる。

「家は駅に近いほどよい」という価値観はマンションと変わらないが、駅周辺は戸建ての住環境には適さないことや都市計画上高度利用や商業用途を主眼に置いた計画が採用されているエリアが多いことで、かえって一戸建て住宅が供給しにくい環境となっていることなど、一戸建て住宅には独自のロジックが働いていると考えるべきである。このような結果から一戸建て住宅の供給においては、新築マンションで起きているような“駅近”をめぐる供給立地の競合状況が起きにくい。

一方、新築マンションでは2023年も引き続き駅徒歩5分以内に強いこだわりを持って供給されていた様子が分かる結果となっている。ただし、中部圏では駅徒歩2分が871戸から720戸へ減少し、5分が1,164戸から1,438戸へ増加しており、一戸建てと同様に駅遠の方向へややシフトしている。一戸建てと同様にマンションにおいても用地取得難が続くが、コロナ禍を経て観光業が復活。ホテルの建設が増加しており、今後のマンション供給立地にも影響を及ぼすと考えられる。物価高も相まって、駅近物件の入手はより厳しいものとなるだろう。

中部圏 2023年新築一戸建て住宅と新築マンションの徒歩時間別分譲戸数分布(バス便を除く)

2023年行政区別新築一戸建て分譲戸数ランキング

2023年における中部圏の1位は愛知県一宮市で549戸が供給され、前年の4位から順位を押し上げた。2位は前年から変わらず名古屋市中川区で491戸の供給があった。戸数は前年の522戸から減少している。3位は愛知県豊橋市の477戸で、前年の429戸から戸数を増やし、順位も上がった。4位は愛知県春日井市で464戸の供給があった。春日井市は2017年から2020年まで4年連続で1位となっており、前年も1位であったが、2023年は戸数が減少し首位陥落した。

中部圏では2023年は分譲戸数が前年比-6.8%減少した。2020年以降ベスト10はすべて愛知県の都市が占めていたが、4年ぶりに愛知県以外の都市として静岡県沼津市が入った。ただし沼津市の供給戸数は前年292戸であったため微減しており、その他の顔ぶれを見ても供給立地の変化が起こったとは言えない。30都市の分布を見ると、愛知県が22市区(前年24)、静岡県5(5)、岐阜県1(2)、三重県2(0)となっている。ベスト10以下では三重県が入るなど変化が見られた。

前年は登場しなかったが2023年にベスト30位内にはいった都市は19位:名古屋市名東区を筆頭に、25位:愛知県瀬戸市、27位:三重県鈴鹿市、28位:三重県四日市市、29位:愛知県碧南市の5市となっている。反対に愛知県半田市(前年10位)、愛知県あま市(21位)、愛知県西尾市(23位)、愛知県刈谷市(25位)、愛知県東海市(26位)、岐阜県大垣市(30位)がそれぞれ圏外に去る形となった。

2023年都市圏別行政区別新築一戸建て住宅分譲戸数ランキング

一戸建て住宅調査対象の条件:(1)敷地面積50~300m2の物件 (2)最寄り駅からの所要時間が徒歩30分以内かバス20分以内の物件 (3)木造 (4)土地・建物ともに所有権の物件

対象地域:全国
地域区分:【中部圏】 愛知県 岐阜県 三重県 静岡県

近畿圏

新築一戸建て・新築マンションの最寄駅からの徒歩時間分布一戸建ては10分ピーク変わらず
新築マンションは徒歩7分の分譲戸数が大きく増加やや駅遠にシフト

新築一戸建ては引き続き徒歩10分にピーク新築マンションはやや駅遠にシフト

最寄駅からの徒歩時間別に2023年に新規分譲された一戸建て住宅と新築マンションの分譲戸数分布を見ると、一戸建て住宅とマンションでは立地選択の差異が明確に表れる。(バス便物件を除いて25分まで集計)新築一戸建て住宅の徒歩時間については、近畿圏のピークは前年に引き続き10分にあるが、これは立地が駅に近い訳ではなく、近畿圏は駅間が短く最寄駅からの所要時間が相対的に近くなる圏域の特徴によるものである。

「家は駅に近いほどよい」という価値観はマンションと変わらないが、駅周辺は戸建ての住環境には適さないことや都市計画上高度利用や商業用途を主眼に置いた計画が採用されているエリアが多いことで、かえって一戸建て住宅が供給しにくい環境となっていることなど、一戸建て住宅には独自のロジックが働いていると考えるべきである。このような結果から一戸建て住宅の供給においては、新築マンションで起きているような“駅近”をめぐる供給立地の競合状況が起きにくい。

一方、新築マンションでは2023年も引き続き駅徒歩5分以内に強いこだわりを持って供給されていた様子が分かる結果となっている。ただし、近畿圏では駅徒歩7分が1,231戸から2,462戸へと大きく増加しており、一戸建てと同様に駅遠の方向へややシフトしている。一戸建てと同様にマンションにおいても用地取得難が続くが、コロナ禍を経て観光業が復活。ホテルの建設が増加しており、今後のマンション供給立地にも影響を及ぼすと考えられる。物価高も相まって、駅近物件の入手はより厳しいものとなるだろう。

近畿圏 2023年新築一戸建て住宅と新築マンションの徒歩時間別分譲戸数分布(バス便を除く)

2023年行政区別新築一戸建て分譲戸数ランキング

2023年の近畿圏1位は兵庫県姫路市で586戸の新規供給があった。前年の694戸から減少したが、2年連続の1位となった。2位は兵庫県明石市の572戸。明石市は2021年以降、10位→5位→2位と連続して順位を押し上げている。同市が展開する子育て支援策を受けて、ファミリー層の人気が高まっていると見られる。3位は前年と同じく大阪府枚方市で549戸が供給された。4位もまた前年に引き続き大阪府東大阪市となり、527戸の供給があった。枚方市は520戸→549戸、東大阪市は518戸→527戸と、それぞれ前年からやや戸数が増加した。5位は兵庫県尼崎市の498戸で、前年は2位・596戸であったが順位を落とす結果となった。

近畿圏では2023年は前年比-0.3%分譲戸数が減少したが、ベスト10のうち明石市、枚方市、東大阪市、大阪府寝屋川市、大阪府豊中市、大阪府八尾市、奈良県奈良市で戸数が増加している。顔ぶれに大きな変化はなかったが、豊中市が前年の11位から順位を押し上げ8位へランクインした。一方で兵庫県西宮市が、分譲戸数は横ばいであったものの前年9位から2023年は13位となった。

前年は登場しなかったが2023年にベスト30位以内に入った都市は16位の堺市堺区を筆頭に、25位:大阪府茨木市、27位:大阪府和泉市の3市区のみとなっている。反対に大阪府大東市(前年23位)、堺市東区(24位)、京都府八幡市(29位)、奈良県橿原市(30位)がそれぞれ圏外に去った。

2023年都市圏別行政区別新築一戸建て住宅分譲戸数ランキング

一戸建て住宅調査対象の条件:(1)敷地面積50~300m2の物件 (2)最寄り駅からの所要時間が徒歩30分以内かバス20分以内の物件 (3)木造 (4)土地・建物ともに所有権の物件

対象地域:全国
地域区分:【近畿圏】 大阪府 兵庫県 京都府 滋賀県 奈良県 和歌山県

保有する物件・土地の定期的な資産価値の確認がポイントです。

この機会にお気軽にご相談ください!

当記事出典

当記事は株式会社東京カンテイ「カンテイアイ特集(2024年1月31日配信)」の情報を元に掲載しております。 当記事に掲載されている文書の著作権は、出典元である東京カンテイに帰属します。 掲載されている文書の全部または一部を無断で複写・複製・転記等することを禁止します。 また、当記事への直接リンクは固くお断りいたします。

ご留意事項

本コンテンツに掲載の情報は、執筆者の個人的見解であり、当社の見解を示すものではありません。
本コンテンツに掲載の情報は執筆時点のものです。また、本コンテンツは執筆者が各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性について執筆者及び当社が保証するものではありません。
本コンテンツは、情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の取得・勧誘を目的としたものではありません。
本コンテンツに掲載の情報を利用したことにより発生するいかなる費用または損害等について、当社は一切責任を負いません。
本コンテンツに掲載の情報に関するご質問には執筆者及び当社はお答えできませんので、あらかじめご了承ください。